関数解析 共立数学講座 (15)

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  • 共立出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784320011069

作品紹介・あらすじ

 本書は関数解析の入門書である。
 関数解析の理論自体は抽象的なものであるが,その起源は積分方程式など解析学の具体的な問題に根ざしている。そして,現在における関数解析の魅力の一つは,その広い応用性にあるといっても過言ではないであろう。なかでも,本書で注目するのは,種々の関数空間を舞台とする関数解析の応用である。解析学の諸問題を関数空間における問題として捉え,関数解析的な考え方・手法の活用を計ることは,偏微分方程式論への応用を要として,近年急速に普及しつつある。いまや関数解析は解析学の諸分野はもとより,数理物理・数理工学を含む応用数学の諸分野においても,必須の道具となりつつあるようにみえる。このような状況のもとで,関数空間における関数解析を重視する立場に立つ入門書には,なお存在理由がありうると考え,本書を執筆した。
 しかしながら,本書は関数解析の応用を論じた本ではない。入門書であるからには,読者が関数解析の基礎理論を一通り修得されることを第一の目標にしている。本書で著者なりの配慮を試みたのは,説明のなかで関数空間での応用への足がかりを固めながら,段々に抽象的理論に進むようにしたことである。その結果,本書の構成はやや変わったものとなった。第1章,第3章を除いて,前半第6章までは,専ら関数空間の話である。そこでは,Fourier解析の初歩に比較的多くの頁をさきつつSobolev空間に到り,最後にLaplaceの方程式のDiricblet問題を論じて,関数解析的方法の有効性を示した。後半第7章以下では,線形作用素論を中心に,関数解析の基礎理論を述べた。前半の材料は,後半でも例として活用されている。
 説明は丁寧を旨とし,例や例題を多く入れて理解を助けるように努めた。実際の応用に基づく例を多く入れられなかったのは,著者の経験不足のせいである。前半が長くなり,後半との頁数のバランスがやや悪くなってしまった。その結果,第12章ははしょることになり,また述べておいてもよかったことで,割愛したものもある。正則半群,Dunford積分による作用素解析,凸性に関する事項,などがそれである。また,商空間のことが全くぬけてしまった。これらのことは,必要に応じて他の書物で補っていただきたい。
 予備知識としては,読者が大学教養課程程度の微積分に習熟し,加えて関数論の初歩(留数による積分計算あたりまで)に関する知識をもっておられることを仮定した。関数空間を重視する以上,Lebesgue積分は積極的に使用する。しかし,数学以外が専門の読者にはLebesgue積分は難物のようなので,本書で必要な範囲を付録にまとめ(これもやや我流),本文中では付録を丹念に引用するように努めた。Lebesgue積分未修の読者も,付録を手がかりに読み進まれ,その活用法を覚えられることを期待する。

感想・レビュー・書評

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  • 教育的な教科書で,前から順番に読んでいくとかなり読みやすい.
    行間が比較的狭く,地の文が直観を丁寧に伝えている.その狭い行間も埋めていくと理解が深まるような構成(説明の順序)になっている.
    章の間に関連があるので,第一章から読んでいくとよい.

    付録に測度・ルベーグ積分に関するファクトが掲載されていて,これを本文中で参照しながら使う形になっている.フーリエ変換の辺りでこれらの使い方が実例を通して分かるのがまた良い.

  • 行間が詰まっていて、随所に教育的な配慮がある。

    問題に対する解は略解または省略。若干の誤植あり。

    扱っている内容はどんどん高度になってくる。

    ソボレフ空間の議論は、金子の偏微分方程式を学んでいたおかげでフォローできた。

    定義に戻りながら、考え続ければ、必ず突破できる記述で、読後は大きな達成感が得られる。

    個人的には、一般化された導関数の導入に数学の可能性を感じる。

  • 関数解析の定番書

  • 2015年度 理学図書室 貸出第20位

    理図書 415.5||Ku72 10934153

  • <div class="booklog-all" style="margin-bottom:10px;"><div class="booklog-img" style="float:left; margin-right:15px;"><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4320011066%3ftag=ieiriblog-22%26link_code=xm2%26camp=2025" target="_blank"><img src="http://booklog.jp/img/noimage.gif" class="booklog-imgsrc" style="border:0px; width:100px"></a><br></div><div class="booklog-data" style="float:left; width:300px;"><div class="booklog-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4320011066%3ftag=ieiriblog-22%26link_code=xm2%26camp=2025" target="_blank">関数解析 共立数学講座 (15)</a></div><div class="booklog-pub">黒田 成俊 / 共立出版</div><div class="booklog-info" style="margin-top:10px;">Amazonランキング:220456位<br>Amazonおすすめ度:<img src="http://booklog.jp/img/5.gif"><br></div><div class="booklog-link" style="margin-top:10px;"><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4320011066%3ftag=ieiriblog-22%26link_code=xm2%26camp=2025" target="_blank">Amazonで詳細を見る</a><br><a href="http://booklog.jp/asin/4320011066/via=arcer" target="_blank">Booklogでレビューを見る</a> by <a href="http://booklog.jp" target="_blank">Booklog</a><br></div></div><br style="clear:left"></div>

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著者プロフィール

黒田成俊:東京大学名誉教授

「2017年 『量子力学の数学理論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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