受験国語が君を救う! (14歳の世渡り術)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309616544

感想・レビュー・書評

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  • K810 (p41まで読んだ!)

    「『受験国語は紙の上の学校だ。だから「良い子」になれば点がとれる。「良い子」になったふりをする方法、教えよう。」

    目次
    第1章 世の中は受験国語のようにできている(受験における「公平」とはどういうことか;受験国語は「好み」で出題されている ほか)
    第2章 受験国語が得意になるたった一つの方法(言葉は使って覚える;「パラダイム」を知ることはなぜ大切なのか ほか)
    第3章 評論で言葉について考える(評論とはどんな文章か;「言語論的転回」というパラダイム ほか)
    第4章 小説で社会のルールを知る(受験の小説では何が問われるのか;「気持ち」は文脈の中にある ほか)
    第5章 二人の受験エリート(要約文型と消去法型;要約文を作る ほか)

    著者等紹介
    石原千秋[イシハラチアキ]
    1955年生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専攻は日本近代文学。夏目漱石から村上春樹まで、小説を斬新な視点から読んでいく仕事に定評がある。また、最近まで国語教科書の編集委員を長年務め、「受験国語」の解き方に関する本も多い

    メモ:
    ・「<いま・ここ>」で自分の「生活」として生きられた受験勉強から得たものは、将来きっと君たちの役に立つ。一夜漬けのような受験勉強は、受験が終わればそれで消えてなくなる。しかし、<いま・ここ>で生きられた受験勉強は必ず将来に活かされる。」p11

    ・「入試に関しては、選考の過程や結果の判定は実に公平に行われているのがふつうだ。ーしかし、入試問題を作るときに、すでに「好み」が入っているのである。厳密にいえば、この傾向はどんな入試問題にもある。ー特に中学受験には学校ごとに顕著な傾向の違いがある。ー「わが大学に入るのなら、これくらいは知っていてほしい」とか、「わが大学に入るのなら、これくらいの論理は理解してほしい」と思ったとき、「好み」が働いている。ーこういうことは、ふつうは「入試問題の傾向」と、穏やかな言葉で呼ばれている。しかし、はっきり言えば「好み」だ。「哲学」でもいい。」p21

    ・「僕は、こういう意味でなら、大学ももっと「好み=哲学」をはっきり打ち出すべきだとさえ思っている。そして、その大学の「好み=哲学」に合う受験生を合格させればいいのだ。受験は学校と受験生とのお見合いのようなところもあるのだから、「好み=哲学」ががっきりしなければお互いに不幸ではないだろうか。
     しかし、実際にはそうなっていない。入試問題を作る大学教員に「哲学」がないからだろうが、そもそも日本の多くの大学にはこれといった「哲学」がないのだから。入試問題で「哲学」を表現しようがないのだ。そういうときには「公平」という言葉が、無気力と無関心と無能力の隠れ蓑になる。
     だから、一見「公平」に見える入試問題がもっとたちが悪く質も低いと、僕は思っている。大学入試センター試験がその最たるものだ。」p22

  • 国語問題を解くために考える視点がちょっと難しい。中学生に理解して活用するにはちょっと無理があるのではないかと

  •  高校入試の国語の問題文を素材に、国語が結局は道徳教育であることを説き、実際にどう解答を導き出すのかを公立高校の問題を4題扱いながら、説明するもの。要点は、「第一は、小説にしろ評論にしろ、『物語の型』や『論理展開の型』のようなものがあるから、それをひとつかみにして『要約文』を書けるようにすること。第二は、消去法に慣れること。(中略)第三は、この世界で生きている自分を見る三人目の自分を手に入れること。」(p.178)という、この三つの方法で、わりと簡単に解答が導き出される、という話。「この本は受験参考書ではないけれど(その実、受験参考書と同じくらい役に立つことを願っている)、形式や内容などいろいろな意味で典型的な高校受験国語の問題を四題だけ解くkことにしたい。四題とも二〇〇八年に実施されたものである。」(p.16)ということで、問題の解き方以前に、出題者が何を意図しているのか、「公平な」採点のために犠牲にされる緻密さや正確さはどこにあるのか、結局背後にはどういう思想があるのか、という解説は新しく、こういう視点は他の受験参考書にはあまりないのではないかと思う。わりと実戦的に、例えば「傍線部の答えは次の傍線部までの間にあることが多いということである。問題作成者は、一つの問いの答えが出たと判断したから次の傍線を引くことが多いからだ」(p.114)みたいな話もある。
     この人の本はちくま新書で出ていて、国語教科書をテーマにした本を読んだ気がするが、とても面白い。頭が良いというか、素材となっている問題文の筆者(作者)と、出題者双方の意図を巧みに言い当てている感じが、読んでいて気持ちがいい。
     書かれていることをただ受け身でひたすら読んでいくより、問題を解く上では、評論だったら「その文章を成立させているパラダイムを見抜く」(p.85)とか、小説なら「世間一般で『良い』と考えられている『親』や『教師』や『子ども』を基準にして読まなければいけない」(p.126)とか、そういう視点からも攻めるべきだ、というのは面白いと思う。おれは英語なので、よく「ミクロの視点」と「マクロの視点」という話をするが、結局構文が取れなくなったりした時は、一旦立ち止まって「マクロの視点」で、結局この筆者は全体として何が言いたいのか、というのを考えましょうね、そしてもう一度その箇所に戻って考えましょうね、と言っているけど、それを精緻化というかもっと正確に具体的に言えばこうなるのだろうか、と思った。(ただ英語の入試問題は、一部を除けば、設問としては単に説明されている事実が把握できているかどうかを問うか、思想と言っても事実を積み重ねるだけで分かるような単純なことしか答えにしない、というのはあると思うけど。)
     ただ問題の解き方だけでなく、最後の「社会とつながった第三の自分を手に入れる」(p.176)、というのは国語の話だけでなく、これは生き方の問題として、難しい。単に客観的に自分を見る、ということだけでなく、その客観性の度合いをもっと高める、ということだろうか。「人生にとって大きな問題ほど、偶然に左右されやすい。その偶然を必然に変えられるかどうかは、その人の人生観に関わっている。」(p.171)、ということで、偶然を偶然として把握し、どうアプローチするのか、その偶然の積み重なった世界から自分はどういう価値を持った存在なのか、ということを考えるらしい。ということで、『受験国語が君を救う』というタイトルは、受験国語の解き方を通してより良く生きる方法を考える、という趣旨だった、ということが分かった。
     最後に「ふろく」として、著者の書き下ろした「いかにも受験国語に出題されそうな小説」というのが載っていた、本当にいかにも感が出ていて、面白い。たぶんこの辺が設問になるんだろうなあ、とか思ったが、ぜひ著者の考える設問まで教えて欲しかった。(と、こうやって答えを求めるのがダメなんだろうけど)
     「おわりに」では、国語が苦手な大学受験生にも勧められる本、ということで著者の他の本も紹介されているので、ぜひそちらも読んでみたいと思った。(19/08/10)

  • http://naokis.doorblog.jp/archives/kokugo_exam.html【書評】『受験国語が君を救う! (14歳の世渡り術)』 : なおきのブログ

    <目次>
    第1章 世の中は受験国語のようにできている
    第2章 受験国語が得意になるたった一つの方法
    第3章 評論で言葉について考える
    第4章 小説で社会のルールを知る
    第5章 二人の受験エリート
    おわりに
    ふろく 短編小説 魚が浮いた日

    2016.08.22 14歳の世渡り術
    2017.02.02 読了

  • これまでの著者の本と同工異曲。

    それでも面白いは面白いし、著者の本をはじめて読む人にはいいのだろうけど、著者の記述問題礼賛には閉口してしまう。
    テストを語るなら、ちょっとはテスト理論を知った方がいいんじゃないかな。記述問題を入れることで「信頼性」がどうなるのか、また、記述問題と選択肢問題でどのように反応データが異なるのか、そういったことを踏まえてそれでも記述礼賛ならいいんだけど、単に「俺はこう考える」だけを根拠に語っちゃうから、そういった部分にはため息を禁じ得ない。

  • 図書館本。タイトルから想像した、「受験国語は、人生の礎となる」的なのとは、やや違っていた。評論は、近代について批判的なパラダイムにある文例が出題され、「大人の考える」よい子を期待されて問題が考えられているという。
    他にも1~2冊程度読んでみたい。

  • 読了。14歳の世渡り術シリーズである。大人になってから読んでいる。このような本を中学生の頃手に取って読もうとしなかったなと感じる。国語の試験問題が載っていた。受験テクニックがあるのかもしれないが、それを教わって身に付けるのは、なんか嫌であった。今思うと、それも身につけるのが大人になることではと考える。娘に薦めるかは、悩むところだ。近道教えても、別の難題があるのが人生なら、その人の持ってる縁で生きて行くのかなと考える。

  • 高校入試を題材にしているが、著者の受験国語論のエッセンスがつまっている。パラダイム論や言語論的転回といった現代思想のキー概念もわかりやすく解説されており、単に受験国語の解き方をマスターするのに役立つだけでなく、中学生が読んで知的に成長できる本だと思う。

  • テクニカルなことを教えつつ、現代教育と社会の本質をあぶり出すことに成功している。その上でニヒリズムに陥らず、中学生へのエールにも溢れているのがよい。

    近代という時代。国語は道徳。国語のタブー。要約と消去法のエリート。どのトピックも興味深い。

  • うすうす感じていたことをまとめてもらった感じです(笑)。
    国語の選択問題なんて間違い探しですよね・・・。

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著者プロフィール

1955年生。早稲田大学教授。著書に『漱石入門』(河出文庫)、『『こころ』で読みなおす漱石文学』(朝日文庫)、『夏目漱石『こころ』をどう読むか』(責任編集、河出書房新社)など。

「2016年 『漱石における〈文学の力〉とは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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