昔話法廷

著者 :
  • 金の星社
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  • Amazon.co.jp ・本 (127ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784323073651

作品紹介・あらすじ

王妃は有罪か無罪か?カチカチ山のウサギに執行猶予は?三匹のこぶたは殺人罪か正当防衛で無罪か? おなじみの昔話を現代の法廷で審議。あなたが裁判員ならどうする? 裁判員制度を考える話題のNHKEテレの番組を小説化。
裁判員制度を考える中高生向きの番組ながら、その意外性とシュールさが大人の間で話題となりSNSでも議論が飛び交った話題の番組を、小説で完全再現。番組は視聴者に考えてもらうという意図のため結審するところで終わるが、書籍にはその後の裁判員による評議のシーンを新たに追加しています。

感想・レビュー・書評

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  • Eテレの人気番組の書籍化。
    昔話の主人公たちが現代の法廷で裁かれる。
    「三匹のこぶた」の子ブタは、オオカミを故意に殺した殺人罪か正当防衛で無罪か。
    「かちかち山」のウサギの、タヌキを痛めつけたのは殺人未遂か、
    それともおばあさんのかたき討ちのためという情状酌量の余地ありで執行猶予か。
    「白雪姫」の王妃は、毒リンゴを盛った罪で殺人未遂か、証拠不十分で無罪か。

    裁判はひとりの裁判員の眼を通して進められるので、読み手としては検察側になったり弁護側になったり、時には被告人になったりとシミュレーションできる。
    その視点・論点(あ、この番組も面白いね・笑)が実に興味深い。
    特に面白いのは、検察側の証人と弁護側の証人の主張。
    勘違い・思い込みも多く、人間とは(?)こんなにも芯のない生き物なのかと確認してみたり。
    裁判と言う場で顕著になる被告人の新たな一面。
    子ブタは何だか奸智にたけたタイプに見えてくるし、ウサギは切なく哀れ。
    白雪姫はどうも世間ずれしていて、とても姫の器ではなさそう。

    最後は評議となって終わるが、もちろん判決には至らない。
    試行錯誤を重ねる段階が重要で、裁判員という立場について学習させられる。
    現場の教師にとっても授業の良い教材になりそうだ。

    読んでみて最初に思ったのは、テレビの15分間なんてさらりと見てしまうのだなということ。
    文章化されたのを辿ってみると、更によく考えることが出来る。
    当初は、日本には根付かないのでは危惧された裁判員制度だが、このように学習を重ねることでより身近になっていくかもしれない。
    人を裁くという立場には出来ればなりたくないが、裁判とはどういうもので、どんな風に進めるものなのか、誤りやすいのはどんな点かを学べる。
    自分の観察力の無さに失望することもあるが、それらをよく知られている昔話の主役たちが被告という意外さと楽しさで学習できる。^

    さて、続編で「アリとキリギリス」「浦島太郎」「舌きりスズメ」「ヘンゼルとグレーテル」
    「さるかに合戦」の裁判は、果たして書籍化されるのだろうか。それも楽しみ。

    • nejidonさん
      けいたんさん、こちらにもコメントを下さってありがとうございます!
      Eテレをご覧になったのですね。
      そうそう、あの着ぐるみがちょっと怖くて...
      けいたんさん、こちらにもコメントを下さってありがとうございます!
      Eテレをご覧になったのですね。
      そうそう、あの着ぐるみがちょっと怖くて、ある意味目が離せません・(笑)
      続きのドラマも楽しめましたよ!
      おお、そんな風に展開するのか!と新鮮でした。
      レビューにも載せましたが、テレビの方は何となく観てしまって終わりますが、
      本だとちゃんと考えて読むから心に残りますね。
      普段あまり縁のない、裁判というものを考えてみる、とても良い機会でした。
      2017/08/30
    • 円軌道の外さん
      nejidonさん、またまたお邪魔します!
      僕はテレビ好きだと思われてるようですが(笑)、実際はテレビはほとんど観ないのです(観たい番組だ...
      nejidonさん、またまたお邪魔します!
      僕はテレビ好きだと思われてるようですが(笑)、実際はテレビはほとんど観ないのです(観たい番組だけは事前にチェックして録画してますが)。
      ですが、唯一例外として、テレ東とNHKだけはこまめにチェックしてます。
      それだけにこんな面白そうな番組を見逃していたなんて、かなりショックでした(笑)
      昔話の主人公たちが現代の法廷でさばかれるってだけで興味深いし、
      様々な視点から昔話の中の事件となっている事柄や被告の行動について思いを巡らせ、あ~でもないこ~でもない、
      あっ、そういう見方もあるのか!って考えるだけで、確かに裁判員制度のシミュレーションになりますよね。
      番組は今もやってるのかな?
      2018/01/16
    • nejidonさん
      円軌道の外さん、コメントありがとうございます。
      残念ながらこの番組、今はやってないようです。
      年末に再放送されたのですが、もう終了してし...
      円軌道の外さん、コメントありがとうございます。
      残念ながらこの番組、今はやってないようです。
      年末に再放送されたのですが、もう終了してしまってますし。
      でもでも、こんなページがありましたので、何とか見られそうですよ。
      http://www.nhk.or.jp/sougou/houtei/?das_id=D0005180241_00000

      昔話の神秘性というものに貴重さを感じる方たちは、この番組に批判的でしたね。
      「あんなことするなんて」という舌鋒鋭くお怒りの方も。
      ワタクシ、全然そんなことなくて・笑
      昔話の世界は今まで通り大切にします。
      こちらは法廷・裁判の学習用に書き換えたもの。怒ることのほどでもありません。
      それに、答え(判決)は出ませんもの。
      そこまでの考え方・論旨の持って行き方が大事なのです。
      テレビ好きな(笑)円軌道の外さんも、何とか見られますように。
      2018/01/17
  • 昔話の登場人物たちが現代の法廷で裁かれる『昔話法廷』開廷。

    「三匹のこぶた」のコブタは本当に正当防衛なのか。「カチカチ山」のウサギを執行猶予に出来るのか。「白雪姫」姫の食べたりんごに王妃の指紋がついていなかった⁈王妃は本当は無罪なのか。考えた事もない世界。とても興味深い。楽しい読書でした。

    閉廷後、裁判員達で判決を話し合う所も現代らしくていいな。裁判員裁判にも少し触れられた気がする。どうかウサギは執行猶予にしてあげてと思ってしまう私には裁判員は難しいなぁ。

    今日Eテレの放送を見たけど、テレビでは評議の部分はなかった。最終弁論の後、裁判員の「どちらなのだろうか…」で終わる。
    道徳の時間、テレビを消した後、子供たちが判決について話し合うのかなぁ。裁判員の人達とはひと味違った色んな意見が飛び交って楽しいだろうなぁ♪この本と同じで判決は出ないだろうけど、正しい事、してはいけない事を学びとって欲しい。

    私も子供の頃テレビの時間があって嬉しかったな。懐かしい。「昔話法廷」いい俳優さんが出ていてびっくりした。

  •  Eテレでやっているの観て、この本を手に取った。

     物語の出来事を現代の法律に置き換えて裁くという奇想天外な設定だった。

     判決が出ないで終わってしまうのは少しモヤモヤしてしまう所だ(しょうがないことだとは思うが…)。

    • ぽすさん
      こんにちは

      この本が題材のドラマは私も観ています。
      面白いですよねー。

      今後ともよろしくお願いします。
      こんにちは

      この本が題材のドラマは私も観ています。
      面白いですよねー。

      今後ともよろしくお願いします。
      2022/04/06
  • なるほど。誰もが知っている童話をいろんな角度から検証して、さあ考えてみましょう、と読者が結論を出すものだった。
    Eテレの番組を観たくなった。

  • 『昔話法廷』有罪?無罪?おなじみの昔話を現代の法廷で裁く! : |本の泉|有隣堂|
    http://www.yurindo-izumiblog.jp/archives/57005861.html

    昔話法廷 | NHK for School
    https://www.nhk.or.jp/school/sougou/houtei/

    昔話法廷 :NHK Eテレ「昔話法廷」制作班/今井雅子/イマセン/伊野孝行 - 金の星社
    https://www.kinnohoshi.co.jp/search/info.php?isbn=9784323073651

    昔話法廷シリーズ :NHK Eテレ「昔話法廷」制作班/イマセン/伊野孝行  - 金の星社
    https://www.kinnohoshi.co.jp/search/info.php?isbn=9784323944913

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      佐藤史緒さん
      、、、実は見たコトなくて
      NHKは三谷幸喜に助けられていますよねぇ~

      あーー三谷幸喜じゃなくて今井雅子ですって
      佐藤史緒さん
      、、、実は見たコトなくて
      NHKは三谷幸喜に助けられていますよねぇ~

      あーー三谷幸喜じゃなくて今井雅子ですって
      2020/09/04
    • 佐藤史緒さん
      あれっ、勘違いだったかな?
      どうも失礼しましたー
      「アリとキリギリス」の回が面白かったです。
      あれっ、勘違いだったかな?
      どうも失礼しましたー
      「アリとキリギリス」の回が面白かったです。
      2020/09/05
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      佐藤史緒さん
      見た〜い!
      佐藤史緒さん
      見た〜い!
      2020/09/05
  • 長女が中学校の図書館で借りた本。
    以前NHKのEテレ「昔話法廷」を娘達と観ていて、あーでもない、こーでもないと議論しながら楽しんだ番組の書籍化。
    TVで観るよりも書籍化された文章で読む方が詳しく分かる気がした。
    TVでは一方的に法廷内のやり取りをドラマ仕立てで観せられて、結論を丸投げされた感じで終わってしまう。
    けれど書籍は「評議」で裁判員の意見が読めるので一緒に事件について掘り下げられる。

    法廷で裁かれるのは、子供から大人まで幅広い世代がよく知る昔話『三匹のこぶた』の末っ子のこぶた、『カチカチ山』のウサギ、そして『白雪姫』の王妃。
    よく知っているだけに「殺人罪」「正当防衛」「執行猶予」等の裁判用語を当てはめると、そのギャップが改めて面白い。
    個人的に言わせてもらえれば、末っ子のこぶた「トン三郎」は計画的犯行のように思えてならない。
    そしてTVで観た時から思っていたけれど…白雪姫はやっぱりあやしい。

  • 「三匹のこぶた」「カチカチ山」「白雪姫」の3作品を現代の裁判で審議する。裁判員制度を考えるNHKEテレの番組を小説化した本作。

    裁判員視点が“語り手”となり、様々な登場人物の主張をもとに裁判は進行していきます。それぞれの主張や状況証拠を踏まえ、少しずつ判決に至る材料が揃っていきます。そして裁判員たちの“評議”で今までのやりとりが整理され、いよいよ“判決”は……明確にはされず、結論は読者に委ねて話は終えます。

    まず昔話×裁判という組合せが斬新。誰もが知っている昔話がベースにあるため裁判の部分に集中できます。
    登場人物たちの意見を聞いている最中も「正義」と「悪」の基準がぐらぐらと揺らぎます。さらに、曲げようのない事実をひとつひとつ照らし合わせたところで明解な結論(判決)が浮かぶというわけではありません。主張を疑い、登場人物の背景や立場を想像して、有罪か無罪か結論を出さなくてはなりません。人が人を裁く以上、裁判員個々人のモラルや感情も少なからず判決に反映しそうです。これを仕事として日々処理する立場の方は大変だなぁと、つくづく裁判の難しさを再認識しました。
    小中学生のディベート等でも使えそうな内容。

  • ★2.5
    判決は読者が決めなさい、っていうスタンスなのかな?
    昔話を思い出すよい機会になるけど、白雪姫ががっかりなので、マイナス★ひとつ。

  • 三匹のこぶたの件については、オオカミがいつ来てもおかしくない状態で鍋にお湯をわかしたり、
    重しの石を持っていたのは明らかにおかしいと思う。トン三郎は殺人罪でいいと思う。
    カチカチ山の件については、大好きなおばあさんを殺されて相当悲しかったとおもうし、そもそも事件の動機はたぬきにあるからうさぎは執行猶予でいいと思う。
    白雪姫の件については、王妃は自分の嫉妬により
    殺そうとしたのであり、あくまでも白雪姫に悪気はないので、王妃は殺人未遂の罪でいいと思う。

  • この本のすごいところは、
    本の中で
    「判決を出さないところ」だと思っていて、
    読者に考えることを促す構成がお見事。
    誰かと判決を話し合いたくなる1冊、です。


    小学生にも中学生にも人気。
    あらためて昔話を読むきっかけ作りにもなり、
    裁判を知ることも出来て、
    Eテレは本当天才か、となる。

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著者プロフィール

1970年生まれ。京都大学卒業。脚本家・作家。脚本作品にNHK連続テレビ小説「てっぱん」、NHKEテレ「おじゃる丸」「ルルロロ」など多数。絵本作品に『わにのだんす』がある。

「2018年 『昔話法廷 Season3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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