澁澤龍彦全集〈3〉 犬狼都市,毒薬の手帖,補遺

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  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309706535

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  • 『犬狼都市』と『毒薬の手帖』のほか、1962年から63年に書かれた文章31編を収録しています。

    『犬狼都市』には、幻想小説三編が含まれています。表題作「犬狼都市」(キュノポリス)は、断食僧を意味する「ファキイル」という名をあたえられたコヨーテを飼っている麗子という少女の物語で、古代ギリシア時代以来の犬狼の種族と魚族の抗争を背景にしています。「陽物神譚」は、二元論に基づく孔雀信仰とファロスを崇拝する玉ねぎ信仰の抗争を、信仰を持たない彫刻師カリクレスの視点からえがいた掌編で、著者のエロティシズムにかんする思想が展開されています。「マドンナの真珠」は、船が難破して幽霊船に引きあげられることになった三人の女性と一人の男児の物語です。

    『毒薬の手帖』は、毒薬や毒殺をめぐる事件や人物を簡潔に紹介したエッセイ集です。著者は「毒の行使者の70パーセントまでが女性」であり、「毒を用いる女性はしばしば貴族的な美貌の持主で、凛とした気品があり、しかも才智にたけているだけに、男にとって恐怖と戦慄は一層大きいのである」と述べます。実際、アグリッピナ、カトリーヌ・ド・メディチ、ブランヴィリエ侯爵夫人など、本書でとりあげられている毒殺にかかわった女性のなかには、著者の『世界悪女物語』(河出文庫/文春文庫)にも登場する蠱惑的な人物が多いように感じます。

    「哲学小説・エロティック革命―二十一世紀の架空日記」は、近未来を舞台にした短編小説で、「陽物神譚」における存在と所有の対立というテーマを補完する内容をもっています。また「彼女は虚無の返事を怖れる」は、本巻で2頁という短い分量ながら、『夢の宇宙誌』へのつながりを示しているという意味で、重要な文章なのではないかと思います。

  • 2009/
    2009/

    犬狼都市 毒薬の手帖 補遺1962〜63年

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著者プロフィール

1928年、東京に生まれる。東京大学フランス文学科を卒業後、マルキ・ド・サドの著作を日本に紹介。また「石の夢」「A・キルヒャーと遊戯機械の発明」「姉の力」などのエッセイで、キルヒャーの不可思議な世界にいち早く注目。その数多くの著作は『澁澤龍彦集成』『澁澤龍彦コレクション』(河出文庫)を中心にまとめられている。1987年没。

「2023年 『キルヒャーの世界図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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