巨大化する現代アートビジネス

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011303

作品紹介・あらすじ

約7兆6200億円規模のアート業界を動かしている「100人」とは?
人気アーティストはいかに生みだされるのか?
億万長者はなぜアートに大金をつぎこむのか?
アートにどのように値段がつくのか?

リーマン・ショックもなんのその、世界最大の近・現代アートの見本市「アート・バーゼル」の売上規模は4日間で数百億円。ジェフ・クーンズの作品1点に60億円近い値がつくなど、現代アートの落札額は高値を更新しつづけている。バーゼル、ヴェネチア、NY、ロンドン、パリ、ベルリン、マイアミ、上海を総力取材! 画商・ギャラリスト、競売人、学芸員、投資家、セレブ、コレクター、ジャーナリスト……アート界を牛耳る「100人」の思惑が入り乱れる〝アートの現場”に果敢に斬りこむノンフィクション!

中国とアメリカが80%近くを占める現代アートの競売市場で日本は1%未満…日本はなぜ立ち遅れたのか? 「アート界の構造」を知れば、その理由が見えてくる。

「現代アートの競売・都市別売上ランキング」
1位 NY・アメリカ
2位 北京・中国
3位 ロンドン・イギリス
4位 香港・中国
5位 上海・中国
6位 パリ・フランス
7位 広州・中国
8位 南京・中国
9位 杭州・中国
10位 台北・台湾
(『アートプライス年報2014』より)

感想・レビュー・書評

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  • 美術の世界には全く疎いが、世界の美術界の仕組みが分かり面白い。
    異様に高い価格が付くのは、金余りのバブルのようである。金持ちがさらに金持ちになる仕組みが、ここでも存分に機能している。
    これは美術界にとって本当にいいことなのか?

  • 現代アートの世界では、なぜ巨額の金が動くのか。アートを売る画商・ギャラリスト・競売会社らと、アートを買うコレクター・投機家の両サイドから、巨大化すると同時に閉鎖的で秘密主義でもある現代アートビジネスの世界を覗く。


    こういうの読みたかった!最初からガンガン具体的な金の話がでてきて、広告王、ロシアの投資家、カタール王室、イヴ・サンローランなど、登場する人たちがいちいち景気いい。
    原書がでたのは2008年のリーマンショックの余波が残る2010年。当初はこの未曾有の金融危機によって現代アートバブルも弾けるものと思われていたが、アートの価値が下落することはなく、むしろ安定した投資先としてますます需要が高まっているという。ただ、もちろんこの世界でも中国が急速に台頭してきている。
    プライマリー・マーケット(アーティストの作品を最初に売買する市場)を回しているのは、画商・ギャラリスト・コレクター・投機家といった人たちで、資金力のあるメガ・コレクターとなると公共美術館などでは到底歯が立たない。
    そうしたコレクターたちに作品を売り込むのが画商やギャラリスト。彼らは才能あるアーティストを発見し、プロモートする役割も担っている。だが一方で、ギャラリストに手数料を取られないよう直接オークション会社とやりとりするハーストのようなアーティストがでてきたり、実際に詐欺を働いたギャラリストもいたという。投機家はアートの現物をギャラリストに預けておくことがあるため、本当は自分のものではない作品を売り込んだり、別の作品を補償金がわりに渡したりなどして、システムの不透明性に漬け込むギャラリストが現れたのだ。
    不透明という意味ではオークションも変わりがない。本書にはイヴ・サンローランの没後、パートナーのベルジェが二人のコレクションを競売にかけた際のレポートが載っているのだが、これがまた演出過多で煌びやか。お祭り騒ぎの空気と「サンローランの所有物だった」という付加価値で、どんどん金額が釣り上がっていく。だが、それが「本当に」売れたのか(空売り疑惑)、「誰に」売れたのかは闇のなか。落札額はその後も参考価格になるため、同じアーティストの作品を持つ人間にとっては金額が膨れ上がるだけ好都合なのである。
    元メトロポリタン美術館館長の「今アートは美術史よりマーケティングに詳しい人間のためのものになっている」という言葉が印象に残る。そもそも競売やアートフェアなどのシステムが、グローバル資本主義に拠っているという大きな問題を現代アートは抱えている。著者たちが出身国フランスの現代アートビジネスへの出遅れを語る際に、「現代アートの中心地であるイギリスとアメリカはアングロサクソン・プロテスタントの国であり、資本主義が肯定される土壌がある」としていたのが面白かったし、ひとつの真実なのだろう。アートを神格化し、ビジネスの話をタブー視するほうがナンセンスなのだと痛感させられる一冊だった。

  • 世界で7.6兆円に達すると言われるアート市場は、その規模と華やかさとは裏腹に、なかなか一般人には実態がつかみにくい。本書では2人のフリージャーナリストの取材により、
    ・現代アートの人気アーティストがどのように生まれるか?
    ・サザビーズ、クリスティーズなどでのアート・オークションの実態は?
    ・中国が急速にアート市場でプレゼンスを高める中、なぜ歴史的にアートの庇護邦であったフランスは立ち遅れたのか?
    等の疑問について、詳細な実態が明らかにされていく。

    本書の最後は、現代アートとは何かを問うために、フランスの若手評論家・キュレーターのニコラ・ブリオーへのインタビューが収められている。この中で、現代アートの意義について、彼はこう語っている。

    ”私がアートを定義するとすれば、「世界との新たな関わり方を生みだす活動」かな。現代アートが嫌いな人は、自分たちが常識だと革新していることを覆されたくないのです。そういう人は、世界がどう動くのか前もって知っていると信じている。ところがアート作品は、私たちを取り巻く世界の儚さを示してくれます。そういう既成概念を壊すのがアーティストですからね。”
    (本書p298より)

    現代アートに限らず、前衛という概念ゲームが死んだ現代において、美術、音楽、文学といった芸術活動の意義とは、そこにこそ問われるべきである。

  • アートとは何か。
    アートに関わる様々なプレイヤーが、独自の答えを追求している。
    現代アートがどこへ向かうのか、目が離せないし、願わくば渦中に身を置きたい。

  • 東2法経図・6F開架:706A/G77k//K

  • ふむ

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1376054

  • 美術

  • アート市場をめぐる現実を丁寧に取材したうえで記述していて、迫真性がある。

  • 借りたもの。
    現代のアートビジネスを包括的に分析するドキュメント。
    「アートの価値は何か?」「何故高額になるのか?」
    ブラックボックス状態の世界に切り込んで行く。
    ……結論は漠然としていたけど。

    画廊、アーティスト、コレクター、美術館、キュレーター……立場は微妙に異なりながらも、“アート”に関わる人々の視点から、アートビジネスを分析していく。

    本当にアートが好きな人、アートに価値を置き見出だした人、それを見越して投機目的に収集する人、教養としての箔をつけたい人……
    そうした思惑から、多額の金が動く。
    ある意味、リアル『ギャラリーフェイク』( http://booklog.jp/item/1/4091830218 )。
    贋作云々ではなくて、オークションや画廊での販売、個人売買の駆け引きなどで。

    アートの最前線はヨーロッパからアメリカへうつり、今は“グローバル化”に伴い、一国集中していないこと。
    市場が拡大し、価値観も多様化した――
    それはモイセス・ナイム『権力の終焉』( http://booklog.jp/item/1/4822250989 )にも言及されている現象と同じことが起こっているのではないだろうか。

    リーマン・ショックのアート・ビジネスの影響、チャイナ・マネーの話などは避けて通れない。

    日本市場の話題は村上隆で、作風よりも商業的な話、ルイヴィトンとのコラボレーションについてだった。
    2016年はシュウ・ウエムラとのコラボレーションをしていたか……

    用語から、今、活躍している画家(知らない人も多い…)や世界のアート業界を左右する重要人物、コレクター、マーケットが垣間見れる。

    未来の美術史では、この時代はどの様な価値観を見いだされるのだろうか?

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