竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集03)

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制作 : 森見 登美彦  川上 弘美  中島 京子  堀江 敏幸  江國 香織 
  • 河出書房新社 (2016年1月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309728735

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竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集03)の感想・レビュー・書評

  • 作品の個性と訳した作家さんの個性やこだわりがどれも絶妙にかみ合っていて、素晴らしい作品群となっています。

    ラインナップは、
    「竹取物語」(森見登美彦訳)
    「伊勢物語」(川上弘美訳)
    「堤中納言物語」(中島京子訳)
    「土左日記」(堀江敏幸訳)
    「更級日記」(江國香織訳)

    森見版「竹取物語」
    どこか憎めない阿呆なダメ男を描いたら天下一品の森見さんの訳が冴えきっています。かぐや姫に言い寄って敗れる男たちの滑稽な姿をこんなにも活き活きと描けるのはこの人をおいて他にはいないと思わせる見事さ。そして、家族として過ごした翁と嫗とかぐや姫のいたわり合い、帝とかぐや姫の交流の儚なさや情感ある結末も、巧みな森見さんらしく見事です。

    川上版「伊勢物語」
    和歌の技巧も含意も丁寧に解釈して現代詩風に訳した川上さんの几帳面なお仕事と、彼女らしい簡潔で淡々とした、どこか陰りというかうら寂しさを感じさせる印象の文体が、一段一段は短いけど豊潤な含みと広がりを持つ伊勢物語を見事に蘇らせています。伊勢物語が恋に留まらず、友情や老い、貴族なのに権力闘争の外にいる侘しさ、懇意にする勢力家の主人とのやりとり、孫が生まれた時など、ある男の一生に見る、人の生の断片を豊富に切り取った奥深い物語であることをしみじみ感じられたのは、川上さんの文体の力によるところが大きいです。

    中島版「堤中納言物語」
    単調になりがちな説話集を、実にコミカルに歯切れよくも品良く訳していて、飽きがこない見事なつくりをしています。特に、五七五七七の和歌を、訳でも同じく五七五七七の31字で現した大胆さと言葉選びのセンスには脱帽です。これがために軽やかに読める部分がとても大きいです。
    あとがきを読むと、やはり、意味を取る上でものすごく苦労したとのことですが、正確さよりも作品が持つユーモア性を重視したそうです。

    堀江版「土左日記」
    紀貫之が土左日記を書くに至った心の内を明かす「貫之による緒言」、執筆以後の心の内を記した「貫之による結言」が訳者の創作として盛り込まれていることで、紀貫之という人物とその作品をより現実味を持って感じられるつくりとなっています。
    また、原文と同じように、日記の訳を、一部を除いて、ひらがなのみで記すことで、紀貫之の直面していた感情表現の矛盾や模索等を感じ取れるだけでなく、漢字仮名交じり文に慣れきった現代の読者の直面する戸惑いが、日記といえば漢文と思っていたであろう当時の人たちが読んだ瞬間に感じたかもしれない戸惑いと重なって「疑似体験」できるようになっており、実に工夫に富んでいます。
    そして、慣れない形式の文章を前に、必然、スローペースで読むことになるので、当時の人たちがある種初めての形で自国の言葉をかみしめることになっただろう「体感」的なものも味わえました。

    江國版 「更級日記」
    何気ない人生を、漂う哀愁とどこか優しい文体で丁寧に描いてきた江國さんの訳がぴったりはまった作品です。
    物語に焦がれた少女時代や、秘めた恋、親しい人との死別の悲しみ、平凡に終わるであろう人生への侘しさなどが、江國さんの文体が醸し出す哀愁ある雰囲気で語られており、ある程度の年齢になり、自身の人生を振り返ったことがある人なら少なからず共感せずにはいられないと思います。


    編者の池澤さんの解説も示唆に富んでいて実に見事です。
    特に、源氏物語を中心に据えながら今回発刊された五つの作品から見る、平安期日本文学の二つの座標軸「漢文から和文へ」「和歌から散文の物語へ」の考察には、脱帽させられました。

    これまで古典を敬遠してきた方でも、正確さが物言う学問的な訳ではなく、現代の人気作家さんが独自の創意工夫と素敵な文体で訳しているので、とても面白く読める作品群ではな... 続きを読む

  • 森見登美彦訳『竹取物語』
    川上弘美訳『伊勢物語』
    中島京子訳『堤中納言物語』
    堀江敏幸訳『土左日記』
    江國香織訳『更級日記』

    こんな、宝石の詰め合わせがあって良いのか⁈
    発刊を待ちわびていたし、読むのもドキドキ。
    それぞれに訳者の持ち味があって、とにかくすごい。

    きちんと全文収録されているのも、嬉しい。

    中でも、川上弘美の『伊勢物語』は鳥肌モノ。
    歌物語の真骨頂というか、とにかく、和歌の訳し方が素敵すぎる。
    言葉の数を少なくしながらも、今の感覚を添えてくれて、色っぽいし切なくなりました。

    お気に入りは二段。


    起きもせず寝もせで夜を明かしては春のものとてながめ暮らしつ


    起きるでもなく
    ねむるでもなく
    夜は明けてゆく
    春の長雨がふっている
    わたくしはただ見ている


    そして三十段。


    逢ふことは玉の緒ばかり思ほえてつらき心の長く見ゆらむ


    逢うのは
    一瞬
    恨みは
    永遠


    更に月報の小川洋子が、この川上弘美訳を上手く伝えてくれているので必見。
    そうそう!ですよね!ってなりました。

    あとは堀江敏幸の『土左日記』も、すごく考えられていて、参考文献を見ても納得のラインナップで、仕事の仕方に尊敬を覚える。
    江國香織の『更級日記』は、とにかく可愛い。そうして、姉や父の描写を通した家族としての作者がよく描かれていて楽しかった。

    紀貫之ではないけれど、言葉について、とても考えさせられる一冊だった。
    私たちは、その息吹に今尚こんなに鮮やかに触れられる。

  • 好きな作家さん目白押しで、これは読むしかないなと。

    伊勢物語おもしれえええってなっている。
    川上弘美の作品かと思うくらいどんぴしゃの訳にうっとり。余韻。
    竹取物語はポエム調の和歌がたまらん。これも森見作品かのよう。すばらしいテンポ感。
    堤中納言物語はおもわずニヤリ。
    土左日記は前段と括弧書きの注釈に痺れるし、更級日記は瑞々しくて女の日記感がさすが江國。

    この全集、ほんとぴったりな人に訳を頼みますよね。さいこう。

  • 自分がいかに古典にいい加減に接してきたかを思い知らされることになった。
    かぐや姫の話は誤解が多かった。もっとも、絵本の印象が強くて、かなり違訳を信じていたのかもしれないけれど、それも原典をきちんと読んでいない証拠。
    伊勢物語では、こんな太古から微妙な男女の機微があったのだと感銘を受けた。

  • 竹取物語・伊勢物語・堤中納言物語・土佐日記・更科日記
    どれも学校で古典や歴史で学んだ物語ですが、一度も
    読んだことがありませんでした。(絵本とかあらすじみたい
    なものを除いて)
    初めて読みましたが、現代と異なって違和感のある部分
    もありますし、想いのほか現代でも共感できる部分も
    多く面白く読めました。現代訳が秀逸であったことも
    要因だろうと思います。
    中でも、伊勢物語の和歌と話しの内容の奥深さ。単なる
    恋愛だけではなく人とのつながりを大事にしてきた文化
    が垣間見える部分。
    堤中納言物語の短編小説のような、また現代でも共感できる
    家族や仲間での何気ないやり取りの記載。
    土佐日記の紀行文としての情景の描き方や、昔の船旅の
    リアルな様子。
    更級日記の現代でも十分に共感できる日記文学と、主人公の
    リアルな感情。至極日常的な感情。ドライな感情が
    垣間見える部分。
    など、面白かったと思います。

  • 森見登美彦、中島京子、川上弘美、江國香織・・・新刊が出たら必ず読む好きな作家が豪華に名前を並べた文学全集だ。
    収録された内容も竹取物語、伊勢物語などなど、いずれも学生時代の古文やら何やらで聞き覚えた有名どころばかり。
    個性を持った作家×歴史的名作のコラボ、ということで、別の巻の町田康の「宇治拾遺物語」的なはっちゃけた内容をイメージしていたのだけれど、予想に反しておとなしいというか、「原文を大切にした」ものが多かった。
    思いっきり意訳したものも読みたかった気がするけれどそれだと完全に創作になっちゃうんだろうな。
    竹取物語は別としても、他の作品は改めて読むのははじめてで、新鮮だった。
    とくに、仮名文字をとにかく連ねた堀江敏幸の土左日記は読みにくいところもまた新鮮だった。
    その中でもひらがなだけで書かれた和歌がさらに読みにくいのだけれど、案外口ずさんでみるとふと意味がわかることもあって、「言葉を口にする」ことの不思議さを感じる内容だった。
    日本語って美しい。

  • 初読。図書館。こちらもなかなかの顔ぶれの訳者陣。それぞれの工夫された現代語訳で読むと、小川洋子さんの言う通り「現代文学にまっすぐつながって」いることが味わえる。特に「竹取物語」と「更級日記」が面白かった。「竹取」ってきちんと読んだことなかったけど、ファンタジーで辛辣。「更級」の主人公なんて物語大好きな引きこもり妄想女子で、お勤めも結婚もいまいちな孤独な女性って、現代と同じだよ。それぞれの訳者さんが和歌をいろんな手法で訳しているのも、比べると面白い。

  • 聞いたことのある作家さんばかり。
    「竹取物語」は、むかしばなしのイメージがあったけど、おじいさんのかぐや姫を大切に思う気持ちが予想以上だったのでびっくりした。
    「堤中納言物語」は、その中の「虫めづる姫君」が良かった。いろいろ悟っている姫と、陰で悪口を言いまくりの女房たち。確かに毛虫だらけの部屋は御免こうむりたい。その他の話も短編として完成している。
    「更級日記」は、主人公の思いに凄く共感できる。夢で言われたことをことごとく無視していくのがおかしい。
    古典をちゃんと読むと、なんかよくわからない言葉で書かれているからといって考え方まで違うわけではないとわかる。古典もたまには読んでいきたい。

  • 竹取物語(森見登美彦)
    伊勢物語(川上弘美)
    堤中納言物語(中島京子)
    土左日記(堀江敏幸)
    更級日記(江國香織)
    月報:小川洋子・津島祐子

  • 訳者の勝利、5人が5人とももうこの作品を訳すのはこの人しかいないというまさにその人。

  • 平安時代の頃から日本の文学はこんなに多彩で豊かだったとは。「伊勢物語」は純愛から官能的な愛まで歌いこなす在原業平を好きになった。もてて仕方ない男性の話かと思いきやうまくいかない時もあって面白い。川上弘美の淡々とした調子でいながらしっとりした文章と親和性が高かった。「土左日記」は性器が露わになった女性たちの姿を通してまでも、性から亡くなった子の儚い命を連想する筆者の姿に切なくなった。「更級日記」は主人公にすごく共感した。本が大好きで他のことが疎かになってしまった少女時代を過ごした人はきっと共感できると思う。

  • 森見登美彦が現代語訳をした竹取物語収録

  • おお、大人版!と借りてみる。
    土佐物語が一番読みにくいけど、面白かったかなぁ。
    それぞれあとがきも良かったです。

    他の巻をみると、現代語訳や個人の作家のもあるので、現代語訳の鏡花とか!と思いましたが、なかったので残念。

  • 江國香織訳による「更科日記」が素晴らしい。物語を欲した少女の物語が愛おしい。

  • 豪華小説家陣による、古典の現代語訳。楽しみだった一冊がようやく読めました。特に豪華な一冊といえるのではないでしょうか。
    とはいえ古典。
    普段現代文しか読んでない人間に読みこなせるだろうかと不安になりましたが(特に和歌・・・)
    心配はありません。歌ばっかりの伊勢物語の、現代語訳なんて、しびれるほどのカッコよさでした。
    また、中島京子さんの堤中納言~もおもしろい。とくに虫好きなお姫さまのはなしは、よく知られているからこそ、中島さんの独特の言葉選びがはまってくすくす笑ってしまう。
    森見さんの「竹取物語」はある意味鉄板で、男どものどーしようもなさ、かぐや姫のつれなさぶりなどがいかんなく発揮されている。

    欲を言えば、もうちょっとそれぞれの作家さん「らしさ」で翻案してもよかったのでは、と思うところだけど・・・とはいえあまりに冒険しすぎたら現代語訳ではなくなるし。
    ほどよいところにおさまっていると思いました。

    受験生、古文を苦手にしているひとは、特に現代語訳をしっかり読んで頭の中に内容をたたきこんでおいたら古文も読みやすいと思います。という意味でもお勧めの一冊。

  • 2016.2.21市立図書館
    物語文学と日記文学の巻

    竹取物語(森見登美彦新訳):意外とふつう。5人の貴公子や帝、翁らこの世の人の個性と愚かしさが浮き彫りに。
    伊勢物語(川上弘美新訳):和歌を柱に、あっさりした雰囲気の男と女のエピソード集。
    堤中納言物語(中島京子新訳):10の短編アンソロジー。ちょっと変わったお話がこざっぱりした文体で。少将とか中納言など官位で表されているが、ちょっと光源氏や夕霧&薫を思い出させるようなエピソードもあり、現代の平安王朝ものがたりのいくつかもこうした古典に想を得ていたのかもと気がついた。
    土左日記(堀江敏幸新訳):冒頭におかれた訳者による「貫之による緒言」で、書き手の人生と立場、屈折した思いをしることで、作品にこめられた文体のたくらみや感傷がじっくり味わえるしかけ。
    更級日記(江國香織新訳):本(物語)が大好きな少女が父親の転勤で田舎から都へ。それにともなう人や物語との出会いや別れの喜怒哀楽がすなおですらすら読める文章に。

    返却期限に追われて流し読み。豪華な再話ばかり。こうしてすらすら読めると、書かれた当時の読者の感覚を追体験できている気がしてうれしい。
    どれも和歌がもりこまれていて、そこをどう訳すかを現代語訳者がそれぞれに工夫しているのが興味深かった。ポエムっぽくしたり、31文字で現代語に置き換えたり(俵万智のチョコレート語訳ふう)、短い韻律に豊か閉じこめられた豊かな思いをじっくり表現したり、地の文と地続きにしたり…

    また改めてゆっくり読みたい。

  • 「こんな、おちゃらけの文学なんてあり得ない!」とも思うけど、50年後でも意味が通じる本として残せたので、これぞ文学なのかも知れない。
    全30巻の中で、この3巻だけを選んで読んでみたけど、結構当たりだったかも・・・!

  • 原文を読めるだけの素養がないので、現代訳で読めるのはありがたい。『土左日記』堀江敏幸氏の「貫之による緒言」と「貫之による結言」に紀貫之の土佐日記への想いが甦ってくるようです。それにしても、平安期の人々はよく泣いていたことを改めて知りました。1000年も昔の日本人の感情とはどのようなものであったのかと興味が湧いてきます。私たちが感じないものに感じ、見えないものを見、聴き取れないものを聴いていたのだろうかと想像が膨らみます。ただ、死生観は違っても、男女の仲は変わらなかったようにも想えます。

  • 森見さんの話が聞きたくて講演会に行って、欲しくなって買った本。森見登美彦さんの「竹取物語」は、確かに森見さんらしい。ファンタジーで、竹林が出てきて、美女も出てきて、そして男たちが片想いをする。川上弘美さんの「伊勢物語」は、授業でやった文章が出てきて懐かしい。在原業平すごい笑 中島京子さんの「堤中納言物語」は、歌の訳も三十一文字にしているのがすごい。こんなに楽しい物語だったんだと驚き。堀江敏幸さんの「土左日記」は、ひらがなで訳して貫之の考えを示すという独特の訳。江國香織さんの「更級日記」は、これも授業でやった文章が懐かしい。歌の訳など工夫されているのが伝わってきました。
    古典文学のエキスパートでもない現代の作家たちが訳すというのはどうなんだろうと思ったりもしたけれど、豪華な作家たちの名前から読んでみようと思う人もいるはずだし、その点では素晴らしいこと。平安文学を読むことがないので新鮮な気持ちで読みきりました。思った以上に面白い作品たちでした。

  • 文学全集なんて・・・!と絶句しないで。このまったく新しいシリーズには漱石も、谷崎も、源氏も古事記も、村上春樹もあります。古典作品は森見登美彦、町田康といった若い作家が訳していてとっつきやすく、この巻の川上弘美訳『伊勢物語』でも、ひたすら恋に泣く男と女の姿が見えてきて古典の印象が変わりますよ◎

  • 「もの」を「かたる」のが文学である。奇譚と冒険と心情、そこに詩的感興が加わって、物語と日記はこの国の文学の基本形となった。

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