読書療法から読みあいへ: 「場」としての絵本

著者 :
  • 教育出版
3.83
  • (3)
  • (0)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 25
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784316329703

作品紹介・あらすじ

ものがたりの力をかりて、やせっぽちになった。人と人のかかわりの場をよみがえらせるこころみ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 内省を基盤にした、人間と人間とのつながり。研究者としての、また、一人の人間としての村中さんの軌跡を通しながら、「わたしはこれでいいのだ」と思えることができた。それは、村中さんと私の胡散臭さに対する鋭い嗅覚が残っていたからこそ、進むことができた軌跡であった。

    絶版になっているのが、残念な本である。

    ・病院という場所は、長い空白の時間を強いる反面、拘束し、急かし、待たない場所でもある。「ちょっと待っててね」「今忙しいからね」「あとでね」。そして、「急いちょうだい」「ぐずぐずしないで」「~までに~しておいてください」ところがこれらは、病院だけでなく、学校、家庭、日本社会全体にあること。
    ・人は概して、学校に行けなかったのが行けるようになった、痴呆の症状が軽快したなどのような顕著な変化をして、「変わった」といいたがるが、人は日々、瞬間瞬間、新しく生まれ変わっている。逆に変わらないものにも愛しい目を向けられようになりたい。
    ・(高齢者との読みあいで)今ここにいて、自然界の営みをこのからだにじんと感じたり、幼いもののありようを見守ろうとしたりする自分に気づくことがとても大事。それは、現在を生きている自分の肯定につながり、生きている実感にもなる。
    ・じいちゃんばあちゃんにとって、「明日のための今日」という発想はあまり意味をもちません。「今日のための今日をどのくらいていねいに鮮やかに、自分のものとして生きるか」が大事。
    ・(データの蓄積よりも)むしろ、読みあう相手と、ものがたりの間で、私の主観がどんなふうに揺らぎ、揺さぶられ、なにを聴きとり、なにを捨てたか。その道筋を、一本ずつていねいに残しておくことの方が大事な気がしています。
    ・絵本の奥からきこえてくる、うたのようなもののことを私は仮に「えほんご」といっています。
    ・「この人によんであげると効果があるかもしれない」という、対象者のかぎわけよりも、「この人と読みたい」という直観の方が、この「読みあい」には大事。
    ・たぶんそれは、目的が、図書サービスではなく、関係性の回復にあるから。
    ・絵本の読みあいは、四〇歳を過ぎ、解釈へ、解釈へと向かいがちな人生のベクトルを反対へ向け変えてくれようとしています。

  • 卒論のために。一般書。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

ノートルダム清心女子大学人間生活学部児童学科教授
児童文学作家・児童文学者
保育園・幼稚園・図書館・児童養護施設・老人保健施設・刑務所など様々な場所で絵本の読みあいを続ける。
『チャーシューの月』(小峰書店)で,日本児童文学者協会賞。
「長期入院児のための絵本の読みあい」(西隆太朗と共同研究)で,日本絵本研究賞。
『あららのはたけ』(偕成社)で, 坪田譲治文学賞。『こくん』(童心社)でJBBY賞。
主な著書に、『感じあう 伝えあう ワークで学ぶ児童文化』『「こどもの本」の創作講座』(以上、金子書房)、『保育をゆたかに絵本でコミュニケーション』(かもがわ出版)、『幼児理解と保育援助』共著(建帛社)など。

「2024年 『立ちあう保育 だから「こぐま」にいる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村中李衣の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×