文学的商品学

著者 :
  • 紀伊国屋書店
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本棚登録 : 149
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314009584

作品紹介・あらすじ

商品情報を読むように、小説を読んでみよう。庄司薫から渡辺淳一まで、のべ70人の82作品を自在に読みとく。

感想・レビュー・書評

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  •  文学をストーリーやテーマに沿って読むという行為から解き放ち、描かれたモノを取り上げてそこにどれだけの情報(著者が意図したものか、意図せざるものかにかかわらず)が込められているのかを複数作品にわたって読み込む。さすが斎藤美奈子というか、意地悪で鋭い指摘の数々が実にたのしい。小見出しがそのまま名言レベルの完成度。第一章「アパレル泣かせの青春小説」から引いていわく〈一人称小説で描かれるのは「非日常的な服」だけである〉〈他人の衣服に目がいくのは語り手がドキドキしたときだけである〉〈青春小説の衣装は「脱ぐ/脱がせる」ためにある〉。「広告代理店式カタログ小説」は〈一人一品〉の物語でその究極は「女のカタログ」であると決めつける。「いかす! バンド文学」において、文学がどこから実際に「音を出し始めた」のかを考察する。〈オートバイは人格をもった登場人物の一人である〉(『キノの旅』まで射程に入っている、当然)。わはは。たとえ断片で「ああ、思ったことある」と思っても、それを実例重ねてだめ押しまでできるってのは、やっぱりすごいな。

  • 誰かがレビューで「文学批評芸人」とか言っていたが、けだし正鵠射た表現である。心から笑える文章をひねり出す作家は、もはやこの先生をおいて他にいないのではないか?アイテムやロケーションの「くくり」による評論は企画自体も目新しいが、なにせ乗りに乗ってニヤニヤしながら筆を進めているさまが目に浮かぶような愉しさがある。そうか、「くくり」という言葉から気づいたが、この形式は「アメトーク」だ。それの文芸評論版だ。さながら先生は司会ということで、やはり芸人だということなのだな。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB00087433

  • 装幀 / ミルキィ・イソベ
    本文レイアウト / 安倍 晴美
    初出 / 『PLATINO』2号、『i feel』5号~11号、書下ろし1本。

  • amazon 内容紹介
    商品情報を読むように、小説を読んでみよう。文学の面白さはストーリーや 登場人物の魅力だけではない。作品に登場するモノやその描写を見ていくと、 思いもかけなかった読み方ができることに気づくだろう。ファッション,風 俗,ホテル,バンド,食べ物,そして「貧乏」。9つのテーマをめぐって, 村上春樹から渡辺淳一まで読みくらべる,痛快無比の文芸評論。

  • カタログ小説は文学不況の昨今はバブル期と比べても減りはしていないかも。

  • 前半はどちらかと言えば、小説の中に登場するファッションや車、料理といったものの描写を通じて、小説作者の異性への貧困なまなざしが生じてしまうところを描いていて、後半は音楽、オートバイ、野球、貧乏小説の構造分析といってしまっていいだろう。前半部分の問題意識でそのまま押し切ってもらえたら…と思ったが、そうもいかないものだろうか(ネタがそこまで無かったとか)

  • 相変わらずの斉藤節。
    スッとする語り口で面白くためになった。

  • 評論家の文章というと小林秀雄に見られるようにわざと論点がわからないようにしているとしか思えないまわりくどい隠喩・暗喩に満ち満ちた文章を想像するが、彼女の文章というのは歯切れのよさが特徴で、江戸っ子はかくありなんとばかりに論題を切って捨てる。

  • 面白い!\(^o^)/


    斎藤美奈子のような(意地悪な(*^_^*))大人になりたい!と願っている私なのに、なんでこの作品をこれまで読み逃していたのか・・・??

    デビュー作の「妊娠小説」以来、10年ぶりの文芸評論というこの「文学的商品学」。
    小説を内容云々より、取り扱っている「商品」の描き方を取り上げることによってばっさり斬り捨てたり(これがほとんど)、上手い!と評価したり。

    私は、衣・食・住や当時の風俗の章なんて、もう、大笑い、かつ、溜飲が下がったという。(*^_^*)

    一人称の青春小説は確かに衣服の描写(特に自分の服ね)はしにくいと思うけど、それがなされるのはどんな時か⇒非日常的な場合ですか、なるほどねぇ~~。

    また、風俗を描くのに、いかに、渡辺淳〇が稚拙か、その対面に金井美恵子を置き、検証していく作業には大人げないと思いながら、もう笑えて、笑えて。(*^_^*)
    しかも、衣食住の描写レベルはどれか一つだけ上手とか下手とかはなくて、「根性の差なのか、技術の差なのか」作家ごとに見事に揃う、とまで言われちゃって。

    庄司薫、田中康夫、三田誠広、山田詠美、村上龍、などの「一応は」読んでいる小説(大好き!だったり、今一つだったり)が斎藤さんの角度から切りこまれるとこんな風に三枚におろされちゃうのね、という面白さや、
    村上春樹や丸谷才一先生(*^_^*)まで、ばっさり。

    青春、風俗、カタログ、フード、ホテル、バンド、オートバイ、野球、貧乏という章だてで、いかに「モノ」を描いているか、をあげつらった(*^_^*)本作。
    そっか、登場人物たちの佇まいがピンとこなかったのは、私の頭が悪かったんじゃなくて、彼らのセンスが悪かったせいなのね、なんて、慰められたところが多々あったことも付け加えておきます

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斎藤美奈子の作品

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