- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309977348
感想・レビュー・書評
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内容が特別なのを最近知って、思い切って買ってしまった。買って良かった。思う存分色ボールペンを引けた。ムック本では異例だと思うが、2010年発行、2016年で15刷を数えている。
特別とは何か。
一万字ロングインタビュー、てばてつや、安彦良和、青池保子、羽海野チカ、永井豪、里中満智子、山岸涼子、小松左京、恩田睦、三浦しをんなどの、心のこもった漫画家生活40周年記念のマンガ手紙や寄稿、そして幻の短編作品3つと、デビュー作、デビュー前の未完成初期作品2つももちろん凄い。凄いが‥‥
それよりも決めてとなったのは、両親と姉と妹の家族インタビューがあったことである。ご存知のように、萩尾望都作品は、親からの抑圧を作品として昇華することで結晶化されてきた。「残酷な神が支配する」なんて、「メッシュ」なんて読むと、特にお父さん(現在は故人)はどんなに酷い親なのか、と想像していた。いや実際には漫画家として(我々としては)大成功しているのに80年ごろまで「仕事を辞めろ」とずっと言われ続けていたわけだから、事実としてかなり酷い親なのではある。
それで、両親のインタビューを読むとちょっと空気が違う。望都の名前からして二つも三つも意味がある。おいおい、私の親は私の名前由来でこんなに語れないぞ。そして父親は家庭では「もとこ」母親は「もーちゃん」と呼んでいるから調子が狂う。普通は母親が子供の頃の思い出を詳細に語るのは普通だ。ところが、古い九州男児の父親が異様に望都の子供の頃のエピソードを語る。曰く「(ボロ長屋に住んでいた頃、床に穴が開いていたので)その穴からカエルが時々顔を出すのです。もとこは、それを飽きもせず長い間、じっと眺めていました。もっとも、もとこはそれをカエルではなく、亀だと思っていたようですがね」等々、娘のことをよく観察している。もちろん、娘の才能を理解しきれない、等々いろいろ問題はあるのだけど、愛情いっぱいに育てたことは確かだろうと感じたのである。
結局、傑作の出来不出来は環境のせいではなくて、その人の才能(努力)なのだろう。両親や姉妹の証言を読んでも、幼年から萩尾望都の絵の才能は抜きん出ていたんだな、と改めて思った。
萩尾望都の仕事部屋や本棚、盟友・城章子マネージャーのインタビューなど、他にも貴重な記録が多くあった。
knkt02111さんのレビューを読んで思わず購入。 -
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2021/11/14
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workmaさんへ
コメントありがとうございます。
資料的にも優れたムックだと思います。workmaさんへ
コメントありがとうございます。
資料的にも優れたムックだと思います。2021/11/14
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萩尾望都特集。
珍しい漫画短編作品も載っていますが、主にインタビューや評論、作品リストなどの本です。
充実した内容で、ずっしりの読み応えでした。
寄稿しているゲスト作家のメンバーの豪華なこと!
快く書いてくれた大作家さん達の、敬愛の気持ちが伝わります。
山岸さんのエッセイで、若き日に初めて天才に出会ったと書かれていたのが印象的。
(手塚さんに講演会でお会いしたときに、萩尾さんは天才だと話していらしたのを思い出しました。まだトーマの頃かな‥
萩尾さんが出てきたときに、何とも言えず新しいと感じたそうで、それが天才なのだそうです。)
子供の頃からのことを語るロングインタビューが興味深い。
それに、長年のマネジャーさんの語る作家生活の日常も。
ご家族皆さんのインタビューも載っています。
な、なるほど‥
萩尾さんの作品を読むと、いい意味で若いまま、大人に押し付けられて困惑し反発する気持ちを忘れていない印象があります。
長編を読むと、そんなにまで不幸な子ども時代だったのかと思うほどなんですよ。具体的にはおそらく全然違う経験だろうと思われますが。
親はわが子の才能を見誤るものなのでしょうか。これほどの人をねえ‥子供の頃にマンガを描くことを禁止されたのは強烈な体験だったことでしょう。
しかも、漫画家として成功しても延々と‥頑固な性格は似ているのでお互いに折れないままなんでしょうね。
ご家族とはいえ一般の人のことをここまで公開していいのかって気もしますが‥(苦笑)
ある意味、これほどの葛藤を与え続けたことが、才能を磨いたともいえますね。何だか感心するような‥
少女マンガ界の偉大なる母、とは‥
思いもよりませんでしたが、確かに十代で熱烈なファンだったような人がもうとっくに立派な漫画家に育っているわけですものね。
何十年も現役で連載を描き続けている(半年や1年の休みは入ってますが)、しかも今も好奇心は衰えず、新しい物を開拓している、というのが何とも凄い。
嬉しいことです。
長年のファンとして、これからもご活躍をお祈りします。
萩尾さんのコミックスはほとんど買っているけれど、前ほどマンガは読まなくなっていて、しょっちゅうチェックはしていないので、買い漏れも。
それに対談本など、たくさん出ているんですねえ。
2000年に出た本なので、作品はもっと増えています。
これからも、楽しみ☆そして、感動は続きます! -
萩尾望都さん作家生活40周年を記念して、2010年に発売されたムック本。
トーマ、ポー、バルバラなどの有名作品や、最近の作品を中心に読んでいる私のようなにわか読者でも、萩尾さんがご両親の言葉や対応に傷ついていたことを度々語っておられるのは知っている。
この本でも、何度もご両親との関係について、萩尾さん自身が言及していた。
…しかし、同じ本の中に、その萩尾望都の両親、姉、妹へのインタビューも載っているのです。目次見た時点で、「これ、良いの?」と、勝手に心配になったくらいです。
だって、ご両親からしたら、萩尾さんは「両親のことを批判している娘」ということになるのではないか。普通の親なら、腹をたてるだろう、うちの親なら絶縁だろう、と思ったんです。
ただ、その後、妹和歌子さんと、マネージャー城さんのインタビューで、いろいろなことが腑に落ちました。
このお二人、たぶん、萩尾さんご本人よりも萩尾さんのことが分かっているのではないかしら・・・なんて。
このお二人のお話を読んで、私の「萩尾さんとご両親の確執」とかいう考えは杞憂なだと思いました。
萩尾さんが、両親を批判するために、過去の出来事を話しているのではない、と思ったからです。萩尾さんは、そういう粘着なことをする人ではない。
本当に純粋に、「こういう事があった、それで私はこう思った」ということを、聞かれるまま言葉にしておられるだけなのだろうと、思いました。
妹和歌子さんは、萩尾さんのこと、親に何か言われたらそのまま「はい」と受け止める人、と言っていた(和歌子さんご自身は、三女の要領の良さで、うまく立ち回っておられたそう)。
マネージャー城さんは、萩尾さんはとてもピュアで、ひがまない、ねたまない。素直なのは、萩尾家の人の特徴だと言っていた。
そして萩尾さんは、小説家長嶋有氏との対談で、石ノ森章太郎「マンガ家入門」の中のお金がなく大根ばかり食べていたというエピソードを読んで、私は大根が苦手だが漫画家になれるだろうかと不安になった、と言っていた。和歌子さんと城さんのお話からするに、このエピソードは「(笑)」ではなく、萩尾さんが本当に大根苦手で悩んだお話なのではないかと思った。
この3つの話から、身近な人に見せる萩尾望都さんの姿というのが、垣間見えた気がしたのです。
たくさんの同業者の方が寄稿したページにも、萩尾さんは菩薩とか、ふわふわ宙に浮いているとか、そういう穢のない神々しさ・ピュアさを、寄稿者なりに捉えたのではないかな。
萩尾望都さん、大先生なのに、なんて愛らしい方なんだろう…と、私は感動しました。
妹和歌子さんが、作家生活40周年について、ずっと漫画を描いて生活できてよかったね、という言葉で〆ていたのも印象的でした。優しい妹さんですね。
私にも、こういうこと言ってくれそうな優しい妹がいるもので。
萩尾望都さんは、漫画が好きだから描いているそうです。
萩尾望都さんが、漫画を好きでいてくれてよかったと、心から思いました。
この本が発売された2010年以降も、精力的作家活動を展開され、長編「王妃マルゴ」「AWAY」、それから「ポーの一族」の再開をされた。
60歳過ぎてからの10年間も、すごく濃い10年間だったのではないかと私は思ったけど、一方で、萩尾望都さんからすると、これまでと同様に、紅茶を飲んでずっと漫画を描いているという日常を送ってきただけ、という感覚なのかなぁ。
色々と悲しい、つらい、生きにくさを感じる世界であるけども、同時に、この世界には萩尾望都さんの漫画がある。
そして、萩尾望都さんの漫画は、彼女の生きにくさに発端を得て生まれた作品でもあること。
そういうこと、考えたのでした。
追記(2022/07/28)
先日、萩尾先生がアイズナー賞でコミック殿堂入りされたとの報道がありました。
萩尾先生は、手塚治虫に憧れていたそうです。
その手塚治虫先生と同じ賞を受賞され、ファンとしても嬉しく思いました。
私は萩尾先生のような偉業を成し遂げることはできないけれど、私が好きな萩尾先生が世界で認められることは、ファンである私にとって至高の喜びです。
その意味でも、幸せをありがとうございます、これからもお体に気をつけて頑張ってください、と言いたいです。 -
2010年、デビュー40年を記念して作られた、萩尾望都総特集!!いやぁ、予想以上の濃さに、読了まで随分時間を要しました。ファンなら必携の内容の深さ、幅広さに、大大満足です。
父母や姉妹へのインタビュー、未完成の初期作品など、ここでしか読めない超レアな特集は勿論読み応えあり。改めて、これまで知らなかった萩尾望都像が見えてくる。
個人的なツボは、「スクリーン」連載の「モトちゃんのシネマウォーク」。「とっても大好きモトちゃん」の、あのモトちゃんに再会できるとは!80年代の人気洋画を萩尾先生に紹介してもらうなんて贅沢~と思いながら楽しく読んだ。
松本零士、永井豪、里中満智子、山岸凉子etc.錚々たるメンバーによる特別寄稿もまた贅沢で、何度も読み返しました!同業者から見ても萩尾先生がいかにすごい存在かがよくわかる。垣間見えるチャーミングなお人柄もまたよい!
本書の刊行が2010年。その後も更に素晴らしい作品を生み続け、デビュー50年を迎えた萩尾先生。どこまで進化を続けるのだろうと、尊敬の念しかありません。萩尾作品に出会い、ずっと追い続けてこれたことが心から幸せである。これからも私達を魅了し続けて欲しいと(お体大事にしつつ…!)切に願う。 -
モーさまのエッセイ漫画も好きです。何描いてても華があるというかキラキラしてる。
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萩尾望都は、1949年5月12日に福岡県大牟田市に生まれたマンガ家。
そうかァ、花の24年組の面々にとって、ほとんど昨年あたりが還暦の年だったんですね。
偶然にも先週のあたまあたりから、何の前触れもなしに急に何故か望都さまを俄然読みたくなって、『ポーの一族』から『トーマの心臓』、『百億の昼と千億の夜』に『スター・レッド』、『バルバラ異界』それからもちろん『11人いる!』と、次から次へと久し振りかで読みふけっていたのですが、やはり何年たってもその輝きは失われることなく、萩尾望都そして竹宮惠子は、女性のマンガ家としてだけでなくマンガ史上において誰も成し遂げることのできない孤高の存在としてあると、改めて確信し直しました。
まさか河出書房新社お得意のムック本に萩尾望都が取り上げられるとは夢にも思っていなかったのですが、この本は、単行本未収録の幻のマンガ8本と10代の頃の未完成初期作品2つと、他に2本のカラー掲載があったり、ロングインタビュー「わたしのマンガ人生」とか安彦良和・永井豪・青池保子・恩田陸・小松左京など著名作家のエッセイあり、そして主要47作品の徹底解説が載っていたりという、ともかく内容の濃い、デビューした1969年から2010年までを総網羅した萩尾望都の完全永久保存版です。
まだまだ衰えることなく新作を発表し続けている彼女を見ていると、もっともっと高齢になってからの老成したマンガを読ませてもらえる期待に胸が震えます。 -
初めて読んだ萩尾望都作品はスターレッドでした。当時のSF少女漫画は凄かった。自分中にあるの宇宙とか未来とかのイメージはここで作られた。那由多、地球へ…、私を月まで連れてって!、11人いる!ホントに大好きでした。フロルかわいい。森博嗣さんのコメントがなかったのが残念。今見てふと思ったのですが、バルテュスにちょっと雰囲気似てますね。
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こ、これはすごい・・・!萩尾望都のすべて!また、里中満知子だの山岸凉子だのちばてつやだの、そうそうたる面々からのメッセージ。そして本人へのロングインタビュー、両親・姉妹・マネージャーへのインタビュー。
母子・父子の葛藤を描く萩尾望都の原点が垣間見える。
日本の漫画界にとっては国宝のような作家でも、両親にとっては「子ども」。そこが痛い。苦しかったのだろうなあ。でも、その苦しみがなければあれらの作品は生まれなかったのだしなあ。 -
萩尾先生のご家族について、初めて知ることばかりでした。
これからも斬新な作品を産み出して欲しいです。
ありがとうございます♪
そう言ってくれると嬉しい。
ありがとうございます♪
そう言ってくれると嬉しい。