日本地図から歴史を読む方法: 都市・街道・港・城跡意外な日本史が見えてくる (KAWADE夢新書 149)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309501499

作品紹介・あらすじ

地図に記された数々の記号や線には歴史を立体的に知るヒントが隠されている。京都、江戸が"都"に選ばれた地理的事情、北方の開拓と領土確定のなりゆき、古代から通商の要として栄えた港町の秘密など地勢と時代が織りなす数奇なドラマを浮き彫りにする。

感想・レビュー・書評

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  • 自然地理と言う学問
    地球全体の「微小な温度変化」が、日本の歴史に大きな影響を与えてきた、温暖夏雨気候と温暖湿潤気候で文明の進歩に明確な差が
    関東は、台地、関東ローム層で開発は江戸以降
    輸送は船舶に優位性、海流の利用で出雲に独自勢力、、、

    『日本人の源流』でDNA的に裏付け

  • 1998年刊行。著者は明治学院大学助教授。

     地理的分析をもとに、日本各地の都市(江戸、京、大坂)、町(難波、堺、博多など)、街道の形成史、交易史を解説する。

  • 京は陰陽五行説に基づき、綿密に考えられた都であり、四神の守護を受けている。
    北は玄武(鞍馬山)、東は青龍(鴨川)、南は朱雀(巨椋池)、西は白虎(山陰道)で邪気を封じ、更に鬼門である北東は比叡山が鎮守する、最強の都。流石は千年王期である。
    それに比べると、確かに天海の立案により四神を、更に北東には寛永寺を配した江戸ではあったが、少々頼りない。

  • 歴史が好きで歴史小説を楽しんできた私ですが、数年前にふと、歴史上の事件を考える上で当時の気候および土地がどうなっていたかを把握していた上で眺めてみると今までと違った見方になることに気づきました。

    違ったというよりは「より真実に近い」という感覚ですが、この本のサブタイトルにもあるように「意外な日本史が見えてくる」ようです。

    この本の著者は、今までも多くの気づきを与えてくれた武光氏によるものです。百聞は一見にしかず、といいますが、古い時代の江戸の地図に現在の山手線の線路を重ねた図(p63)は、東京の現在の市街地は以前は海であったとか、東京都内には大きな池があったことが示されていて印象的でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・伊能図は緯度は正確だが、経度の精度はあまり高くない。九州南部や東北地方、北海道が実際より東にずれている。当時、クロノメータがなかったから。さらに標高も測ることができなかった(p22)

    ・日本の気候はたえず小さな変化を繰り返しているが長い目で見れば現在の地球は温暖になっている、これは約1万年前に最後の氷期であるヴェルム氷期が終わったことによる(p25)

    ・4-5世紀の古墳時代に再び寒冷期が訪れ稲作に影響がでた。このため日本文明の停滞期、寒冷期の終わる飛鳥・奈良時代に仏教を核にした華やかな中国風文化が花開く事になった。江戸時代後半にも小氷期があった。このため天明の飢饉をはじめ十数回の例外が起きた。1993年の冷夏による米不足が良い例(p26)

    ・かつて弥生時代のはじめに朝鮮半島から移住してきた人々が先住民である縄文人を滅ぼしたとする説がだされたが、照葉樹林の広まりの考察から、その意見が的外れとわかる、縄文人がは落葉樹が日本に広まっていったときに全国に広まり、照葉樹林の拡大に追われて北方へ移動した(p38)

    ・北九州から日本海航路をさかのぼった船は、まず出雲で休息した。出雲政権は、日本海航海路の中継地として反映した(p48)

    ・浅草寺と深大寺は、国分寺よりも古い時代に建てられた寺院である、そこを拠点に中央の文化が周囲に広まっていった(p56)

    ・江戸城は7つの台地に囲まれている、上野・本郷・小石川・牛込・麹町・麻布・白金台地である(p64)

    ・江戸の町は、武家が住む武家地と、寺社がおかれた寺社地と、町人が生活する町地に別れていた。江戸町奉行の支配は、町地のみ(p67)

    ・京都は「四神相応の地」である、北の玄武(洛北の山)、東の清龍(鴨川)、南の朱雀(巨椋池)、西の白虎(山陽道と山陰道)を備えている。しかし江戸はそうではない(p87)

    ・堺が栄えたのは、奈良からくる交通路が大阪湾沿岸に出る位置にあったから、鎌倉時代以降に奈良の寺社や商人が注目し始めた、吉野にあった南朝が京都の北朝の干渉を受けずに四国、九州の見方と連絡するため(p101)

    ・織田信長は堺を直轄として自治を否定した。そのあとも商業都市として重きをなしたが江戸時代はじめに後退した、大阪の陣で堺が全焼した、外国貿易が行われなくなった、大和川の流れ変更の工事、特にこの工事により、大和川が運ぶ土砂が堺の海に押し出され港が使いモノにならなくなった(p102)

    ・戦国騒乱の中で、細川・畠山・三好・松永氏らが京都の争奪戦をくりかえす時期に、大阪の本願寺と堺の自治都市という2つの独立政権があった(p104)

    ・1684年に安治川が開かれた、それによって中之島でいったん分かれた支流がふたたび集まるあたりから最短距離で海にでれるようになった。これにより大型船が淀川に入れるようになった。つまり大阪に物資を送れば、そのまま水路で伏見まで運べるようになった、これが、堺・兵庫との決定的な差になった(p110)

    ・商人の町・博多と、武士の町・福岡の、二つの地名が大きな問題になった。明治22年、博多側が博多市を強く主張したにもかかわらず、県の告示で福岡市と定められた。しかし駅名は「博多」となり現在まで受け継がれた(p143)

    ・横浜も神戸も、古くからあった港のそばの漁村を開発する形で貿易港になっている。日米修好通商条約で神奈川と兵庫を開くことになったが、幕府が神奈川や兵庫の中心地に外国人がくることを恐れたから(p161)

    ・日本海流は奄美大島のところで2つに分かれ、ひとつは九州西に入り対馬海流、もうひとつは、日本南岸を通り、伊豆七島のところで二筋の流れになる、一本目(海暗)は御蔵島と三宅島の間、二本目(黒瀬川)は八丈島のすぐ北、黒瀬川の流れははるかに強いので八丈島につくのは容易ではないと考えられ、本土と八丈島との交流発展が遅れた(p197)

    2014年5月18日作成

  • 都市・街道・港・城跡・・・意外な日本史が見えてくる

  • 日本地図から、歴史の成り立ちを考察した本。
    なぜ京都と大阪が先に栄え、東京は江戸時代まで開発されなかったのか。
    なぜ沖縄や北海道では異なる歴史が栄えたのか。
    地形・海流からそれらについて考察していて、興味深い。

    個人的には、最近行った出雲が栄えた理由として
    山陰には平野が少ないことと海流の流れ上行きやすかったこと
    というのが納得。
    山陽とのアクセスが悪いのに栄えたのはそういう理由だったのね。

  • まぁまぁの評価。
    教科書的な事実の積み上げが多い。人の心情というか、もう少しドラマを盛り込むと良かったかな。

  • [ 内容 ]
    地図に記された数々の記号や線には歴史を立体的に知るヒントが隠されている。
    京都、江戸が“都”に選ばれた地理的事情、北方の開拓と領土確定のなりゆき、古代から通商の要として栄えた港町の秘密など地勢と時代が織りなす数奇なドラマを浮き彫りにする。

    [ 目次 ]
    1 列島を俯瞰して初めてわかるこの国の成り立ち
    2 なぜ東国の鄙辺に大都市「江戸」が誕生しえたのか
    3 政治・経済の中心として「京」と「大坂」が選ばれた理由
    4 今日まで賑わい続ける城下町その発展の秘密
    5 都市を築き文化を運ぶ港町と街道の消長
    6 辺境だった地の異色の歴史を探る

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著者プロフィール

1950年、山口県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。同大大学院博士課程修了。文学博士。元明治学院大学教授。専攻は日本古代史、歴史哲学。比較文化的視点を用いた幅広い観点から日本の思想・文化の研究に取り組んでいる。著書に『律令太政官制の研究』『日本古代国家と律令制』(ともに吉川弘文館)など専門書のほか、『歴史書「古事記」全訳』『古事記・日本書紀を知る事典』(ともに東京堂出版)、『古事記と日本書紀 どうして違うのか』(河出書房新社)など多数。

「2022年 『古代史入門事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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