暗号化 プライバシーを救った反乱者たち

  • 紀伊國屋書店
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (482ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314009072

作品紹介・あらすじ

インターネット黎明期、プライバシー保護を賭け、暗号のプロが集まる諜報機関の厚い壁に挑んだ男たちの孤独な闘いがあった。eコマースやネット社会の裏に秘められた人間ドラマ。『ハッカーズ』の著者が10年に及ぶ取材を経てまとめた全米ベストセラー、待望の邦訳。

感想・レビュー・書評

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  • ★図書館だよりNo.69 「読書への羅針盤」
     大石 和臣 先生(コンピュータシステム学科)紹介図書
     ➣記事を読む https://www.sist.ac.jp/about/facility/lib/letter.html

    【所在・貸出状況を見る】https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/51320

  • 公開鍵暗号って、技術については(ちょっとは)わかっているつもりだったんだけど、こんないきさつがあったとはまったく知らなかった。不勉強だったなぁ・・・。

    しかもそれが大昔のことじゃなく、つい最近のことだというのに驚く。まぁ、確かに、ほんの少し前まで、アメリカ国内版の製品は暗号強度が高くて、輸出版は弱い、とか、ありましたわな。

    本の内容はよかったと思うんだが、やはりちょっと古くなってるな。その後の動きについても知りたいんだけどねぇ。AESの話なんか、読んでみたいものですけど。

  • かつては軍事関係か高度の秘匿性を要求される情報伝達にのみ利用されていた暗号技術が、現在は使っている人が知る知らずによらず様々なところで一般に利用されている。 本書は暗号化技術、そしてそれよりも重要な認証、否認拒否に関する技術がどのように発明され、普及していったかを綴っている。
    本書を大きく分けると、公開鍵暗号という革命的な技術の発見と、その技術を一般に普及させビジネスに展開しようとする実業家、純粋に個人の情報は自らがコントロールすべきであるとする理想家と国家保安を前面に押し出す権力との戦い、という2部構成になっている。
    公開鍵暗号技術そのものについては、以前から知っていたがこの技術を普及させる上で様々な人がかかわっていた事を改めて認識した。仕事上、以前から米国の暗号技術輸出規制については不可思議なものであると感じてはいたが(公開されている技術を輸出規制して意味があるのか)、NSAの存在、米国政府、議員の動きが詳しく書かれていたので、あの当時に感じていた疑問が氷解した。PGP開発に関する記述が少し物足りないが、これまで読んだ暗号関係の本とはまた違った切り口で楽しめた。

  • 現在の暗号方式の基盤が、「公開鍵」である。本書の前半は公開鍵の発明に至るプロセス、後半はアメリカ政府と暗号発明者達とのプライバシー保護を巡る闘争の歴史である。
    公開鍵方式とは、鍵の「ペア」を使う方式である。ペアの片方 (公開鍵) は、平文のメッセージを暗号化する。このときメッセージに秘密の落とし戸が仕掛けられる。もう片方の鍵 (秘密鍵) は、その落とし戸を開く鍵の役割を果たし、これを持っていれば元のメッセージが読める。秘密鍵(落とし戸を開く鍵)は、盗聴者に奪われないように秘密にしておかなければならない。だが相方にあたる公開鍵(暗号化の鍵)は一切秘密にする必要がない。
    公開鍵の要素は本質的にふたつの素数の積にすぎない。たとえ公開鍵で暗号化したメッセージを傍受しても、それだけでは解読できない。復号鍵を生成するには、元の素数が必要になる。巨大な素数を使えば、その積の素因数分解は、スーパーコンピュータを動かしても何十億年もかかる大仕事となる。このアルゴリズムの強度は、ふたつの巨大な素数の積から元の素数を割り出すのが難しいという点に依存しているのだ。
    この方式の用途は暗号化だけではない。秘密鍵でメッセージを暗号化すれば、公開鍵を使って元に戻せる。ある人の公開鍵で戻せるような暗号化はその人の秘密鍵でしかできないので、これはメッセージの差出人をきちんと認証する手段となる。デジタル署名の具体的なプロセスとなり、ネットワーク上での信用を確立する。
    この公開鍵方式の普及を阻害しているものにアメリカ政府の情報規制の影があった。NSA (国家安全保障局)はアメリカの暗号技術情報の保管庫と言われる。NSA=アメリカ政府は、強力な暗号が一般に広まると敵対国やテロリストに利用され、情報収集が阻害され、国家の安全がおびやかされると考えていた。民生用暗号の強度に制限を設け、さらに輸出も規制した。鍵預託方式までも提案した。暗号鍵をアメリカ政府が握っているようなセキュリティシステムを、どこの外国企業が欲しがるだろうか。この規制が、オンライン決済などの普及を阻害していたのだ。

  • 公開鍵暗号方式の出自と、政府・NSAのやり取り。
    実現までの数学的な問題と実装の問題がクリアさせるところは、才能のある人間がいかに必要とされるかがわかる。

  • ネットで様々な取り引きがされるのが当たり前になった今、暗号化技術はなくてはならないものなるまでのドラマを描いたノンフィクション。
    20年前、まだ情報の秘匿が政府の一部機関でのみ重要視されていた頃から、ある一研究者が暗号化技術の重要性を意識していたのはすごいと思った。

  • “暗号”という言葉には、何やらよく分からない「ワクワク、ドキドキ感」があります。

    今から30年以上前、「探偵手帳」(詳細は覚えていませんが)に心躍らせていたことを思い出します。

    本作品を読んで、そんな童心に返るようなお伽噺とは全然別次元の、ハードボイルドな物語があったことを知りました。

    “暗号”に限った話ではありませんが、振り返ってみて(結果として)何やら偉業を成し遂げた背景には、個人の燃え滾るような情熱が人々を突き動かすケースが多いようです。

    この話が、更に「ワクワク、ドキドキ」するのは、政府(暗号のプロが集まる諜報機関)が絡んでいるからです。

    個人 vs 政府

    どう考えても勝ち目の無い戦いですが、いつの間にか、どこからか<仲間>が集まってきて、コミュニティ(?)を形成し、また、ビジネスとして注目されるに従い、徐々に影響力を持つようになります。

    ネットでの買物が一般的(便利)になり、“暗号”を意識することなく安心して利用してますが、その背景にある物語(登場人物)に感謝します。


    『ハッカーズ』の著者が10年に及ぶ取材を経てまとめた全米ベストセラー

    だそうです。

  • 本書は暗号の歴史書であり、暗号の技術書であり、暗号をめぐる人間ノンフィクションであり、ビジネス書であり、諜報界の歴史の一部であり・・・と、あらゆる要素を含んでいます。裏を返せば、それだけ「暗号が世の中に与える影響」=「暗号によって世の中の人々が受ける恩恵と制限」があらゆる範囲、人々に及んでいることを示していると言えます。「暗号化」が決して他人事ではなく、本来的に身近な存在であることを教えてくれます。ネットワーク時代の教養として知っておきたい・・・そんな一冊です。

  • 良い。

  • ハッカーズを書いたスティーブンレビュの本。今度のテーマは暗号化です。
    本自体の内容よりもレビュがなぜいつもこうおもろい点をついてくるのか?その本の執筆テーマの着眼点が興味ある。
    つぎはインターネット企業をルポしてほしいな。

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