とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 (河出文庫 オ 5-1)

  • 河出書房新社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464596

感想・レビュー・書評

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  • 現代社会に生を受け、生きていかなくてはいけない私に、冷や水をこれでもかと浴びせる本。
    しかし、冷や水はただ生を拒否させる類ではなく、生きる力や慰めを伴う甘さも含んだ、一筋縄ではいかない作品群。

  • 海外のミステリ/ホラー系アンソロジーの読者ならおなじみの、ジョイス・キャロル・オーツの短編集。文学系の長編はともかく、ホラー系の短編はあちこちのアンソロジーで探して読むしかなかったから、こうしてまとめて出るのは嬉しい。その代わりに初訳は半分ほどのようだ。収録作はどれもグロテスクで胸糞なエピソードを描いてるのに、読後感は決して悪くなくて、これがオーツの色なんだなあと思わせてくれる。

  • 短編集となります↓
    ・とうもろこしの乙女 : ある愛の物語
    ・ベールシェバ
    ・私の名を知る者はいない
    ・化石の兄弟
    ・タマゴテングタケ
    ・ヘルピング・ハンズ
    ・頭の穴

    はぁ〜…やっと読み終わりました^^;
    なかなか手が進まずでした。

    どのレビューを見てもとてもいいですが…私には、なかなか暴力的で、なかなかグロかった。
    そして後味悪しでちょい苦手でした。

    あとは、私の無知な部分もあり『あとがき』を読んでから『あ〜そういう意味もあるんだ』てなのもありで、理解が難しかったのも(^^;;
    勉強しなおしますm(_ _)m

  • 絶望小説フェアで購入したが、絶望というほどでもない。
    『化石の兄弟』会話は少なく、年を重ねるごとに関わりさえ薄くなっていくけど、ずっと奥深くで繋がっている。
    『ヘルピング・ハンズ』直接暴力を振るうわけじゃないのに何よりも傷つく。無理に決まってるじゃん、やめとけよ、とハラハラしながら、そっちに行かないでほしい方向へと向かう。

  • 面白かった!

    どの話もバイオレンス感が強く、「狂」が濃く漂うまさしく悪夢。

    人種問題やきょうだいの確執など明確なテーマが組み込まれており‘ただの不思議な物語’には収まらない奥行きを感じる。

    p459の訳者あとがきに曰く「ミステリー、ホラー、ファンタジー、幻想小説、あらゆるジャンルをまたぐような、少しずつすべてであるような、こわくておもしろい」点が大いに魅力的。

    いずれかのジャンルが好きであればまず満足できるであろう作品集。


    1刷
    2021.4.10

  • 稀代のストーリーテラー、ジョイス・キャロル・オーツが語るのは心の闇。嫉妬、孤独、欲望などが怒りを暴走させ、狂気や残虐さを生み出す過程だ。それは他人事のように書くのではなくその心を巧みに描くことで読者は気持を同化させてしまう。そんなことより話の展開が面白いから読後にふと気づいてそのことに怖さを感じる。表題作は美しい金髪の女子中学生を生贄のために誘拐する歪んだ女の子の話。誘拐された被害者、その母、誘拐犯、はめられる教師、それぞれの心がまるで悪夢のように、善悪ではなく起きている事象だけが描かれる。ラストは明確な解決や結末が用意されていない。差別や劣等感をストレートに書き対立が生む歪んだ怒りをフェアに描く。スティーブンキングと並ぶホラー作家としても評価されるが、ホラーではないしミステリでもファンタジーでもない。ちょっとそんな香りがふと舞い上がるシーンがあるだけだ。最近はノーベル文学賞候補に毎年名が上がる現代アメリカ文学の女王だけのことはある。

  • 悪夢に絡め取られていくかのような登場人物達が語られる7編。
    「タマゴテングタケ」とか読んでて胃の辺りが重苦しくなってくる。
    「化石の兄弟」同じ遺伝子、生まれた日さえ同じという存在に向ける愛憎。萩尾望都「半神」を一寸思わせる。
    「頭の穴」手術シーンの泥沼にはまりこんで身動き取れなくなっていくような怖さ、死体を処理するシーンは滑稽ささえ感じられてくる。
    「私の名を知る者はいない」両親、周囲の関心も愛情も生まれたばかりの妹に向かっていると感じてしまう幼い姉の不安や焦燥。果たして猫は本当に存在していたのか?
    一番印象に残るのは「とうもろこしの乙女」。マリッサ、母親、講師の身に起こった事はまさに悪夢に他ならず、ジュードのしたことは決して許されるものではないが、両親から見放され一緒に暮らす祖母も決して愛情深く接してくれず、世界に敵意と怒りを感じていた13歳の少女は、とうもろこしの乙女の儀式により何を願い、叶えようとしたのだろう。

  • 二項対立的な人物配置が面白い。
    表題作の「とうもろこしの少女」はいわゆる恐ろしい子供ものではあるが、ただ被害者として描かれた少女に人格がないように見えるのが特色か

  • ノーベル賞候補と目されるアメリカ文学作家の短編集。人間の欲望を全肯定し、経済成長を第一義としてきたものの今それが行き詰まりつつある親世代や、その子ども世代が主人公。たいていの人物は自分の抱える「欲望」は正当なものだと思っていて、それが達せられないと怒り、怒ることに何の疑問も持たない。その怒りは社会や弱者、よそ者に向かう。
    今トランプを支持している白人層の心理状態はこんな感じなのかも。中流階級的な物欲を満たすことの他に、自己実現の手段をまるきり持たない俗物ばかり。その点、日本は仏教もあるし、隠遁者の美徳のような「経済的には負けでも精神的には勝ち」みたいな思想を伝統的に持っている。「もったいない」も、欲望を抑制して社会を安定させるために工夫された思想なんだろう。

    作者は多作で有名らしい。構想を練って作り込んでいくというより、現実世界から、人物像と人間関係をスパッと面白く切り取るのがうまい。深みはさほど無いがどの話も空恐ろしい。こんなんじゃこれからのアメリカはヤバいなあと思わされます。

  • ★4.0
    全7篇が収録された著者自選の中短篇集。タイトルに冠している通り、まるで悪夢のような作品ばかり。中でも、表題作「とうもろこしの乙女」の悪意と残虐性と焦燥感、「化石の兄弟」の暴力と悲しくも崇高なラストが印象的。また、「私の名前を知る者はいない」では姉妹、「化石の兄弟」「タマゴテングダケ」では双子の兄弟と、身近な者同士の嫌悪や反発が描かれているのが興味深い。特に双子という関係性は、一筋縄ではいかない感情が生まれやすいのかもしれない。スプラッター度が高めな作品もあるけれど、全ての作品に独特の魅力がある。

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著者プロフィール

1938年ニューヨーク州生まれ。68年『かれら』で全米図書賞受賞。著書に『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』『邪眼』『ブラックウォーター』など。近年ノーベル文学賞候補として名前が挙がっている。

「2018年 『ジャック・オブ・スペード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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