ピエール・リヴィエールの犯罪 改訂版新装: 狂気と理性 (河出・現代の名著)
- 河出書房新社 (1995年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309706139
作品紹介・あらすじ
狂気と言説の深淵を掘り下げた実践の書。言語表現において理性と狂気は排除しあうか、それとも共に包括されてしまうか。ある尊属殺人事件の訴訟記録を通じてこの問題を追求する。
感想・レビュー・書評
-
「1835年6月3日、フランス、オーネー町の農家で40歳くらいの女性とその娘さらに息子の幼児がナタで惨殺されるという猟奇的殺人事件が発生した。
目撃者の証言により犯人は女性の長男ピエール・リヴィエール20歳と判明したが逃亡、1ヵ月後に逮捕された。
逮捕後犯行の動機を『神に命じられた』と証言した。」
ピエール・リヴィエールの犯罪
まるでミステリー小説のようなこのテキストは当時の公式の裁判記録と新聞報道だけで構成されたフーコーのゼミナール用資料です。
この事件の不思議な経過は、犯人リヴィエールが逮捕後わずか10日間で書き上げた犯行の動機、犯行、逃走の「手記」に始まります。
当初、白痴か狂人と思われていたリヴィエールの恐るべき記憶力と理路整然とした文章力に検事、弁護士、精神科医が驚嘆したのです。
リヴィエールは正常人なのか狂人なのか、正常人なら三重の尊属殺人は死刑、責任能力のない狂人なら終身隔離ということになります。
その顛末はこれからの読者のたのしみ、ですが、
ミシェル・フーコーの問いかけはこうです。
「要するにリヴィエールの行動、手記に対して、三つの真実性の問題が提起されたのである。
すなわち、
事実の真実性
世論の真実性
科学の真実性である。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
家族を殺害した青年の裁判記録、新聞記事、手記からなる第一部と
それらに対する論評からなる濃厚な一冊。
この本の一番の読みどころは間違いなく手記である。
それ自体としても非常な熱量のある文章だが、それよりも、
この弁明が不可解ではあるものの不条理ではないという点こそが強調されるべきだろう。
いったい狂人とは誰のことだろうか?
また、もうひとつ論評が光を当てているのは
同一の事件が様々な言葉で語られている時の
それぞれの言論の企みである。
どれも今現代においても考えておくべきことだと思われる。
むしろ、共通の価値意識がずれ多量の言葉溢れる今こそか。