原爆を盗め!: 史上最も恐ろしい爆弾はこうしてつくられた

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制作 : Steve Sheinkin  梶山 あゆみ 
  • 紀伊國屋書店 (2015年2月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011273

原爆を盗め!: 史上最も恐ろしい爆弾はこうしてつくられたの感想・レビュー・書評

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  • 原子力爆弾の出現は、人類の歴史を大きく変えた。

    時は第二次世界大戦下。ドイツの科学者がウラン原子が分裂することを
    発見してから、ドイツ・アメリカとイギリス・ソ連が、他国を出し抜こうと最高
    機密のプロジェクトして開発を始めた。

    開発競争の一方で、もう一つの闘いが繰り広げられていた。ナチス・ドイツと
    の闘いで手いっぱいのソ連は、対ドイツでは手を結んだアメリカから原爆
    開発計画の情報を得ようと暗躍する。

    オッペンハイマーが責任者となって、アメリカとイギリスの有能な科学者を
    集めて始まった「マンハッタン計画」。ニューメキシコ州ロスアラモスの
    研究所は人の出入りは厳重に管理され、そこで何が行われているかに
    はかん口令が敷かれていた。

    研究の為に呼び集められた科学者たちにはFBIの目が光る。しかし、それ
    でも情報はソ連側に漏れていた。しかも、原子爆弾そのものの設計図ま
    でも…だ。

    スパイ映画やスパイ小説は大好きだ。だが、本書は映画や小説よりも
    面白い。原書が出版されたアメリカではヤングアダルト向けということな
    で、中学生・高校生向けに書かれた内容なので原爆の仕組みについて
    も小難しいことは書かれておらず、大まかな概要だけを専門用語を抜き
    して説明されている。

    映画えは「ノンストップ・ムービー」と呼ばれる作品があるが、その言葉を
    借りるなら本書は「ノンストップ歴史ノンフィクション」である。スパイという
    興味深い題材もあるのだが、各章の構成がうまく、「え、この後、どうなる
    の?」と次が気になって、危うく時間を忘れそうになった。

    ノルウェーがナチス・ドイツに侵攻されたことは知っていたが、ノルウェー
    のレジスタンス運動が重要な役割を担っていたのを本書で初めて知った。
    これまで原爆開発について個々で知っていたことが、すべて本書で
    繋がっている。歴史は俯瞰して見なきゃいけないんだなと改めて思った。

    『図書館戦争』のように、劇画的な小説がある。映像が想像できる小説を
    私はそう呼んでいるのだが、本書は劇画的なノンフィクションだと感じた。
    そのうち映画化されないかな。原爆開発競争入門としては秀逸な作品。

    ただし、原爆の仕組み・開発等を深く知りたいと思う人には物足りない
    かもしれないが。

    ハラハラドキドキ。手に汗握るスリリングな展開が好きな方にはおすすめ
    の作品だ。私はこういう歴史ノンフィクションも「あり」だと思う。

    余談だが、マンハッタン計画には若き日のリチャード・ファインマン氏も
    参加している。機密が漏れていないかとFBIがピリピリしているのに、
    家族宛ての手紙に暗号を使ったり(勿論、FBIが検閲している)、欲しい
    資料が同僚のファイルにしまわれていればキャビネットの鍵を壊して
    取り出したりと、野放図なのである。

    「ご冗談でしょう。ファインマンさん」ならぬ「ご冗談はおやめください、
    ファインマンさん」とFBIは思ったことだろうな。

  • アメリカ側で情報を流した人物が予想外に多い。
    人は秘密を守れないということか。

  • ノンフィクションだけどスパイ映画を観ているようにハラハラした、「ミリタリーテクノロジーの物理学」多田将 著を読んでいたため原爆の設計が詳しく分かってより面白くなった。

  • 1938年末拡大するナチスドイツの首都ベルリンでオットー・ハーンと言う化学者が放射線元素のそばにウランを置いた。実験の結果ウラン原子が二つに割れたように見えた。相談を受けたリーゼ・マイトナーが計算したところ、一つの原子が分裂すると砂つぶを飛びあがらせるくらいのエネルギーが発生する。ではその原子が10キロあったらどうだろう。このアイデアはニールス・ボーアにそしてオッペンハイマーに伝わった。オッペンハイマーは新型爆弾の可能性を振り払えなくなり、やがて気がついた。世界の物理学者はみな同じことを考えると。

    2人のユダヤ人物理学者はアインシュタインを探した。まだ新型爆弾の可能性を知らないルーズヴェルト大統領に進言するためだ。「ヒトラーが新型爆弾を手にしたら誰も止められなくなる」原爆の開発競争が始まった。アメリカ、ドイツ、ソ連そしてあまり知られていないが日本もだ。

    ソ連は表向きは同盟国であるアメリカにスパイを送り込んでいた。もし、ソ連の科学者がアメリカに遅れをとったら科学者だけではなく原爆の開発に関わるものは全てスターリンに粛清されてもおかしくはない。ソ連は共産主義のシンパをリクルートした。その1人がハリー・ゴールドでただ自分に仕事を譲ってくれたブラックに借りを返すためにだ。化学物質の製法を渡してソ連の社会が良くなるならいいではないかと。一度始めると引き返せなくなる、ハリーは後に最も優秀な運び屋となった。

    ドイツ生まれの物理学者クラウス・フックスはナチスに反感を持ち、ヒトラーを批判する共産党に入党を決めた。イギリスに逃れたフックスを科学者達は秘密の軍事計画に誘った。計画の目的を知ったフックスはKGBに連絡を取り情報はモスクワに伝えられた。その後フックスを含むイギリス人チームはロスアラモスに移りマンハッタン計画に組み込まれていく。無口で静かなフックスを訪ねてくるのは独身寮で隣室のリチャード・ファインマンだけだったがフックスは仲間達から好かれ、仕事はよく働いた。フックスが流した情報はやがてソ連の原爆の開発を助ける事になったが"同盟国"に対するスパイ行為であったため死刑にはならず、14年の禁固刑を受け模範囚として釈放された。

    フックスと並ぶスパイがテッド・ホールで14才でニューヨーク市立大学に入学し、ロスアラモスでは最年少の物理学者となった。ナチスドイツの攻撃を受けるソ連に同情するホールはアメリカだけが原爆を持つよりもソ連も持つ方が世界は安全になると考えた。そして自ら志願してソ連に情報を流すようになった。

    ソ連がアメリカに手を伸ばす一方で米英はナチスドイツの原爆開発の妨害工作を進めた。ドイツに占領されたノルウェーでは原爆に使われる重水が製造されていた。この工場の破壊工作に携わったのがノルウェー人のハウリケードでドイツが貴重な重水をドイツに運び出そうとした際、湖を渡るフェリーに爆薬を仕掛け沈めたのだ。26人のノルウェー市民とともに。

    ドイツの物理学者ハイゼルベルクの暗殺計画も進行していた。工作員はメジャーリーグの控えキャッチャーだったモー・バーグで沢村栄治とベーブルースが対戦したメジャーの日本遠征にも名だたるレギュラーのキャッチャーを抑えて遠征に参加している。この時の目的も仮想敵国だった日本の偵察が目的だったようだ。

    ソ連のオルグは原爆の開発を主導したオッペンハイマーにも手を伸ばした。共産党討論会に出たこともあるオッペンハイマーだがアメリカを裏切ることは全く考えてもみなかった。しかし、接触があった事を報告せず後にスパイの疑いがかけられてからこの話をしたが取り入れられず、戦後の軍拡の中で機密文書の閲覧資格を取り上げられた。ナチスが原爆を持つ事を怖れたオッペンハイマーは全力を挙げて原爆の開発を進めたが、戦後はソ連との軍拡を怖れ、水爆の開発には反対の立場を取り疎んじられたのだった。

    ソ連が盗み出した原爆の秘密は何か?ウラン型の原爆は砲弾の中でウランを二つに分け、一方を爆薬でもう一つにぶつけると自然と連鎖反応が始まるので構造としては簡単だ。問題は原料となるウランの分離に非常に時間がかかる事だ。プルトニウム型の原爆は原料は原子炉さえあれば比較的簡単に入手できる。問題はウランよりも反応が早いため砲弾型のではプルトニウムが完全に合体する前に連鎖反応が始まり不十分な爆発に終わる。そこでプルトニウム片を爆縮により一気に固める設計になったのだがこの計算が難しい。ソ連はこの爆縮型の設計図を手に入れ砲弾型の開発に無駄な時間を費やす事なく原爆の開発に成功したのだ。

    その後世界は危機を迎え、現在ではやや緩和されてきているが、テロという新たな危機が生まれて来ている。日本は使用済み燃料として大量のプルトニウムを保持している。爆縮の概念は知れ渡っており、原料さえあれば花火職人でもそれなりの爆縮構造は設計できるだろう。

  • 「牛乳は見えないインクとして使うのにうってつけだ。」

    原爆開発からの話。核分裂が発見され、そのエネルギーで爆弾が制作できないか考えられた。原爆が核分裂で、水爆は核融合の力だ。

    ソ連によるスパイがアメリカの原爆を情報を盗む。自分ら側の人間が同情意識からソ連に原爆情報を流すのはえげつない。

    ドイツの重水施設を破壊した話もあった。ドイツは人種差別を過激に行い、優秀な脳を国外に流出させてしまった。

  • 原爆がどうやって生まれたのか。大国はどのように核開発競争へと突き進んでいったのか、騙し合いと破壊工作。そして科学者たちの熱狂と、自らの理論の正しさを証明出来てしまったが故襲ってくる恐怖と苦悩。

    実戦における実験であり、自らの力を誇示する為の広島、長崎。

    人物描写を中心に、小説のごとく分かりやすく、スリリングな展開で読ませてくれる。

    核について知りたい時、技術的な本と合わせて読みたい一冊。

    そして持論。
    ナチスドイツに対抗するという「大義名分」があったとは言え、結局は世界における自らの絶対的地位を得るためにアメリカやその他大国はこれを手に入れ、身勝手に実験を繰り返し、今も独占し自らの都合の良いように利用ようとしている。
    これら大国の姿勢が改まらない限り、世界の核をめぐる争いは無くならないであろう。

  • 物理学 未踏領域への挑戦。 悪の枢軸ナチス撃滅の為。 科学者達はそれぞれに信念を持って、人類史上最悪の破壊兵器を作り出し、やがて意義を見失い、所持する事に畏怖を感じつつ、『バランスを取る為に』その技術を結果、拡散させてしまった。 大戦後の技術・情報漏洩スパイ合戦については、期待程のボリュームで無かったが、良く纏まったノンフィクション。 “『ほかに道はない』のでは無い、『ほかの道を見出すには才知が足りない』というべきなのだ。”

  • 原爆開発を巡る攻防を描いたノンフィクション。
    マンハッタン計画、重水開発を行う発電所の爆発、米ソのスパイの暗闘。これらを巧みに織り交ぜながら展開し、ノンフィクションでありながら、サスペンス小説のよう。
    最近「盗まれた最高機密」というNHK特集があったが、それよりもはるかに面白い。

  • 原爆開発競争を、マンハッタン計画と、ドイツの原爆開発阻止、そしてソ連が原爆情報をえるためのスパイ活動を軸に描く。
    静と動、サスペンスとアクションが組み合わされていて、読んでて飽きなかった。スパイ、科学者、レジスタンスなど、様々な視点から、映画顔負けの原爆開発競争の実態が描かれている。
    小説風ノンフィクションだそうで、参考文献のページもかなりあったし、歴史として読んでも信頼度は高そう。
    物語の締め方が、著者が、核兵器というものについて真摯な考えを持ってるようで安心した。
    本書で紹介されている、2010年のサイエンティフィック・アメリカン誌によれば、印パの小規模核戦争を想定した場合でも、その影響は数十年に及び、世界中で餓死者が出るというのがびっくりした。核兵器の問題は、いまや大国間だけの問題じゃなく、小規模で局地的な限定的核戦争でも影響は世界におよぶんだな。
    開発着手から使用後まで、それぞれの段階で、それぞれのセクションの人が、どのように考え、どのような思いで行動したのかっていうのは、核兵器について考えるときには参考になると思うし、核兵器について考えてみたい人は読んでおいていい作品だと思う。

  •  第二次大戦時の米国での原爆開発と、その情報をスパイしソ連に流すノンフィクション小説である。もう歴史小説かもしれない。
     オッペンハイマーを筆頭とする科学者たちと政治家がマンハッタン計画を進めると同時に、ソ連のスパイたちが如何に情報を入手しソ連に送っていたかが記されている。
     アメリカにもソ連や共産主義に同情的というか共感を持つ人が結構存在していたことが意外であった。もし、彼らスパイがいなかったらソ連の開発は相当遅れたであろうし、その後の世界情勢が今と違っていたかもしれないなどと埒もないことを思った。
     300ページ超の厚い本であるが、文字が大きく読みやすかった。おもな登場人物の写真が載っているのも良い。

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原爆を盗め!: 史上最も恐ろしい爆弾はこうしてつくられたの作品紹介

第二次大戦下、原爆開発競争のゴングが鳴った。米英の「マンハッタン計画」に天才科学者が集結し、その情報を盗もうとソ連のスパイが暗躍する。一方で、ヒトラーも原爆製作を進めていた。現在世界に1万6千発以上、私たちの時代を決定的に変えてしまった核兵器開発をスリリングな筆致で綴った、歴史ノンフィクション。

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