コンサルタントの秘密: 技術アドバイスの人間学

  • 共立出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784320025370

作品紹介・あらすじ

著者の深いコンサルタント経験を基に技術アドバイスの機微をあますところなく説き明かす、理系と文系の両方を含む、よい仕事を目指す大人のための楽しくまた恐ろしい本。

感想・レビュー・書評

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  • 原本は1985年ですから既に古典に入るのでしょう。洒脱な文体とお洒落なイラストで読ませますが、法則がこれほどあることにまず驚かされます。
    本書ではマービンの法則、ラズベリージャムの法則、ワインバーグの双子の法則など30以上の法則にお目にかかれます。
    私が特に、気に入ったのは「コンサルタントの法則」なるものです。第1法則:依頼主がどういおうが問題は必ずある、第2法則:一見どう見えようが、それは常に人の問題である、第3法則:料金は時間に対して支払われるのであって、解答に対して支払われるのではないという点を忘れてはならない、第4法則:雇われ主以外の問題を解いてやるな。
    また、以下の文などは風刺とユーモアが絶妙です。
    「最近まで私は、心理学という分野全体が50%の誤りと50%のでっちあげから成り立っているのではないかと疑っていた。それどころか、心理学者自身がそのどっちがどっちなのかわからないのではないかと疑った。だが成熟するにつれ私も、数人の優れた心理学者たちーそのほとんどは、普通の言葉で文章が書ける人たちだったがーを尊敬するようになった。」
    若干、日本語訳が読みづらいが、内容がいいので頑張って読みましょう!

  • ・私がフルタイムのコンサルタントになった時にすぐ気づいたのは、世界が彼らにとって合理的に働いているときに影響を及ぼしてくれと頼んでくる人々はほとんどない、ということであった。その結果としてコンサルタントは、異常に多くの非合理性に出会うことになりがちである。

    ・二、三年前のことだが、あるたいそう賢いコンサルタントが、私が本をどんなにたくさん書いたか自慢げにしゃべっているのを聞きつけた。…「ねえ、あなたがもしあの人たちの手助けをしようと思ってそうしてるんじゃないとしたら、あなたは誰を助けようとしていることになるかしら。そんなに助けがほしいのだったら、あなたは依頼主になるべきなのよ。コンサルタントじゃなくてね。」
    私が人に、自分は中古車のセールスマンです、といいはじめたのは、このときからであったと思う。
    (著者は飛行機で隣の人とあまり会話をしたくない時に、中古車のセールスマンを名乗る事にしている)

    ・私は「私の」ピンの技法が大変な自慢だった。だから何年もの間、品質の問題を解いてくれと頼まれるごとにそれを使っていた。だがそれが道具としてあまりにも有効に見えたために、私は明白なことを見落とした。
    ある日、違った種類の問題に関係して新しい依頼主を訪れたときに、私はボードに苦情の分布を示すピンが立っているのを見かけた。
    「ああ、」と私はボードを指さして言った。「お宅ではソフトウェアの品質に問題があるのですか。」
    「いいえ、うちのソフトウェアの品質は業界ではトップです。どうしてそうお聞きになったのですか。」
    そのときはじめて、私はずっと前から気づいているべきだったことに気づいた。つまり、苦情を集計する何らかの道具が”見当たらない”ことこそ品質に問題がある事の兆候だったのである。
    …私はそれまでピンの技法を、品質上の問題点に目を向けるために使ってきたが、同じ技法は、どのグループには品質上の問題が”ないか”をみつけるのにも使えるものだったのだ。そういう優れたグループを訪れてみて私は、ソフトウェアの品質を改善するためのやり方を、たちまち1ダースばかり学ぶことができた。
    またしても私は、そこにないものに気づきそこなっていたのだ。私はあまりにも問題に目を向けすぎ、反問題、つまり存在していそうで実は存在していない問題を見落としていた。私は長い間かけて、自分のコンサルタントとしての道具箱を眺め回し、そうか、そこにないものを見るための道具が足りなかったのか、と気づいた。

    ・防御手段の第一は、新しいシステムは必ず失敗する(それもひょっとするとたくさんの点で)という事実を受け入れることである。私が「失敗は”許されない”んだから、この変化はぜひ起こさなければ。」と考えている自分に気づいたとすれば、それは私が大きなトラブルに巻き込まれているときである。多少の失敗を許容することができないのだとすれば、新しいシステムは作っても役に立たないのだ。

    ・変化が避けえないものであるとき、人は自分がもっとも高い価値を置いているもののために、もっとも強くもがく。
    カブト虫たちは仔が大きくなると保護するのをやめる、という感覚を持っているわ。ところが人間は幻想を作り出すことができるから困るの。それを失われた現実の代わりとして作り出してしまうの。現実の変化は、たいていはゆっくりしたものよね。ところが、もし私たちがその変化を隠すために幻想をこしらえはじめると、じき私たちは気づいてみればその幻想を維持するために全エネルギーを費やしていた、ということになるの。
    それは危機のように見えるかもしれないが、実は幻想の終りにすぎない。

    ・「同じアイディアが世にあらわれるのは一度ではない。二度でもない。無数に何度もあらわれるのだ。」―アリストテレス

  • コンサルタントとして長年働き、また多くのコンサルタントの育成を手掛けてきた筆者による、コンサルティングをうまく進めるための秘訣を解説した本。

    コンサルタントというのを、専門分野のコンサルティングを業務として受託して行う人というだけでなく、他人から相談を受け、アドバイスを通じてその人に影響を及ぼす人という形で広く捉えると、この本で書かれていることはほぼ仕事のすべての領域において参考になるのではないかと思う。

    コンサルティングというのは、決して合理的に進むものではない。問題が明確に定義されていることは少なく、依頼主もコンサルタントも人間である以上、感情や視野の限界など、人間としての限界の中で物事を判断しがちである。

    そのような困難な状況をうまく切り抜けていくためのやり方を、いくつもの「法則」とユーモアを交えて解説しており、非常に楽しく読めた。

    私自身としては、「依頼主は問題があるということをなかなか認めたがらないものである」、という指摘や、「誰が手柄を立てた(問題を解決した)かということを気にしていたら、何も達成できない」、といったアドバイスは、仕事が行き詰まったときに思い出したい、とても有益な言葉であると感じた。

    また、変化に対する依頼主の抵抗をやり過ごすために、抵抗になるべく中立的な名前を付けることや、抵抗の本質を突き止めるためにいくつかの質問をするといったテクニックも、日々の仕事の中で役に立ちそうな事柄であると思う。

    人によって仕事をうまく進めるために抱えている問題が異なり、それぞれによってこの本の中で参考になる箇所は違うと思うが、問題に直面したときに視野を広げて解決方法を考えるために、参考になる本であると感じた。

  • コンサルタントの仕事とは、「人々に、彼らの要請に基づいて影響を及ぼす術」
    賢明なコンサルタントなら、依頼主の自尊心を認知するようなやり方で答えるでしょう。ただし、自分自身の自尊心を犠牲にすることはしないでしょう。そうでなければ、本物の、長続きする変化は生まれてきません。
    マネージャーの文化の中では、相手が誰であるにせよ、自分に処理できない問題があることを認めるくらいまずいことはない。
    まず、依頼主が有能であるということに同意し、そのうえで、何か改善を要する分野はありませんか、と問うというものである。
    依頼主は、あまりにも問題の近くにいるために、自分がどんなに深いトラブルに巻き込まれているかわからないのである。
    有能なコンサルタントがいる場所では、依頼主が問題を解決する、ということである。
    「いつも、子供たちにとって必要なことを成し遂げたのは先生たちの手柄ですと、公式的に認めるようにします。私は彼らに必要な技法を教え、彼らが同じ問題でまた私を呼ぶことのないように努めます。」

    全部を自分でやることはできない、ということを認めることができるほど肝っ玉が大きいのは、最良のマネージャーと最良のコンサルタントだけである。
    「自分を雇ったのでない相手の問題を解いてやるな」コンサルタント業務とは、「当人の依頼」によって、その人に影響を及ぼす仕事である、ということを決して忘れなるな。
    第一の問題を取り除くと、第二番が昇進する。
    失敗を容認できない人は、コンサルタントとしては成功できない。
    問題が解ける人は、いい暮らしができる。だが、必要に応じて問題を無視することができる人こそ、最高の暮らしができるのだ。
    他人を助けようとすることは、まず自分を、しかも依頼主以上に助けるようになるものなのだ。
    「合理的であるな、妥当であれ」→合理的は、論理的であること。妥当とは、実情によく当てはまっていて、適切であること。
    いつも論理でうまくゆくものなら、コンサルタントなど誰も必要としないだろう。
    生き残りのためには、われわれはものごとを笑い飛ばし、もおう一度はじめからやりなおすということを覚えなければならない。
    コンサルタントたちがかかる職業病はたくさんあるが、問題を解きたいという気持ちを抑えられない、という病気はその一つである。
    問題に対処するときは、最適化を考えるのではなく、トレードオフを考える。
    ひとたび質問が出始めれば、ただで何かを手に入れることはできないということがはっきりし、ひいては解答を見つけるための努力が筋の通った方向に進み始める。
    健康なコンサルタントは健康な曲線を見つけるのに時間を使うものだ。不可能な曲線を探し求めてみても何にもならない。
    ある方向に動けば、別の方向についてコストが発生する。
    オレンジジューステスト:「それは難しい問題です。そのお手伝いならできます。で、費用はこれだけです」と回答する。「それはできますよ。で、それにはこれだけかかります」
    →つまり、何らかのサービスをしてもらいたいと思った時には、私は相手に何をしてほしいかを告げる。相手は、それをそこでしてもらうためにはいくらかかるかを告げる。
    →依頼主(顧客)との間で、何の代償もなしに何かをもたらすような計画を考えたがるという、われわれ相互の間に発生する最適化症の治療にも使える。
    自分で自分をなおせるシステムを繰り返し治療していると、ついには自分をなおせないシステムができる。
    もし彼ら(依頼者)がこれまでしてきたことが問題を解決しなかったのなら、何か違うことをするように勧めるがよい。
    コンサルタント業において一番大切な業務は、料金を適正に設定することだ。
    金ピカ法則:機能にできなかったら、それらしく見せてしまえ。それらしく見せる方が、なおすよりずっと楽だからである。
    逆金ピカ法則:何かが「らしく見せられている」とすれば、それはなおす必要がある。歪んだ、ごまかしの表現や言葉を使うのをやめて、本来の名前で物事を呼ぶ、というところから始まる。

  • コンサルタントが相手を変えるためにどのようにすれば効果的か、が面白おかしく書かれている本。当方は大企業の横串機能の部署に所属しているが、社内コンサル的な立ち回りをすることが多く、本書に書かれている内容にとても共感ができた。
    非合理の扱い方、なぜ問題が解決できないか、依頼主がどれだけ混乱にしてるか見分ける方法、、など。
    文体のせいで真偽を疑ってしまうものもあるが、他人の混乱を整理してお金を稼いでいる人にとっては身近に感じるテーマが多く、うまく自分のケースに当てはめて読むことができれば有用な本ではないだろうか。

  • 良いことは書いてあるのだが、どうにも読みにくい。もう少し分かりやすく説明できると思う。

  • 必読。本質を考えるための頭の体操として

  • 例え話を用いてコンサルタントの大事なところを話す本
    例え話が多すぎて入ってこない。いいテーマのもあるけど構成のバランスが良くない

  • 20代のころ、コンサルが主催する合宿形式のセミナに1週間参加したことがある。設計段階の3人ごとの班単位での参加。コンサルの言うことにことごとく反論したら、つぎつぎ別の知見を提供してくれた。コンサルは吊るし上げなきゃダメなんだということがわかったことと、大事なことにそれぞれ優先順位をつけてから3人で相談しろというのは今でも継承している。一緒に参加した方からは、その後すごく信頼された。吊るし上げなければ、コンサルは何も教えてくれなかったろうと。そんな文脈で読むと面白いかも。吊るし上げなくても教えてくれてる。

  • ジェラルド・ワインバーグ(Gerald Marvin Weinberg)は、その洒脱な文体での著作の数々で、一部の人には非常に有名なシステムエンジニアで、心理学者だ。

    「一部の人」とは、システムエンジニアのみならず、コンサルティングに関わる人、また、経営層に近い人のことで、個人的にも、IT系の管理職の方はほぼ全員、何らかの彼の著作を読んでいた。

    私も、仕事の絡みで知り合ったシステムエンジニアの方から紹介してもらって読んだのが最初だ。あれは20年以上前だろうか。で、久々に手に取ってパラパラと開いてみる。

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    コンサルタントの第一法則
    依頼主がどういおうとも、問題は必ずある。
    コンサルタントの第二法則
    一見どう見えようとも、それはつねに人の問題である。
    コンサルタントの第三法則
    料金は時間に対して支払われるのであって、解答に対して支払われるのではない、ということを忘れてはならない。(p.4)
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    私はコンサルタントではない。どちらかと言えば実務家だが、「そうなんですよ~」と膝を打つような警句が次々に出てくる。「第二法則」など、まさに「そのとおりでございます」だ。

    我々は、何か問題が生じたときに、得てして仕組みや機械のせいにしてしまいがちで、モノやシステムを変えることで片付けたくなるのだが、実際は、人為的、つまり「人の問題」が真因である。

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    よく適応すればするほど、適応力を失いがちだ。(フィッシャーの基本定理)(p.32)
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    これもまさにそうだ。「過剰適応」という言葉があるが、のめり込んでしまった時に陥りがちな状況への警句だ。

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    エネルギーや空気や水や食物は品切れになるかもしらんが、理由ばかりは決して品切れにならんもんだぞ。(p.69)
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    理由、を"言い訳"に置き換えると、とても納得する。

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    言葉と音楽が合っていなかったら、そこに欠けた要素がある。(p.93)
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    直感的に感じた違和感は、疎かにしてはならない。

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    1:安い種を使ってはいけない。
    2:土の準備は庭作りの秘密である。
    3:タイミングがきわめて大切である。
    4:一番しっかり地面に根づくのは、自分の根で育った作物である。
    5:水をやりすぎると、強くならないで弱くなる。
    6:最善の努力。払っても、枯れる作物は枯れる。
    (p.228-229)
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    ツボにはまる警句(法則)は、人ぞれぞれだろう。私は「4:」だ。私の理解は、自分で積み上げてきた基礎こそが、最後の最後は一番役に立つ、と理解している。

    この本は、一度通読した上で、ふと気になったり迷いがある時に読むと、とてもスッキリする。

    そういう使い方(読み方)が良い一冊だ。

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