- Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
- / ISBN・EAN: 9784314011471
感想・レビュー・書評
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「生物の数はどのようにして調節されているのか?」
この問いに対して、著者がセレンゲティ国立公園での観察を通して得た生態系の調節のルール、セレンゲティ・ルールについて解説されている。
体内の分子レベルの調節と同じように、生態系も調節されているというものだ。
生物は食物が増えれば増加し、減れば減少する。
また、捕食者が多いと食べられる側の生物は減少し、捕食者がいなくなれば増加する。
そういう食物連鎖の中では、敵の敵は味方で、天敵の天敵がいることで、自身が恩恵を受けていたりする。反対に、例えば、殺虫剤が稲を食べる虫の天敵となるクモなど殺してしまうことで、殺虫剤の使用の結果として、稲が大きな被害を受けることもある。
順調に増えていても、群れの中の個体数が増え、密度が高くなると増加が緩やかになる生物もいる。
生態系のルールが破られると大きな被害がでるが、そういった生態系のルールを知ることが、生態系を癒すことにつながると筆者は訴える。
ところで、本書の内容と直接関係があるわけでもないが、日本の出生率の低さは、密度が増えると増加が緩やかになるという、当たり前の生態系のルールに則った出来事なのではないかと思った。
日本の人口密度は世界的にも高い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
セレンゲティ ルールとはタンザニアのセレンゲティ国立公園から撮ったものであるが、一定の範囲内に生息する生物の数を調節するルールのことである。
ここでは分子レベルから話を始めており、直接増やす要因、抑制する要因、抑制する要因を抑制する要因の三つでコントロールするとしている。食物連鎖も同様の考えではあるが、より要因を広範囲に求めている。アフリカの草食獣の頭数であれば、餌となる草木の量と捕食者である肉食獣の頭数が直接の要因であるが、肉食獣の頭数を変化させる要因例えば人間による駆除、疾病あるいは同様なところに住み食料を競争する種(あるいは同じ種でも狭いところに多くはまかないきれない)の頭数も大きく関わってくる。そのような条件を改善させると急速に頭数を戻すことができるが、その広範囲な因果関係を見極めるのは、粘り強い観察が必要。 -
セレンゲティから始まり微生物やウイルスまで、生物間の調整の物語。具体的な例が豊富で面白いです。
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理解の追いつかないところもあるが,わかりやすくいろいろな例を出し図解説明もあって,危機感も持ちながらもとても楽しく読めた.自然の中にあるルールの解明がたとえばがん細胞の撲滅にもつながるかもしれない.とても興味深い.そして最後に挙げられていた教訓のなかの「楽観的であれ」になるほどと感じた.
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遺伝子の調節メカニズムの1つである抑制の抑制という二重否定論理が生態系にも当てはまるという点は大変興味深かった。またこれに基づき生態系の回復に適用された事例にもとても関心した。
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生命はいたるところでこの原則に従っている。
実感としてすごくよくわかる。 -
体内のホルモンやpHといったミクロの調節、そして、生態系における各種生物種の生息数といったマクロの調節。これらが幾つかの似たようなルールに基づいているという内容。これを示すために、生物学と生態学の様々なエピソードが盛り込まれていて、それぞれが中々に面白い。