子どもの共感力を育てる

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制作 : 戸根 由紀恵 
  • 紀伊國屋書店 (2012年8月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314010962

子どもの共感力を育てるの感想・レビュー・書評

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  • 子育てについて、世の中はいろいろな情報にあふれている。
    ・褒めて育てるべき、
    ・3歳までで頭の良さが決まる、
    ・抱っこしすぎると抱っこぐせがつく
    などなど、まさに百人百様で、定説はない。

    それでも、自分の子どもには幸せになって欲しい、そんな想いから、何らかの説をよりどころにせずにはいられない、そういう親たちが多いのではないか。あるいは逆に、貧困や暴力のない豊かな暮らしをしているので、普通に育てていれば問題はない、そう考える人たちも多いかもしれない。

    貧困や暴力の劣悪な環境が子どもに悪い影響を与えることは容易に想像できる。しかし一見問題のない、あるいは裕福な家庭でも、子どもの成長という観点からは問題がある場合がある。

    この本は、生物学的、生理学的なアプローチから、人類の自然な成長という観点から何が必要か、児童精神科医である筆者が経験した実例と、仮説を裏付ける心理学論文とともに説明している。

    要点は、
    ・子どもは一人の養育者と安全安心を結びつけるため、特定の養育者が継続的に世話をする必要がある
    ・子どもにとって新しいことは全てストレスであり、過度のストレスは子どもを防御的にしてしまう
    ・かといって全てのストレスを避けると、ストレス適応能力が育たない
    ・適切なストレスのもとで、さまざまな人と接することで、人の気持ちを考える、いわゆる共感力が育つ

    と、当たり前の内容ではあるが、悲惨な環境の中で、誤った子育てが繰り返される例や、そんな中でも優しい気持ちを育んで立派に成長した例を読むと、日々の子どもへの接し方について、これでよいのか、再考してしまう。

  • 人間は基本的に、頼り頼られる存在である。健全な社会では、人と人との関係は重要な役割を果たしている。

    「愛を知らなかった子 ネグレクトされた少女が家族を得るまで」ダイアン&バーニー・リーロウで、ネグレクトをされた子どもの治療の第一人者として、ブルース・ペリーが紹介されていた。

    この本を読んで、自分に何があったのかをおぼろげに理解できた気がした。
    また読みたい。

  • エッセンスの詰まった一冊。
    I will be back.

    子育て、人間についての理解が深められる本。

  • 前半の殆どのページは、子どもの共感力「不足」についての話。いかに様々な養育環境によって影響を受けるかが事例とともに書かれている。現時点での環境要因だけでなく、母親の胎内環境、世代間に渡る問題としても描かれる(子どもの共感力を育てるためには様々な要因が継続的に関わることが説明されている)。第7章の「レジリエンス」からは、過酷な環境の中でも高い共感力をもつに至ったトリニティーの事例が紹介され、そこで、共感力を育てるためのエッセンスが考察されている。後半は集団心理的な理解、子どもにテレビを見せることの負の影響が強調される。後半部分だけは、やや基礎研究を拡大解釈した感がある。
    一般向けの本だが、多くの研究を引用しながら論じられている良書。

  • 毎日新聞の書評から

    人は誰しもひとりで生まれ、成長するのではなく、環境や人間関係によって脳も成長する
    脳の持つ特徴を知り、共感力を育てることが大切
    共感力が育っていないと、人間として
    いろいろな事例を見ながら、そのことについて言及していく


    1.楽園は人のいるところ~メアリーゴードン

    http://www.rootsofempathy.org/en/act/become-a-champion.html

    「母はどんなときにも相手に気まずい思いなどさせない人で、それは子どもの私に対しても同じだったわ。誰にでも尊ぶべき価値があると承知していたの。だから車に戻ってから母は言ったものよ。『顔をしかめたというのは、あの人を非難したことになるのよ』って。そして『あの女の人は苦しい生活の中でいちばんいい判断をしているの。あなたはそれがどんな苦労か知らないでしょう』とね」P020

    週末に父親と病院に行く機会があれば、入院患者に本の読み聞かせをした。こんなとき父親は、時の読めない人に恥ずかしい思いをさせないように気を配って本を読みたいかを必ず確認し、そばでいっしょに読んでかまいませんかと訊ねた。この種の事前行動はとかく辛い自己犠牲とおもわれがちだが、メアリーの両親はじつに楽しげで、それは子どもたちにも同じことだった。誰かの家に行くことはすてきな社会科見学だった。
    「親戚ときたら話し上手ばかり。文学というのは、人の気持ちや違う立場での見かたを教えてくれるものだと知った最初だったわね。別の誰かになってみたらという誘いかけなのよ。文学には、人間を高め、人と人をつないでいく力があると私は信じているの」P021

    赤ん坊は生まれた直後からいくつかの表情を真似できるという。ととえば、舌を出して見せれば、赤ん坊も同じにするはずであり、この能力は、共感力を予感させるものとなっている。もうひとつ原始的な共感は、新生児の間で泣く行為が伝染していく現象にも見られる。~これは自分のストレスと他者のストレスを区別できないからだという。P024

    共感力の本質とは、相手の立場になりきる能力、相手の身になったらどうかを感じとり、それが辛いものならば辛さを軽減してやろうと思いやる能力である。このemapathyという語がつくられたのは1800年代初めという最近のことで「中に入り込んで感じる」という意味のドイツ語を英語に翻訳したもの。sympathy(同情)も似たような意味をもち、現在のempathyと同じように使われた時代もあった。しかしこちらのギリシャ語の語源は「ともに感じる」という意味で、現在使われているempathyとsympathyの微妙だが重要な差異がここから生まれてくる。
    誰かに共感するとき、あなたはその人物の視点から世界を眺め、感じようとする。あなたの心を占める感情は、自分のではなく相手の状況に関わっている。しかしsympathyを感じるときは、相手の状況を理解し、身につまされて力を貸したくなる場合もあるはずだが、わがことのように感じる必要はない。哀れみpityというのも経験を共有することなく痛みを理解するという考え方をあらわす言葉だ。しかし共感の場合、あなたは相手の痛みをわが身に感じている。他人事として辛いのではなく、あなた自身がつらいのである。P026

    遺伝子を伝えるために身内を大切にしたいと感情が共感力の種子となる。しかしどんな種子も痩せた土地では芽吹かない。人は遺伝子のレベルで人を思いやるようにできているが、共感力は経験が必要であり、この能力を伸ばすにはつねに他者とのかかわりが欠かせない。対人的な交流では遺伝子が人間の生物としての体系全般ん伊大きな影響を及ぼし、もっとも複雑な能力である言語にさえその影響力は及んでいく。だからこそ、親切にするkindという語の語源は、親族kinなのであり、kindには「同じ種である」と「優しくいたわる」という二重の意味がある。P028

    「自己制御」能力、つまり自分自身や、自分の感情や考え、そして経験に対する反応をコントロールする能力も育っていく。しかし生まれて初めてのなじみのない経験はすべて、ストレスを与える「ストレッサー」と感知される。~ストレスに反応し、その反応をコントロールする能力は、生きていく上で欠かせない。私たちの脳は多くのシステムがつながった広範な分散型ネットワークであり、外界と自らの胎内という内なる世界の両方から情報を受け取る。P029

    ソフィアに影響を与えるとき、メアリーも我が子から深く影響を受けている。赤ん坊は生まれつき、自分の真似をされるのが大好きだ。赤ん坊の注意をひきたかったら、その子がしているのと同じ行動をしてみるとよい。その動きをくりかえし、ちょっと変化をくわえてやれば、またすぐにその真似をしてくれるはずだ。P30

    脳が基本的な欲求をつねに監視し、対応するという作業の大半は、本人の意識しないところでおこなわれる。P33

    酸素が足りないと本人が意識しないうちに、ストレス反応システムは周囲の世界に思いをはせる能力に影響を与えていたのであるP34
    脳そのものが、私たちのやる気をひきだすために、原始的ではあっても非常に強力な方法をいくつも用意している。苦痛を減らしたり、子孫を残す可能性を高めたり、自分や自分の子どもの安全を確保するような行為をしているとき、脳は開館を与えてくれる。P34

    ミラーニューロン~本人が何かをしているときに活性化するが、さらに重要なことに、誰かがそれと同じことをしているのを目にしたときも、控え目な形であるが、活性化するP036

    キリスト教「隣人を自分のように愛しなさい」マタイ22-39
    道教「隣人の得をわが得と、隣人の損をわが損とみなすように」
    イスラム教「その者がわが身に望むことを兄弟にも為したいと考えるまで、その人間は信用できない」
    ユダヤ・タルムード「わが身の害となることは仲間にも為すな。これこそが法であり、残りはその解説に過ぎない」

    「共感っていうのは、他の人の気持ちがわかって、その人になりきってみること、誰かが自分と違う何かをしたら、それはただ違うことをかんがえているからだろうって理解する力のことです。だから、他の人の話をちゃんと聞いて、何をしているのか何を感じているのかかんがえてみるのって大切だと思う」P42

    2顔の話~痣のあるジェレミーとアンジェラ
    痣などに息子の人生を左右されまいとする母親のみあげた決意が、ジェレミーにとって別の問題を引き起こした。
    母親がわが子を見、ふと目をそらし、また視線をもどす。じつはこの短い中断が重要なのである。一般に、こうした中断は軽いストレスや短い別離の経験であり、すぐに目の合うことで別離は終了する。この短い中断こそがストレス反応システムをつくりあげ、やがて子どもは軽度のストレスがくりかえされても過剰反応せずに対処できるようになるP53

    大人になってからも健全なストレス反応システムを維持するためには他者の存在が欠かせない。P58

    強すぎる共感はこのように、外部からは利己主義にみえかねないし実際に本人に利己主義的な行動をとらせてしまう場合もある。P64

    3.人が恋しい~ユージニア(孤児院で育つ、ロシアから引き取られた子)
    成長し損なう=成長ホルモンが分泌されない~一対一の世話をうけていない場合、愛されたことを実感できないと生存の可能性が低いと感知されて肉体の活動が停止する 知能指数も低くなる 社会的能力が欠損し、繁殖行為ができない、不安定で攻撃的もしくは無気力

    一雌一雄の関係~ホルモン名オキシントン 絆つくりにオキシントンが役立つ

    記憶障害、聴覚障害 は、ストレスで悪化するP95
    わざと忘れるのではなく、障害であることもある

    4.濃すぎる世界~ジョナ(自閉症) 父サム(アスペルガー症候群)
    自閉症と診断を下す3つのポイント
    視線を合わせず、対人的な関わりが苦手
    言葉の問題
    反復的な遊びなど、何かに強いこだわりを示す

    「自閉症の人びとが苦労してきたのは、感覚のいちばん基本的なレベルでくつを感じていることを周囲に気付いてもらえなかったせいもあります。こうして話をするのだって、横で削岩機がすごい音をたてていたら無理でしょう。感覚にとって負荷がおおきすぎるというのはそういうことなんです。辛いものですよ」P107

    共感力がもつふたつのこと
    1気持ちの伝染によって人は他者の感情を感じとる
    2別の人は別の心をもっていて、その人と同じ考え方や見かたをすることができたとしても基本的にはその人は自分と違うことを知っていて、違うことを感じ考えているという認知理解。認知理解ができると「心の理論」がわかっているといい、心の理論を使うことを「視点取得」という=他者の視点に立って世界を眺めるP109

    自閉症の子は必ずひきこもるなど「先天的」と思われていたものが、じつは遺伝的素質の欠如ではなく、環境的欠陥が原因だった可能性があるP120~自閉症だからと声かけされないと言葉は発達しない

    人に共感し、人と真の絆を結ぶ力はスイッチのオンオフで切り替えられるよな単純なものではないP127

    5.嘘と結末~ダニー嘘をつく少年
    狭い社会の中での共感
    詐欺師の中で育った子どもの負の共感

    6.冷酷な心~ライアン
    社会病質(ソシオバシー)
    3歳まで18人のベビーシッターに育てられ、人間に対する共感がまったく機能しなくなってしまった 喪失ばかりの経験

    結果だけを賞賛されて育った自意識の肥大した無神経の若者に成長
    =協力よりは競争をよしおつる個人主義の文化

    乳幼児にも社会的欲求がある

    7.レジリエンス~トリニティ(スラム街の少女)
    父は薬物中毒の売人
    感受性と高い共感力を持つ少女

    子どもがトラウマにさらされると、身体がつねに強い興奮状態になり、その影響は大人になっても消えないということでしたP200

    高い知性があれば、難局に際してより多くの選択肢を思いつくことができる。子どもがひどく暴力的で反社会的な行動にでるのは、逃げ場がなく、どうしようもない」と思いこんだときだ。賢い子ならば、前向きな解決法を思いつくことができるので「追い詰められた」きぶんにならずにすむ。P201

    レジリエンス=困難な状況を生き延びる回復力P201

    深刻な問題行動を起こす子どもは、原因と結果をむすびつけるこうした能力を書いている場合が多い。子ども時代の環境があまりに混乱していて、因果関係がはっきりみえていないのだ。異常な出来事ばかり、首尾一貫しない事柄ばかりが続いてきたからだ。平均以下の知能しかない子どもは、一定の反復がないと物事が学習できない。一方、トリニティは高い知性ゆえに少ない反復で因果関係が理解できた。脳細胞は少ない回数の情報縫う力によってこうした関係を「敗戦」できた。だから親がいつも首尾一貫した扱いをしてくれなくとも原因と結果という重要な関係を了解していたし、豊かな感受性ゆえに他人の視点に立って考えることもでき、親の行為が自分や妹たちに与える痛みだけでなく、父や母の痛みまで感じ取ることができたのである。しかし、トリニティがすばらしい人生をおくるこいとができた最大の要因は、人間の中に善を見出し、力を貸してくれるやさしい人々を外の世界に見つけられたことだろう。父については、ときには残酷でさえあった仕打ちのことは忘れ、あたたかく辛抱強く接してくれた数少ない思い出だけを大切にした。~近所の人や学校の教師やカウンセラーが時折かけてくれる優しい言葉や親切に彼女は慰めを見出すことができた。こうして助けを求め、助けを引き寄せることのできる能力、そして折に触れてその求めに親切で応えた人々がいたことが、ほかの妹たちの多くが乗り越えられなかった苦境を克服させた。家庭以外の場に愛情深い人を見つけて心をつなぐことができるか否かもまた、研究によれば、立ち直る力と関わっているという。さらに、トリニティが妹たちや、彼女たちとのつながりに責任を感じていた点も重要である・これらすべてが相まって彼女の共感力を育んでいった。P202

    愛情の薄い母親に育てられると、性的に早くせいじゅ駆使、早期に性行動を開始するのである。遺伝子を後生に伝える確立が高まるためで、長寿など望めない厳しい環境で遺伝子を確実に残すには、生殖行動の開始を早めるしかない。P207

    太った体の中に隠れてしまったら誰も私と何かしたいなんて思わない。P218

    8.カメレオン~アリソン
    強いストレスは世界への対し方を変えてしまう。脅威に満ちた状況は、きちんと考えることも優しい気持ちになることも、生理学的にきわめて難しくしてしまう。ストレスに押しつぶさrていくほど、脳の思考的な領域は活動を鈍くして仕事をやめてしまう。また、筋肉とおなじように脳もよくつかわれる領域ほど発達するため、つねにストレスが存在するとき、反応だけが速いがあまり考えない脳になってしまう。P261

    9.おれたち対やつら~テレル スニーカーをモノにするために射殺した子
    母親ジャネッタはコカイン中毒
    ブラッズの中で育つ子

    10.テレビに育てられて~ブランドン
    母親はうつ病

    人間の脳は本来、周囲と関わりたいという欲求があるという事実を知らなければ、テレビから言葉を覚えても別に問題ないと思われるかもしれない。テレビにはたくさんの言葉が登場する。言葉は動作や実際の事物と視覚的に連動し、第一、何度でもくりかえされる。しかしこれは、言語の基本的機能、つまりは人と意思疎通をはかるという機能を無視した考え方だ。
    これまでみてきたように、脳は社会的な器官であり、成城な発達のためには周囲の人々との愛情にあふれた交流を必要とする。私たちは通常、母親との関わり合いによってストレス反応システムを鎮静化させ、学習可能なおちついた状態にする方法を覚えていく。言語を伴わない乳幼児期の母子関係は別のかたちでも言語習得の準備をする。会話のリズムに同調させ、ミラーニューロンが母親の言葉や動作だけでなくその気分も真似できるようにさせるのである。
    テレビの前で子ども用の椅子に座らされているブランドのケースを考えてみよう。たしかにこの子はたくさんの言葉を聞き、多くの画像を見ている。ただし、本人の反応などお構いなしの言葉と画像だ。テレビは番組やコマーシャルを射ぽプ的に流し続けるだけで、彼の反応に応えることはない。相手が人間であれば、笑顔には笑顔を返してくれる。食べ物を欲しがれば与えてくれる。しかしテレビはなにもせずにそこにあるだけだ。子どもからすれば、テレビは自分を無視している。ブランドンの脳は言葉を何らかのイメージと結びつけることはできるだろうが、ことばはどうやって使うものなのか、感情は声の調子にどう表れるのか、そhして何より重要なことに、人に何かを伝えるためには言葉をどう使えばいいのか、これでは理解できない。人は共感をよせてくれないものから共感を学べない。そして相互のやりとりがないとき、言語習得の公立も激減してしまう。P284

    無表情の実験~母親が無表情にしていると赤ん坊は不安そうになり、取り乱し落ち着きを失い、怯え、泣きだす子もいる~母子ともにストレスとなる

    テレビの影響~最大の懸念が感覚の鈍麻「耐性」とも呼ばれる問題。強い刺激でも反復するうちに感じ方が麻痺し、なんとも思わなくなっていくこと。P294

    枕を殴るなどして気分をすっきりさせたり「すべてを吐き出して」怒りをコントロールしようとするカウンセリングをおこなうと、怒りはおさまるどころか増長されることが研究で判明P301

    脳は自身がおこなう仕事によって変化していく、そして現在の社会の条件はどれも、子どもが共感を真に伸ばしていくのに必要な練習を何度もくりかえす時間や空間を彼らから奪おうとしている。学校は学習面での発達しか重視しない。P303

    11.みんないっしょに

    共感は家庭から始まるP333
    それは、母親が元気で優しく心穏やかで、子どもにきちんと対応できれば、子どもはからなず自分をコントロールする力を健全に伸ばしていける。
    私たちは幼子を抱えた母親を支援するためにあらゆる手をつくさなくてはならない。
    親になった者への教育も欠かせない。P334

    ごく幼い子どもにとっては、過ごす時間のすべてが共感を育てる重要な要素になる。大事なのは単なる時間の長さではなく「良質の時間」P335

    親が子どもと生産的に時間を過ごす最上の方法のひとつは、読み聞かせをしてやることだ。親子がどちらも夢中になれるこの楽しい時間、知的な刺激にもなるこの関わり合いの中で、あたたかく、愛情に満ちた交流がおこなわれ、すばらしい関係が生まれる。子どもは、本を読むのは快いと感じ、読書と快感が頭の中で結び付く。ママやパパの膝に抱かれて本の読み方を知った子は、一章を通じて学んでいける。対照的に、読書というきわめて知的な活動の時間に教室でじっと座ったまま読んだり聞いたりするだけで、この時間を十分に楽しむことができず、何かに触れたり身体を動かしたりという自由を禁じられていた子どもは、本を読めるようにはなるだろうが、たいてい読書が大嫌いになる。大きくなってから本を読むチャンスが訪れても、読書は楽しいものと思えない。
    子どもに読み聞かせをすることはそれ自体、共感を育てるすばらしい方法でもある。近年、ゆっくりとではあるが、世界各地で殺人や拷問が減る傾向をみせているのは、識字率の黄王によるものだと考える歴史家や社会学者もいる。本を読む習慣によって、計画を立てたり衝動をコントロールしたりする領域である大脳皮質ネットワークが「組み立て」られる。自制がきくようになれば暴力は減る。そして、物語を読むことは、特にそれが一人称で書かれたものや手紙を交換する形で進む物語であれば、明らかに視点取得を必要とする行為となる。読者は登場人物の立場に身を置き、登場人物がうまくやればわがことのように喜び、その苦しみをわがことのように感じるのである。読書はまさに共感の練習といえるだろう。P336




    今週の本棚:小西聖子・評 『毎日新聞 2012年10月07日 東京朝刊
    ◇脳科学で見定める人間的な感情の動き
     「いじめられている人の立場に立って」というのは、いじめ防止キャンペーンの中でもいつも語られてはいるが、実は簡単なことではない。自分とは違う体験をしている人を思いやるには、感情が豊かでかわいそうと感じられるだけでは足りない。必要なのは、相手の視点に立って世界の見方を転換することである。

     「共感力の本質とは、相手の立場になりきる能力、相手の身になったらどうかを感じとり、それが辛(つら)いものならば辛さを軽減してやろうと思いやる能力である。」と著者はいう。

     この本は、共感という「あまりに人間的で優しい感情を冷徹な科学の目で眺め、共感するには何が必要か、病気や状況によって共感はどう歪(ゆが)んでしまうのか」について説明する。

     今までの心理学の本ならば、共感性の起源を早期の親子関係や、遺伝や環境要因に求めるところだ。が、この本はさらに先へと進む。なぜ多くの母親は子どもに特に共感的になるのだろうか。子どもが特定の養育者と強いつながりを作るのはなぜか。乳児や社会にこの条件が欠けた時どうなるのか。極めて人間的な感情の働きでさえ、ついに脳科学が説明をするようになったと言うべきか。

     キーワードの一つは、オキシトシンである。オキシトシンは、脳下垂体後葉から分泌されるホルモンで、子宮を収縮させたり、乳汁分泌を促進する。陣痛促進剤として使われることはよく知られているだろう。このホルモンは最近の研究によると、人への信頼感を増し、先行きの不安を低減し、特定の人とのかかわりを増すことがわかっている。

     動物を使ったオキシトシンの研究は一九七〇年代から行われているが、オキシトシンが、子育てやつがいのあり方に大きな影響を与えていることを明らかにした。一雌一雄制を取るタイプのハタネズミのメスでは、オキシトシンの受容体が喜びを感じる脳の領域に密集している。単純に考えれば特定の同じ相手といることが、より強く快感と結びつくということになる。もし人間にも同じような機構が存在するなら、オキシトシン分泌が増えることで、私たちは一人の人を好きになり、ずっと一緒にいることに安心や快感を感じるというわけだ。

  • 生きてく上で「共感」する力の大切なことしみじみ、大事なんだねぇ。
    きっかけは虐待、ネグレクト、愛着障害、自閉症/アスペルガーなどなど、
    それはきっかけにすぎず、それぞれ、それそのものが原因ではないというのがなるほどでした。
    幼少時代のそこからのスタートから、
    脳の科学、あたまの中で何が起こってるか、だから共感能力が育まれない、ということで。

    タイトルからすると、共感能力を育てるためには? のようだけど、
    まぁそういう部分もあるけど、

    私は、私の共感能力の弱さについてのことがわかって、とてもよかった。

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子どもの共感力を育てるの作品紹介

人とつながり、分かちあう社会への処方箋。孤立した子育て、虐待・ネグレクトなどの幼少期のトラウマ、集団の同調圧力が「共感力」に与える悪影響とともに、自閉症・アスペルガー症候群、ミラーニューロン、レジリエンスなど、「共感」をめぐる最近の研究成果を紹介し、子どもたちが健全な共感力を身につけるための方法を提言する。

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