ボタニカル・ライフ: 植物生活

  • 紀伊國屋書店
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本棚登録 : 152
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314008396

作品紹介・あらすじ

「ベランダー」で行こう!庭も時間もない不自由な都会でも、ベランダーなら植物と暮らしてゆける。

感想・レビュー・書評

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  • ベランダー!なんて言い得て妙。

    「ベランダーと名乗った途端に不思議と気持ちが張り切り、むしろ庭など金輪際持ちたくないというよう無理な気概に満ちてくる。こんなに狭い部屋に住んでいる私はなんと哀れであることよとか、しょせん仮住まいですからねなどといった消極的な気分はすぐに吹き飛ぶ。」
    ほんとうに!

    狭いベランダに増える鉢植え(株分けしては増える、できた苗は捨てられない、花が終わった宿根草たち、安売りしているとつい買ってしまう、)をあっちに置き、こっちに移動し右往左往している著者の姿が目に浮かぶ。
    植物が芽をだす時、つぼみが花開く時、新しい葉がひとつ出ていた時、悦びに震える様子。
    植え替えなど必要ないのに、高まる愛情と緩やかな成長の折り合いがつかず、不必要な世話をせざるを得なくなってしまう。
    枯れかかっている植物を後悔と祈りの気持ちでじっと見つめるその姿。
    アボカドを食べたら種を植えてしまう、その習性。
    わかる。わかる。うちにもひとりベランダーがいますから。
    ベランダーという人種の心の内の笑いと愛おしさと阿保らしさを描いて見せてくれた素敵なエッセイでした

  • 本書はベランダーの手記である。
    ベランダーとは、著者曰く「庭のない都会暮らしを選び、ベランダで植物生活を楽しんでいる」人のこと。
    いとうせいこう氏が1996~1998年にWebで公開していたベランダの植物たちの記録を1冊にまとめたのが本書です。

    なんというか、いい意味でのいい加減さが私にはちょうどよかったです。
    もちろん放任主義な訳ではなく、世話の仕方を本で調べたり、お店の人に聞いたりして実践しているし、肥料をあげたり気温や日当たりを気にして鉢の場所をこまめに入れ替えたりしているのです。
    …が、気分の赴くままに自分のできる範囲で世話をしながら、花の美しさに喜び、枯れた植物や沈黙を守る球根に憂える著者の姿は、「世話をしきれなそうだから…」と植物を育てることを敬遠していた私に「とりあえずやってみるか!」という気軽さをくれたのでした。

    前書きに書かれている、著者の言い分がすてきなのです。
    「きちんとした知識のもとに植物を育てているわけでもなく、常に美しくその容姿を整えているわけでもない。まるで山賊が美女でもかっさらってきたかのように不器用に、そしておどおどと俺は植物を見つめてきたのだ。」
    私もそんな不器用さを十分に発揮しながら、ベランダーとしての一歩を踏み出したのでした。

  • 以前読んだ本もいとうせいこう氏の文章は読みづらいなと思ったのに、何故手にとってしまったか。植物好きだからかな。まあ、読んでみる。植物日記、花好きだと。私は花じゃなくて、植物系なんだよなーやっぱりあわないかなーと思いながら読むがふと「そう言えば、植物日記的書物は珍しい」と思う。

    ニチニチソウ、クレソンは詳しく調べてみたい。

  • ベランダ―(決してラベンダーでもガーデナーでもない)がおくるベランダでの植物育生奮闘記。
    ある種の病気のように花を買っては枯らしていく。枯れる草花を見て「生命とは何か」「見かけは生きている。しかし中身は死んでいる…植物は不気味だ」と深淵を覗いてみたりしている。
    中々に波乱万丈なベランダ―生活である。軽妙な語り口で、花が咲けば喜び、枯れれば親が亡くなったかのように悲しむ。伸び伸び生長していても、一向に実も花もつけない植物には憤りを覚えつつも何故できないのか、と頭を抱える。
    ベランダ―にとって植物は、立派なパートナーであると感じた一冊。

  • センスの塊みたいな文章
    声をあげて笑っちゃいました。
    芍薬の花束が欲しい…

  • 自己流園芸ベランダ派のほうがおもしろかった。写真が載っていたが小さく画質が粗かった。
    図書館の本が古くて紙が臭かった。

  • (273P)

  • いとうせいこうさんのエッセイが読みたくて、借りて来た。

    なんかハードボイルドで、しんみりしたり、
    どきどきしたり。

    個人的には、植物好きな母親の影響で、
    さっぱり植物が好きでない、私。
    それでも、この本は好きだ。

    次回生れ変わったら、植物になって、
    いとうさん宅のベランダにコッソリお邪魔したいと思う、私。

  • 人間で溢れ返った都会なんかで生活を送っていると、部屋でペットを飼ってみたり、ベランダ園芸にはまったりするような生活に憧れる傾向があるようです。で、またこれが物書きだったりなんかすると、それをモチーフにエッセーを書いてしまうようです。それらに共通するのは、ペットや植物を擬人化し従属関係を通じて、「人間って自然と繋がってるんだな」と実感する点です。本書も例にもれず、そういった植物たちとの繋がりを書き綴ったものですが、著者独特の視点というか語り口が妙にマッチして、植物たちへの偏愛っぷりを更に引き立てています。読み終えた後、つい花屋や園芸店に行きたくなってしまいましたよ。また、今回の文庫版では、単行本の内容にWEBの隠しページで掲載していた内容を加えて大幅増量していますので、単行本を持っていてもつい買い直してしまいますし、続編も期待したいですね。

  • いや~、おもしろかったです。
    いとうせいこうさんの「ベランダー」エッセイ。

    いとうさんがご自宅のベランダで、実に様々な植物(時に魚も)を育てる様子が書かれています。

    それが、偉そうに「○○という花は、赤玉土がどうのこうの……、肥料はどうの…」と講釈をたれるわけではなく、どちらかというと「1年目は花を咲かせたのに、2年目はうんともすんともない」みたいな話が多いので楽しいです。

    私もベランダで自分の気に入った花をちょこっとだけ育てていたことがあるので、「この花(木)は、枯れてるようにも見えるけど、捨ててしまっていいものかどうか」と悩む気持ちがよくわかります。
    植物って死んじゃったように見えて、突然息を吹き返したりすることが、本当にあるもんなぁ。

    本格的にガーデニングを楽しんでる人からすれば「なんなの!?」と思われるような内容かもしれませんが、私はこれくらいのスタンスが、一番共感できるな。

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著者プロフィール

1961年生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・テレビ・舞台など、様々な分野で活躍。1988年、小説『ノーライフキング』(河出文庫)で作家デビュー。『ボタニカル・ライフ―植物生活―』(新潮文庫)で第15回講談社エッセイ賞受賞。『想像ラジオ』(河出文庫)で第35回野間文芸新人賞を受賞。近著に『「国境なき医師団」になろう!』(講談社現代新書)など。

「2020年 『ど忘れ書道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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