流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則

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制作 : J. ペダー・ゼイン  柴田裕之 
  • 紀伊國屋書店 (2013年8月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011099

流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則の感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしいの一言。生物学やってた身にとって、進化の方向性、無生物の進化の話は衝撃だったよ。

    僕ならコンストラクタルをどう応用するかな?まずは組織構造とプログラムかな?

    新しい世界が広がった感じで毎日が楽しくなるよ。

  • デザインという言葉が、これほど広い意味で使われるようになったのはいつ頃からだろうか。僕が広告業界に足を踏み入れた時にはまだ、デザインとは特定の職群の人たちの美的関心事を指していたように思う。だが同じ頃、営業の仕事とは「絵を描くことである」と教わった記憶も残っているから、既に現在使われているような広義の意味は含まれていたのかもしれない。

    この言葉がこれほど頻繁に用いられるようになった理由の一つに、創造性と能動性のイメージを伴なっていることが挙げられる。たとえば営業の仕事を「アカウントをデザインする」と表現すれば業務の意味が変わってくるだろうし、書評を書くことだって「文脈をデザインする」と置き換えると、書く内容も変わってくるかもしれない。

    だが、本書はこのような「デザイン」という言葉の持つイメージを真っ向から否定する。それどころか、ダーウィン以来定説になっている「進化に網羅的な方向性がない」という考え方にも異を唱え、さらには「世界のやり直しはまったく異なる結果を生む」というスティーヴン・ジェイ・グールドの有名な主張にも立ち向かおうとするのだ。

    著者によれば、デザインとは自然の中で自ずと生じ、進化している現象のことを指すのだという。要は、自発的で科学的なものとして取り扱っているのが特徴である。それだけでなく、人間を取り巻くものの一切のデザインが、たった一つの物理法則によって形作られているとまで言う。そしてその法則は、以下の2行の言葉に集約されるのだ。

    ”有限大の流動系が時の流れの中で存続するためには、その系の配置は、中を通過する流れを良くするように進化しなくてはならない。”

    コンストラクタル法則と名付けられたこの法則を最初に目にした時には、正直何が凄いのかよく分からなかった。低速での近距離の流れと高速での遠距離での流れが一緒に機能する、いわゆる樹状構造のようなものであるなら、よく知られた現象でもあるからだ。

    だが、真に驚くべきはこの法則の適用範囲の広さという点にあった。これを本書の前半部では、電子機器から熱を取り除くためにデザインされた人工の冷却システム、河川流域、私たちの身体中に酸素とエネルギーを運ぶ血管の系などを地続きに見ていくことで明らかにしていく。

    これらの系というのは、それぞれ別個に研究されることの多かった領域でもある。これを流動系というフレームに入れ、デザインという観点に着目することにより、共通項を見出だせる。Nature、HumanからArtまで、言わばリベラルアーツを横断するような形での視点を獲得することが可能になるのだ。

    さらに驚くのは、この法則の後半に記述されている「流れを良くするように進化しなくてはならない」という一節である。つまりこの法則は、適用範囲という空間軸だけではなく、時間軸にも及ぶ3次元の法則であったのだ。本書の後半部ではこれらを示すために、スポーツの記録、道路網、メディア、社会の階層性といった領域にまで話を広げ、予測可能な進化の世界を描き出していく。

    たとえば、都市のデザインというものを見てみよう。この場合、コンストラクタル法則に基づくと、遠距離を高速で移動するのにかかる時間と近距離を低速で移動するのにかかる時間との間には、均衡が存在することになる。つまり技術の進化によって、遠距離を高速で移動する速度が変わると、低速で移動するための町並みにも変化が訪れるということだ。

    古代における牛が引く時の荷者の速度と、現代における自動車での移動を前提として比較してみると、はたしてどうなるだろうか?これは、地図上で古代からの町と新しい町とを重ねあわせることによって解を導くことが出来る。そして進化がまさに予測可能であったということが明かされるのだ。

    このように無生物、生物、工学技術などを串刺しにして対比できることの意味は大きい。生命は動きであり、この動きのデザインをたえず変化させることと定義できるからだ。「ゆく河の流れは絶えずして しかももとの水にあらず」とはよく言ったものである。

    一般に地球上の生命体は、35億年ほど前に始まったとされている。だがこの定義に則ると「生命」の始まりはそれよりもはるかに古く、太陽熱の流れや風の流れといった最初の無生物の系が、進化を続けるデザインを獲得した時と考えることができる。この捉え方によって、生命の概念は生物学から切り離され、意味を拡張して考えることが可能になるのだ。

    なんだか、途轍もないものを見てしまったような気がする。目の前の1個のドミノが倒れることによって、パタパタパタと音を立てて、全ての景色が塗り替えられていくような壮観さが本書にはある。生命を生物学から解き放った革命の書。読んだというより、目撃したという感覚の方が近いだろうか。

    最後にコンストラクタル法則が成立する範囲についても、明示しておきたい。一見万能にも思えるこの法則が成立するためには、「効率性を追求する」ということが前提条件になってくる。裏を返せば、予測不可な結果を生み出したければ、効率性を無視したふるまいが必要であるということも意味していると思う。これはこれで示唆に富む。

  • なんだか、とても偉そうな作者だ。
    現代にハマったステレオタイプの人間だと思った。

    まずインテリが過剰になって専門性が甚だしくなると必ずと言っていいほど、神はいないと言いたがる傾向があるようだ。
    別に俺は宗教に属しているわけでもないが、その神の御心を否定することによって、自分のことを最大限にアピールしているように思える。それは我々が神の始まり、存在にすごく興味があるからそう言うように思える。
    非常に思想が浅い早計な作者だと思う。ただし、専門性は非常に高い。
    川の流れはたえずして、しかももとのみずにあらずとゆう確かこんな感じの言葉があったが、偉そうに言ってわかったんだふうになっていて、読み進めるたびにこのことが頭に浮かんだ。
    こういう本はは本物ではなく偽物だ。
    本物はやはり、自分の内から純粋にアウトプットされてゆく。邪念や余計なノイズがこの作者には多い。現代のインテリ勢の中の成れの果てだ。


  • 新しい「法則」でも何でもない。既存の物理法則から常識的に説明されていることの羅列に過ぎない。素人議論にしか思えない。

  • デザインとは,進化している現象である,という言に始まり,形を定義するための新たな物理法則として,“Constructal” Lawを提示する.十分に理解するには至っていないが,熱力学第二法則にある抽象性に具体性を与え,あらゆる営みの設計を説明可能と説く.表層的に理解した部分を最適化に落とし込んでみるのも面白そう.

  • 自然界の流路デザインを熱力学から説明しようとする試み。生物、無生物系を問わず、その「傾向」を示しているのは同意できるが、「決定論的」な理論であることの説明には失敗している。黄金比の説明は明らかに間違っているし、他の学問を否定し、差別的な表現等もあり、ちょっと不愉快である。

  • 付箋は13枚つきました。
    私にとっては、ちょっと難しかったですね。

  • エイドリアン•ベンジャミン&J•ペダー•ゼイン『流れとかたち』
    原題:Design in Nature。
    コンストラクタル法則について。有限大の流動系が時の流れの中で存続するためには、その系の配置は、中を通過する流れを良くするように進化しなくてはならない。つまり、流れるものはすべて存続し続けるために進化するデザインを生み出すということ。ここに生物/非生物の境はない。かつダーウイン説云う進化の勝者と敗者もない。階層制の出現は少数の大きなものと多数の小さいものが協力して流れを良くする均衡の行為であるからだ。衝撃的なのは、流動する地球全体は太陽からQ(熱量)を受け取り、Qを完全に宇宙空間に排出するエンジンとブレーキの系であるということ。物理的な法則であり、予測も可能であると。脳の心的な活動である各々の心的な出来事にコンストラクタル法則が完全に適用できるか謎ですが、内容がスケール感と驚きに満ちていてワックワックさせる良書だとおもいました。

  • 読了

  • ポピュラー・サイエンスの著者たちというのは、私の印象では、
    サイエンス業界内では手を取り支え合い、
    科学に否定的な業界に団結して立ち向かっている、という感がある。

    たとえば、後天環境が全てという社会主義的思い込みを論破しようとする
    スティーブン・ピンカーが、進化生物学者のリチャード・ドーキンスを
    援用するような。

    が、本書の著者ベジャンは、そういったサイエンス業界の面々に対して、
    平然と「間違っている」と言ってのける。
    それは、彼らが固有の専門分野に閉ざされた視座で自然科学を扱おうとするから、
    もっと大きくて、統合的な原理を見逃している、という主張である。

    その統合原理こそ、コンストラクタル法則、ということになる。

    このコンストラクタル法則、説明が簡単なようで難しいが著者の言葉を借りると
    「自然界において肉眼で見える形と構造の現れ方を支配する物理法則」
    「流れるもの動くものはすべて存在し続けるために進化するデザインを生み出す」
    ということである。

    この法則、納得できますか、トンデモに聞こえますか?
    コンストラクタル法則を耳にし、考えることになった人は、
    おそらく、前者か後者にくっきり分かれるような気がする。

    私自身は、前者である。
    常々これまで、自己組織化と、べき乗の分布が様々なところに共通して
    見られることに私は不思議さを感じていた。
    たとえば、ある系の中の岩石の質量と個数の関係を見れば、べき乗分布になるし、
    あるいは本やCDの売り上げランキングもべき乗になる(そしてロングテールが生まれる)。
    また、株式市場の価格の変動は、正規分布にはおさまりきらない異常値が出る、
    それは故マンデルブロやタレブが言うようにランダムではないべき乗の世界だから、ということになる。

    こういった、自然現象や人間社会の数値分布になぜ類似性があるかということについて、
    「それは自己組織化される系」だから、というのは、分かるようでいまいちしっくり来ない
    答えだと思っていた。

    だが、ベジャンのコンストラクタル法則の視座に立てば、そこには納得いく解が生まれる。
    それらはいずれも相互作用しあって、「流れをよくする」ようなデザインを構成し続けるからこそ、
    階層化が発生し、少数の大きな物と、多数の小さな物とが最適な効率を目指して配分され続けるという
    現象がおこり、結果、べき乗的な分布を目にする、ということになる。
    自然現象も、人間社会の市場も、流れているという点では同じことで、
    逆に社会主義体制下のように、流れを不自然に止めてしまうと市場は機能せず、代替的に闇取り引きを
    せざるを得ないということになるのではと思う。

    さてしかし、私のようなふつーの人間は、コンストラクタル法則を理解して、
    どうよりよく生きることにつなげるか。そこが大切だと思うのである。
    私の今時点での答えは「不自然に流れを止めている物を見つけ、それを取り除く」ことを
    重視していけばよいのでは、ということである。

    たとえば、昨今TPPで議論されるような関税障壁の類いにしても、あれは一種の市場規制な
    わけで、いるかいらないかでいえば、コンストラクタル法則の原理を考えれば、まずもって
    いらないのである。
    国内産業の保護はどうする、という反論がありそうだが、そもそも保護しないと生きられない
    産業であれば、いらないのだ。
    実際、日本の自動車産業にしても、国は大して保護もしてくれなかったのに、
    それは本当に需要があり、かついいものを適切に供給し続けた企業、業界の力で、
    結果的に大きく育ったのである。
    いっぽう、補助金漬けにした農業がどうなっているかというと、触れるまでもない。

    おそらく自然界と人間社会で違うのは「既得権」に心をがっちりロックされるてる人とか、
    あるいは「知財保護」のような実利の乏しいものにこだわって流動性を止める人とか、
    そんなのが多いので、流れが悪くなっていることがたくさんあるのだと思う。

    コンストラクタル法則そのものが、科学界で受け入れられるのかどうかは定かではないが
    (この細分化の科学の「流れ」を見ると難しい気はする)、
    むしろ経済・政治や市民生活のようなフィールドから、有効に生かしていくほうが面白い気はする。

    (レビューは
     http://evolution.edoblog.net/
     に投稿のもの)

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すべては、より良く流れるかたちに進化する――生物、無生物を問わず、自然界に現れるかたちの全てを決定づける「コンストラクタル法則」という新たな物理法則を提唱する衝撃の書。同法則を物理学の第一原理と位置づける著者は、樹木の形、血管の配置、河川の流れから、空港や道路、スポーツ記録の進化、社会制度や文化の広がりなどもこの法則に従うと主張する。

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