日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08)

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制作 : 伊藤比呂美  福永 武彦  町田 康 
  • 河出書房新社 (2015年9月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309728780

日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08)の感想・レビュー・書評

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  • 結構ダイレクトなエロや煩悩丸出しだったりするくせに、オチはあったりなかったりする、なんとも自由な、平安から鎌倉までの時代に書かれた四つの説話集(今でいう短編集というか、ショートショート?)から選んだエピソードを現代語訳した作品集。

    読み終わってみて、説話集って、成立当時に楽しんでいた人にとっては、現代人でいうところの、「爆笑系からしんみり系、はたまたホラー系まで!盛りだくさん!編集部セレクト四コママンガ傑作集」とでもいう感じだったのかもしれないなあ、と思いました。

    読む前は、単調で途中で飽きるかな、と思っていましたが、絶妙な訳文のおかげで、純粋に軽い読物として、大笑いしたりニヤニヤしたりしながら、楽しく読み終わりました。

    ラインナップは、
    「日本霊異記」(伊藤比呂美訳)
    「今昔物語」(福永武彦訳)
    「宇治拾遺物語」(町田康訳)
    「発心集」(伊藤比呂美訳)

    伊藤訳「日本霊異記」
    平安時代初期に奈良薬師寺のお坊さんによって書かれた作品集で、主なテーマは「因果応報」。前世とか後世よりも、一回の人生のうちで、何かやらかしたら割と直後に自分に跳ね返ってくる系のエピソードが多かったです。懲らしめどころでないこっぴどい結末も多くて、今時の作品だったらまずこんな風に書かないよな、という、逆に斬新な魅力がありました。

    福永訳「今昔物語」
    平安時代末期に成立したとされる日本最大の説話集。原本では、日本に加え、インドや中国の話も多くありますが、本編では、日本を舞台とした、怪談系、人情系、滑稽系など、雑多な題材だけど、ラストを教訓系で締めるお話が多く選ばれており、色彩豊かだけどなんとなくまとまってるかな、という感じがよかったです。

    町田訳「宇治拾遺物語」
    町田さんのあまりにもパンクで大胆な訳に、ずっと大笑いしながら読み終えました。この楽しさを、町田さんの文体っぽく言えば、「めっさおもろいやん。笑ける」でしょうか。さすが、小説家兼パンク歌手。

    鎌倉時代初期成立の物語ですが、日本昔ばなしでおなじみの「舌切り雀」や「わらしべ長者」や「こぶとりじいさん」、芥川龍之介の「鼻」や「芋粥」や「地獄変」などの題材になった、馴染みやすいエピソードの数々が、もはや町田さんのオリジナル短編集なんじゃないかと錯覚してしまうほど、実に活き活きとリライトされています。切れ味抜群のギャグマンガっぽいテイストです。かなりドスケベかつ下ネタも満載の作品ですが、一読の価値ありです。

    伊藤訳「発心集」
    鎌倉時代初期に「方丈記」で有名な鴨長明が記したものですが、悟りの極致にたどり着くためならどんな奇行も厭わないお坊さんたちの姿が主に描かれており、その超絶クレイジーな姿は実に興味深く、面白い作品でした。どのくらいクレイジーかっていうと、もう、「悟りを開きたいと思い詰めるその心が煩悩やん!?」て、突っ込み入れたくなるレベル。

    相変わらず、編者である池澤夏樹さんの解説も示唆に富んでいて魅力的で、何重にも楽しめる作品集でした。日本中世の説話集を、ガルシア・マルケスの作品と結びつけて論じるなんて離れ技、この方しかできないと思います。

  • 刊行時に町田康さんの訳による『宇治拾遺物語』が激烈に面白いとの評判を聞いていたが、手に取るまでにちょっと間が空いてしまった。

    高校古文で何編かずつ習う説話集、『日本霊異記』『今昔物語』『宇治拾遺物語』『発心集』を現代作家が各自のテイストで訳していく。「こういうことがありました」だけのお話から、「こういうことになりましたから、みなさんも行いを正しくしないといけません」的な教訓話までが、今の感覚とは若干違ったストレートっぷりで迫ってくるので面白い。技巧が凝ってくると教訓が結構入ってきて面白さが若干そがれてくるなか、福永武彦訳・今昔物語の「大きな死人が浜にあがる話」が投げっぱなしのストーリーで好き。

    凄まじく評価の高い町田康訳・宇治拾遺物語以外もみな面白く、それぞれの個性を楽しめる。宇治拾遺物語の中では、「小野篁の才能」はもともと好きな一編なのだが、町田訳によって、地味に面白い原文に、嵯峨帝のややポンコツな感じに由来するのかと思われるふんわりとした面白みがトッピングされていて気に入っている。それに、下男下女を「スタッフの男性/女性」と訳して、妙に軽やかな風味を加えたところも面白い。

    実は町田訳よりも好きなのが、伊藤比呂美訳の日本霊異記と発心集。淡々としているけどしすぎているわけでもなく、よく練られたシンプルさと語感のよさが印象に残る。発心集は学生のころに退屈さしか残らなかった記憶があるんだけど、実は鴨長明さんのコメントの雰囲気が地味に面白い説話集なんだな。

    古典は大学受験のための訳読や、大学その他での研究なら、自分で精読して正確に把握したうえで楽しむものであるのだろうと思うけれど、プロの手によって面白みを抽出されたこういう訳は必要だろうと思った。それに、福永武彦は故人だから別として、ご存命の作家さんにはすごくいいフィードバックなのだろうと思う。伊藤さんは日本霊異記の訳を以前に出していらっしゃるけど、町田さんの『ギケイキ』は明らかにそんな感じがするし(執筆の時系列は実際にはわからないけど、勝手にそんなイメージを抱いている)。

  • 古典を読んで、こんなに笑ったのは初めてです。
    池澤夏樹さん個人編集で刊行されている「日本文学全集」ですが、私は本書に収録されている町田康訳「宇治拾遺物語」が読みたくて図書館で借りました。
    宇治拾遺物語は、鎌倉時代前期の説話集。
    それを作家の町田康さんが現代語訳しています。
    古典の現代語訳と云っても、そこは町田さん。
    古典に特有の固さや難解さなど無縁、現代の若者言葉も取り入れつつ融通無碍な語り口で面白おかしく仕上げています。
    いや、誠に滑稽で、何度も吹き出しました。
    現代語訳を読んで面白かったら原文も読みたい、と思うのが人情(いや、そうか?)。
    というわけで、インターネットで宇治拾遺物語の原文を見つけて、何話か拾い読みしました。
    えええ?
    おもろいっ!
    少々手こずりましたが、原文の宇治拾遺物語も実に面白いのです。
    私は町田さんがかなり意訳というか、もっと云うとかなり大胆に物語を改変しているのかと思い込んでいましたが、むしろ忠実に訳していることが分かりました。
    ということは、どゆこと?
    そう、宇治拾遺物語そのものが面白く、それを元々面白い町田さんが面白おかしく現代語訳しているから、稀に見る面白さのスパーク状態となっているのです。
    それにしても、この宇治拾遺物語の何と低俗なこと。
    男たちが不思議な力で陰茎を取られるわ、師の教えに背いて女と交接していて気付くと女が師になっているわ、お坊さんが宮中で「チ○ポ、チ○ポ」と連呼して脱糞するわ、紳士淑女にはとてもおススメできません笑。
    でも、これも私たちの遠い遠い先祖の営為ないしは想像の産物。
    つまり、日本人は古来、阿呆だったのです。
    そう考えると、何だか肩の荷が下りるじゃないですか。
    日本の心だか体だかを取り戻すと傲然と肩を怒らせる政治家たちもいますが、ぜひ宇治拾遺物語にあるような日本の伝統にも思いを致してほしいと念願して止みません。
    それから、文部科学省にもこの際、提言したいです。
    自分は高校時代、古典がとても苦手でしたが、全部、町田さんに現代語訳してもらえば、「古典嫌い」をかなり減らすことができるのではないでしょうか。
    古典、おもろ。

  • 『宇治拾遺物語』町田訳を読むべく読んだ。
    想像以上の面白さに脱帽。というかもうこれはほとんど町田康の小説。現代語訳ではなくて、現代語による語り直し。

  • 随筆とは筆に随うの意である。そこで筆がどれほど自在に遠くまで人を連れ出すことか。現代の日本人の感受性はこれらの随筆に由来すると言ってもいい。

  • 書評を読んで町田康さんの超訳「宇治拾遺物語」を読みたくて借りました
    なーるほど いいのかってくらいの現代語訳でした
    面白かった
    よく知っている話も
    こういう古文なら高校生にもうけるかなあ
    ≪ 笑いあり エロい話も 昔から ≫

  • これを読むまではお坊さんは立派な人なんだっておもっていましたが、やっぱり人間は迷うものなのだなあと、笑いながら実感出来ました。

  • 不思議話の日本霊異記、昔話の今昔物語集、笑い話の宇治拾遺物語、仏教説話の発心集。いづれも楽しき古典にて、小中学生は須く是より入門すべし。但し、日本霊異記・宇治拾遺物語は目合ひ(まぐわひ)のこと多し。親たる者、よくよく吟味すべし。発心集は「如何にして良く往生せむ」が主題なれば、小中学生には未だ難き哉。町田康の超訳過ぎたる宇治拾遺物語は、笑ひ過ぎたる故、窒息・酸欠に注意すべし。

  • 昔話は大好きで、若かりし頃岩波文庫なんかで、多少エロいやつなんかを読んで、感心したりしたものだった。
    やはり、町田康の宇治拾遺は期待を裏切らない報復絶倒の内容で楽しかった。しかし、同じような内容でも福永武彦の今昔物語は芳香が漂うようで不思議。

  • 【献本】平家物語とセットで頂いたけどこちらは読みやすくて、しかも相当面白いからボリュームの割りにすらすら読めました。R15か!?と思うほど露骨で卑猥な言葉が頻出して吹き出すこともしばしば。特に町田康さん訳の宇治拾遺物語は抱腹絶倒。これは読まれることをお勧めしたい。馴染みのある昔話の出展はここか、と改めて読んでみれば曖昧な記憶が甦り、そして煩悩の恐ろしさを痛感するばかり。発心集は心持ちの貴い人がやたら乞食になり、素性が知れると行方をくらます物語。ただ今を生きる私達にも通じる深い考えが根底にありました。

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