ハナミズキのみち

著者 :
  • 金の星社
4.13
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本棚登録 : 149
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784323072586

作品紹介・あらすじ

わすれない3.11。いのちの道をつなげたい。東日本大震災の津波でわが子を亡くした母の切なる思いが一冊の絵本に。

感想・レビュー・書評

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  • 黒井健さんというお名前を聞くだけで、瞼の奥がじわんとしてくる。
    「ごんぎつね」や「てぶくろをかいに」の、あの優しい挿絵を描かれた方だ。
    そして作者の浅沼キミ子さんは、陸前高田市で東日本大震災に遭い、25歳の長男・健さんを亡くされた。
    本書は浅沼さんが実に2年もかけて必死に言葉を紡いだ一冊だ。
    浅沼さんにしろ黒井さんにしろ、どれほどの思いを込められたか、悲しみの中で逡巡する思いとどれだけ闘ったか、そんなことを思わずにいられない。
    作品はあくまでも美しい。
    言葉を紡ぐ、人々への思いを込めるとは、つまりこういうことなのだろう。

    ドキッとする津波の描写もあり、瓦礫の山と化した海辺もある。
    ふるさとの景色が、一変する。
    語り手は、亡くなった息子さんだ。
    そして、【みんなが あんぜんなところへ にげる目じるしに ハナミズキのみちを つくってね」という言葉へと続く。
    後書きによれば、会いたくて会いたくて泣いてばかりいた日々に、そういう息子さんの声が聞こえてきたのだという。

    読む目的はひとそれぞれで構わないが、この浅沼さんの気持ちだけは伝えたい。
    たくさん描かれた薄桃色のハナミズキの花と、裏表紙にまで丁寧に描かれた黒井健さんの絵が、さざなみのように胸に押し寄せる。
    約4分。3,4歳から。
    読みながら泣いても、これはもう仕方がないかな。

    • メイプルマフィンさん
      実家が陸前高田の隣市で、陸前高田は海水浴など、幼いころから何度も訪れたところでした。
      「ふるさとの景色が、一変する。」
      こんなことがあっ...
      実家が陸前高田の隣市で、陸前高田は海水浴など、幼いころから何度も訪れたところでした。
      「ふるさとの景色が、一変する。」
      こんなことがあっていいのかと、いまだにやるせない気持ちです。
      この絵本のことは今回初めて知りました。
      黒井健さんも大好きです。
      是非是非、読んでみたいと思います。
      2014/06/24
    • nejidonさん
      メイプルマフィンさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      幼い頃からの思い出の土地なのですね。
      やるせない気持ち、お察ししま...
      メイプルマフィンさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      幼い頃からの思い出の土地なのですね。
      やるせない気持ち、お察しします。
      想像をはるかに超えた被害の大きさに、どんなにか無念だったことでしょう。
      この作品は、美しいだけにいっそう、作者さんの悲しみの深さがストレートに伝わります。
      黒井健さんもお好きということで、何だか嬉しいです。
      どうぞ手に取ってくださいませ。
      2014/06/25
  • みじかい言葉でこんなに思いを紡げるのか

  • なんだか、星をいくつ付けるか選ぶのも、評価をしようとする事自体、ある意味相応しくないような、
    烏滸がましいような、上から目線のような
    他の作品や本を読んだ時は全然思ったりしないような、(他の作品でも、作品によっては思ったりもしますが)そんな事を思いました
    なのでこの星も仮です。

    話の具体的な内容、文章自体は未読で知りませんでしたが、
    どんな内容の作品かは知っていたのと
    題名が『ハナミズキのみち』なので
    名曲の『ハナミズキ』のしっとりとしてじんわりとする心に響く・沁みる
    あの曲を連想するのと

    表紙が彩度低めで本来ならもっと爽やかな青であるはずの海や空が
    緑がかっている時点で、もう、
    なんか普段の絵本と違う感がする・醸し出しているなと感じました。

    そして私はSound Horizonの大ファンなので
    初視聴でガッツリ心を抉られ、頭をブン殴られた衝撃を受けた
    『絵馬に願ひを!』の『死はいつも水の貌で...』を主に、
    他にも『神と私の生きる道』『未来の主人公達へ』を
    思い出すので

    最初の本編が始まったページから、
    絵から文章からしてだめでした
    その後の展開・辛さがわかっている・想像・連想するが故に、
    まるで伏線のような、
    ただただ素敵な場所・故郷・思い出とは捉えられなかったです

    そして、絵を描かれた黒井健さん自身が苦労したと
    この文章や作品に見合う・ぴったりの絵をどう表現すれば良いのかと苦悩し、
    長い年月をかけたのが、
    簡単に短時間で描いたわけないなと伝わる、
    とても力と想いと気合が籠っている絵だと

    よく知っている『ごんぎつね』や
    『手ぶくろを買いに』の、
    ほっこりとかわいらしい、やさしい繊細さを感じる絵とは全然違うなにかを感じました

    ただ綺麗なだけの絵ではない、涼やかさだけではない、
    何かしらの強さ・怖さ・畏怖・雄大さも感じました

    文章からも、その景色・場所を好きだったんだと、とてもかがやいていた、尊敬のような?何かを感じてもいたのだと、そんな感じがしました

    そこから先は、とても変わってしまったんだなと、
    とても変わってしまったからその場所達をチョイスして描いている、そしてあの時は一緒にいたのにね、と行間や言葉の裏で語っているようだなと、

    一般的な絵本と比べて文章が、文字数が少なく、
    多くは語らない、語りたくないと、
    この文字数で、語り手が届けたい相手には伝わる、
    通じ合っている、お互い思い出を共有した大事な思い出で大切な思い出の場所だと

    あくまで語りたかった相手への言葉だから
    ページを開いて読んでいる読者へはある意味二の次で、あくまで読んでいる読者が相手ではない、
    読者にも、多くの人にも伝えたいけれど、
    読者そのものへ伝えたい・届けたい言葉達ではないんだろうなと感じた。

    仏壇やお墓や、思い出の場所で思い出の相手へ語りかけているような言葉。

    ゴジラ-1.0の作中の場面を思い出しました
    絵が暗く、文字が見えづらい箇所がありましたが
    それもとてもその文章と、語り手の心情と合っている・シンクロしている・重なっていると思いました。

    伊咲那美さんや絵馬に願ひを!だけでなく、
    Romanやヴァニシング・スターライトや、
    暁光の唄、『Nein』、『イドへ至る森へ至るイド』、

    他にも『千の風になって』や『花咲か爺さん』
    『戦国無双3』の黒田官兵衛の最期のシーンを思い出しました
    他にも『島唄』など、絵は場所は東北ですが
    沖縄にも通じる話しだし、

    『ハナミズキ』の歌は米中枢同時テロが発生したとき、現地に住む男性の友人と彼の恋人の幸せを願い、作詞した
    との事なので通じると、

    ハナミズキは4月から5月らしく、ハナミズキの歌詞にも母の日と出てくるので通じるなと、思いました。

    1番最後の文章が胸にくるのと、その文をふまえて読むか読まないかでは感じ方も違うと、
    この文章を書く事じたいも、文章にする事自体も辛かっただろうなと思いました。

    読み方は違いますが、2人の健さんが出てくるのも
    すごい偶然、それとも必然なのか、
    兎にも角にも不思議な縁があったのだなと思いました。

    この作品を世に生み出したお二人が、
    苦悩、表現、形にする事自体がとても難しい・辛いだろうと思いますので、とても凄いと思いました
    ありがとうございました

  • 被災した地でこれまで長い間築かれてきた人々の営みを決して忘れず、なくなった人の分まで、未来のいのちをまもるために生きていきたいです。

  • 黒井健さんの絵で手に取ったが、震災の津波で息子さんを亡くした方のお話でした。残された者は悲しいけれど、温かくなれるお話です。

  • 美しいふるさとの景色や大切な家族をさらった津波。
    でも家族の絆やかけがえのない思い出までさらうことはできない。
    息子さんを津波で亡くされた淺沼さんの心のうちが伝わってきて、胸を打たれました。
    息子さんと一緒につくっていくハナミズキのみちは命を守る道、希望の道として未来につながっていく。
    淺沼さんの強い意志をもちながら優しく語りかけるような文章と黒井さんの真に迫った悲しく美しい絵が
    印象的なこの絵本。忘れられない一冊になりそうです。

  • 絵が語っている。心に直接。津波のシーンも、ラストのシーンも。言葉にならない想いを。

  • 東日本大震災の津波で息子さんを亡くされた淺沼さんがご自身の体験をもとに2年の歳月をかけて描いた絵本。

    絵本を開くと静かな街並みと、青く穏やかな海が広がる。まるで、思い出を回想しながらやさしく息子さんに語りかけているように感じさせる。
    しかし、津波は一瞬にして何もかも奪ってしまう。
    後半、津波で命を亡くした'ぼく'がおかあさんに語りかける。

    「津波が来たとき、みんながあんぜんなところへにげるめじるしに、ハナミズキのみちをつくってね。
    町の人たちがもう二度と津波でかなしむことがないように、ぼくは、はなみずきといっしょに
    みんなを、まもっていきたいんだよ」と。
     
    「悲劇を二度と繰り返さないで」という思いが痛切に伝わってくる。
    また、黒井健さんの絵がやさしいタッチで描かれ、素敵だ。

  • 作者の淺沼ミキ子さん、絵を描いた黒井健さんは、一体どれほどの苦悩を経てこの絵本を描かれたことだろう。きっと、それは東日本大震災を直接に体験していない我々には想像もつかないような苦悩だっただろう。

    その苦悩を乗り越えて書かれた淺沼さんの文章は、繊細で、子どもたちにわかりやすく伝わるように配慮されていて、そして淺沼さんの想いも込められている。東日本大震災大震災関連の絵本はこれまでいくつか出版されているけれど、想いは込められていても文章は読みにくい、とい☆ものが多かった。淺沼さんの文章には「子どもたちに伝えたい、伝わって欲しい」という配慮が見て取れる。

    そして、黒井健さんの絵。淺沼さんの陸前高田の数々の想い出、津波、津波に破壊された街。美しい風景が1ページめくるだけで、恐ろしい破壊の絵に変わる。黒井健さんはこの絵をどのように描くか真っ向から向き合い、偽ることなく津波の恐ろしさ、津波がもたらす破壊を描ききっている。この絵を描くのにどれだけ悩みながら筆を取られただろう。どれだけ苦しみながら描かれたことだろう。

    そして、圧巻なのはこの津波と破壊の後の物語。淺沼さんが悲しみから立ち上がることができた、亡くなった息子さんへの想いと、物語をハナミズキを通して伝えることの希望、その希望がハナミズキとなって暗い海に降りそそぐ。この物語を黒井さんは見事に描いている。そこには、黒井さん自身もまた、自ら描いた津波の破壊の絵から自分自身を救い出したかのように見える。

    2人の作者の「伝えなければ」という渾身の想いが込められた絵本です。

  • 1分50秒☆見返しの奇跡の一本松は、福島の希望。春に花咲くハナミズキに思いを寄せて未来をみつめる。「いのちを守る木を植えたい」亡き息子とつながる母の願いは、尊い。

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