古事記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集01)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309728711

感想・レビュー・書評

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  • 池澤夏樹氏の「古事記」です。
    本当は積読リストに、人気作家三浦しをんさんのお父様である国文学者の三浦佑之氏の「口語訳古事記」が先にあったのですが、パラパラめくったら躊躇してしまい、池澤版を先に読んでしまいました・・・(本書の解題を書いていてびっくり)

    これまでも何冊か超訳的なものや紀記合わせた解説本を読んできたこともあり、意外とすんなり世界に入ることは出来ました。
    とはいえ、きっちり最初から最後まで古事記だけを訳されたものを読むのは初めてだったので、新たな発見があり楽しめました!

    まず、もともと古事記は帝紀としての役割があり、多くの氏族の祖先としてたくさんの神を設定し、天皇を中心とする権力のネットワークに有力者を組み込むためにつくられたと言われています。
    通読して、それをすごーく実感しました。
    物語中に「これは吉野の首(おびと)の祖先」とかこれは「膳(かしわで)の臣(おみ)の祖先」などの記載が多々あるところとか、物語が時系列になっていなく、いろいろなエピソードの羅列になっている部分があったりとか、いかにも地方の豪族たちが受け継いだ神話の寄せ集めっぽいんですよね。
    解説に、「古事記全体を貫くのは混乱から秩序へという流れ」という記述があり、まさにそんな印象でした。

    それと、池澤古事記は神の名前を漢字とカタカナに使い分けられて、さらに改行などで読み易くされていました。
    私、(読めないけど)漢字表記が美しくて好きなんです。
    例えば簡単で有名どころで言うと
    月読命ーツクヨミノミコト
    とか素敵な字面と響きだと思いませんか?!
    ヒメなんて、比売とか日売とか毘売とかあるんですよ~
    このあたりはみてるだけで楽しめました。

    また、注釈が時々とてもよくて、例えば高い山に登って、の注釈が、
    「前にもあった「国見」だが、ここには登った山の名も見えた土地の名もない。「聖帝」像のための抽象的な国見なのだ。あるいはもう見ることの予祝の力が信じられなくなった時代の、つまりは呪力ではなく政治の時代の始まりということか。古事記の下巻はこういう世界である。 」
    という具合。いい解説でしょ。

    あとは、文章のリズム感。
    原文のリズム感を意識しているんだろうなーというのも伝わってきました。

    他の解説本でヤマタノオロチのモデルとなった川の解説が印象的でしたが本書にはそれについては一切触れられておらず、やっぱり本によっていろいろあるなあ、とあらためて感じました。
    そのあたりをこだわり始めると別の訳本も読みたくなるんですが、結構脳みそを使って読んだので、しばらくはおやすみします。。

  • 230523*読了
    古事記がどんなものか、知ろうともしてこなかった。古事記と日本書紀の違いも。
    世界文学全集、日本文学全集を読破するぞと決めたからこそ、こうして読むことができた。

    上、中、下と神々の誕生、神話から人間味のある天皇それぞれのストーリーへと進んでいく。
    上巻の中には天照大神や因幡の白兎といった昔話にもなっている話が含まれていて、ここが起因だったことを知る。

    天皇の妻がどうで、子どもがどうで…。その子孫は誰々で。名前がたくさん出てきてすべてを理解はしきれない。
    一夫多妻であり、寡婦になれば天皇の親族に娶られることもある。子どもをかなり産んでいる人もいるし、女性って大変。
    そして、あっけなく殺されてしまったり、こうと決めたらすぐに殺してしまったり。
    一話ずつがとてもスピーディー。

    口承文学を文字にする。それが土台となってさまざまな物語が生まれてきた。その起点ともなる文学に触れておけたのは、とてもよかったと思う。

  • ページの下部に脚注が詳細に付いており、訳者に「ほらここ、これはこういう解釈で」「ここはちょっと意味わかんないよね」みたいな解説をしてもらいながら読んでる気分になる。名前の羅列も、ただの羅列に終わらず、読み進められました。古事記の無秩序さが魅力的にも見えてくる。

  • 内容はいわずもがなの驚愕の世界観。それがぐっとわかりやすくなった現代語訳、またページ構成、編集者としての池澤夏樹にも感服。しかし、原典主義者としては、やはり岩波古典大系が欲しいかな・・・。

  • 古事記はそれこそマンガから始まって簡単なものはいくつか読んでストーリーは知っているけど、全部は読んだことなかったから、これで「全部読んだ!」と思えて嬉しい。笑
    で、全部読んだ感想は、系図が長い、ということ。正直そこは飛ばし読みだが、人名とか文章が読みやすくて良かった。そして注釈が面白い。ストーリーはもともと面白いし。

  • 今まで読んできた訳の中で一番読みやすかった。ストーリーも面白いです。

  • 脚注に時折池澤氏のつっこみが入るのが楽しい。
    読みやすくはあったけど、じっくり読み通すのはなかなか骨が折れる。もう一度じっくり読んでみたい。

  • 上巻の国生みから中巻の途中まではとてもスペクタクルで楽しかった。歴代天皇の話になってからは苦痛だった。しかし、今までなんとなくしか知らなかった話をなぞることが出来て有意義だった。

  • くだけた現代語訳に、丁寧な注釈。今まで読んだ口語訳の中ではダントツに読みやすかった。また、原文の雰囲気がつかめたような気がする。それでも、辞書を併用したり、何度もページを読み返したりしたため、読み終えるのには、ページ数の割にだいぶ時間がかかった気がする。 しかし、我らの由緒正しき(?)神々はみんなぶっ飛んでますな。

著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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