宮沢賢治/中島敦 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集16)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309728865

感想・レビュー・書評

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  • 230330*読了
    日本文学全集も読破を目指しているので。
    世界文学全集ばかり読み進めていたけれど、海外の空気にばかり触れたので、たまには日本の小説も読みたくなって。

    宮沢賢治はあまりにも有名。だけれど、「注文の多い料理店」以外はきちんと読んだことがなかったかもしれない。
    全集には「風の又三郎」も「銀河鉄道の夜」も収録されてはいないのだけれど、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」で取り上げられた「春と修羅」が読めたのは嬉しい。
    小学生の時、宮沢賢治さんの伝記の漫画を何度も読んで、すごく惹かれた。でも、買ってもらった子ども向けの全集(とても分厚い)は読まずじまいだったなぁ。
    でもきっと、今読むからこそ沁みた部分もあると思いました。
    宮沢賢治さんの作り出す世界っていいなぁ。好き。

    中島敦さんは「山月記」は教科書で読んだことがある。
    日本の方だけれど、孔子や孫悟空、沙悟浄など中国を取り入れていて、そこが馴染みのない自分にはとっつきにくくも感じられてしまいました。
    どうしても、この二人を同じ全集に入れられると、宮沢賢治さんの方が好き!とはなってしまうぞ…。好みの問題ではあるのですが。
    孫悟空の話はなぜか漫画の最遊記で読んでしまったな、なぜか。

    日本文学もいいものだ。世界文学全集と交互に読んでいこうと思います。

  • 宮沢賢治(1896-1933)
    自身の教員や農業指導の経験に基づく自然を題材とした短編や詩歌を残す。代表作に「注文の多い料理店」「銀河鉄道の夜」など。

    中島敦(1909-1942)
    古典作品を題材にした短編を多く残す。代表作に「山月記」「李陵・司馬遷」など。

    〇宮沢賢治
    収録作品中には詩もあり、今回、その詩に最も心動かされた。同じ言葉なのに小説と詩はここまで言葉の持つちからが違うのか。

    疾中
    過労にて病に臥せった際に綴った詩集。
    吐血して自らの命短きことを悟る詩集からは病の苦痛と死への諦念が小説以上に読み手の精神に再現された。
    なぜここまで詩のほうが私たちによりダイレクトに感情が憑依されるのだろうか。詩は書き手の精神の言葉だけが書き記されているからだろうか。小説ならば病苦も諦観も地の文で表現される。それではどうしても書き手の精神そのものではなく、書き手の状態の「説明」になってしまう。その分だけ感情が希釈されて届くからだろうか。
    読後に残った余韻を振り返りながらそんなことを考えた。


    〇中島敦
    中島敦は教科書に載っている「山月記」それから「李陵・司馬遷」くらいしか読んでいなかったし、読んだ当時は高校生だったので、ストーリーばかりの方を気にしていたが、今回は、単語の選び方ひとつとっても広辞苑の端から端までくまなく探してとってきたような漢語主体の難解な表現、独特のリズム、歴史や文学を下敷きとして巧みに展開される構成の妙、そういった部分に目が行った。作家として完成度の高さに感嘆するばかりだ。

    悟浄出世
    西遊記の登場人物の一人、妖怪・沙悟浄が模糊な妖怪であるにもかかわらず「自我」とは何かを悩み、妖怪たちの中にも存在する思想家たちに自我について問うて周る。
    さながら沙悟浄は無知の知を自覚するソクラテス。思想家妖怪たちはソクラテスと対話するソフィスト、プロタゴラスを意識させられる構成。ギリシャ哲学の大家プラトン著「ソクラテス対話篇」を色濃く意識しながら、中国大衆娯楽を下敷きに哲学とは対極の妖怪たちに語らせる。
    妖怪なので彼らの哲学は倫理が欠如し、ずれているのだが、ずれている中でも論理の一貫性が各々の妖怪にあって、そのユーモアさがページをどんどん進ませる。
    ギリシア哲学、中国文学をごった煮して、物語として再構成し、文章は漢語を織り交ぜた、まさに彼の教養の高さ、筆致の豊かさに感じ入る。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055904

  • 「山月記」が好きなんだが、ほかの中島敦の作品も読みたくて手にとる。
    表紙の色が大変綺麗。
    南島エッセイ的なのと中国ものと。
    内地、というのが日本のことだというのを理解するのにワンテンポ必要とした。
    ある巡査の~は関東大震災での風評による朝鮮人虐殺の件が当事者の悲しみと怒りともに描かれている部分があり、しかもそれが言論統制により封じられていくという
    結構日本に批判的だと思うのだがまだ昭和一桁代は発表が可能だったのだなあ。
    悟浄さんのはとてもおもしろく読んだ。
    万城目さんので悟浄出立ってのがあったと思うんだが、
    そして大変おもしろかった覚えがあるんだが、
    こっからか?
    孔子のもおもしろかった。
    各人の内側からの、語り、とゆーか、そーゆーところが好きだ。
    やっぱ中島敦は好きだなー。

    賢治さんは解説の「宮沢賢治は過剰である」の一言に
    なんか非常になるほど~っと思わされた。
    正直、嫌いではないが、理解不能な部分も多いので、
    詩とか、そーゆーふうに解説されると、また味わいが違ってくるなあ、と。
    狼森~とか改めて読んでみると意外とおもしろく、
    あれ、こんな感じだったかなーっと。
    私は雪渡りの子がメッチャ好きだ。

  • 池澤夏樹の文学全集、ずっと読みたかったんだよね。で、宮沢賢治を読みたい熱が高まってきたので借りてきた。装丁の色だけでなく、右上の金の小鳥のシルエットもかわいい。

  • 宮沢賢治はまるでジミ・へンドリックスのようだ。最盛期のジミは、自分の体内から自然と音楽が湧き出るように曲が作れたという。音楽を言葉に変えればまさに賢治がそうなのではないだろうか。
    中島敦は、個人的には名人伝が最も好きな作品だけれど、本書への収録作品の中ではやはり悟浄出世だろうか。いや、どれも甲乙つけがたい面白さだった。

  • 宮沢賢治と中島敦。
    『東北・南洋・中国・韓国など周縁から文学の中心に迫った
    純粋かつ豊饒なる作品世界』
    という帯の解説。
    中島敦は初めて読みました。
    南洋の世界の『環礁』や日本占領時代の朝鮮の
    『巡査の居る風景』。中国の故事を基にした、
    『李陵・司馬遷』『弟子』『悟浄出世』『悟浄歎異』
    独特の世界観は引き込まれる感覚や、心象の描きかた、
    その土地の風俗や風景やにおいが濃密に描かれていて
    面白いと思います。
    宮沢賢治の童話と詩。特に詩の『春と修羅』と『疾中』は
    声に出して読むと、ぞくぞくとする内容です。
    また、『ひかりの素足』と『ポラーノの広場』は
    不思議な感覚の童話です。これも引き込まれる感じを
    強く受ける作品です。

  • 宮沢賢治の作品はほぼ初読み。
    中島敦は久しぶりの再読。

  • 世界文学を自分の内部に抱え込んだ二人の創作者。詩において、童話において、小説とエッセーにおいて、奔放にあふれるエネルギー。

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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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