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- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784324080054
感想・レビュー・書評
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都市計画家、伊藤滋氏の幼少期から現在まで居住する久我山の家に映るまでの約25年間の生い立ちを、それぞれの時期に住んだ街の思い出とともに綴ったエッセイ。
昭和一桁代から戦後の10年くらいまでの郊外の暮らしが、筆者の思い出とともに克明に描かれている。
まちの変化の様子や近所の人の様子が手に取るように分かるというのも驚きだが、それ以上に、筆者自らの手によるスケッチや街の地図の詳細さには簡単せざるを得ない。
都市計画の分野に進む前から、このように町や環境の変化に敏感であったからこそ、都市計画家になることができたのではないかとも感じた。
当時の郊外のまちには、住宅のすぐ近くに商店街や繁華街があり、また同じく歩いて行ける範囲に町工場があったりした。そのことで、小学生のころから徒歩圏内に様々な職業や年齢層の人と出会う機会があったということが、この本を読んでよく分かった。
近代都市計画によって、このような用途の混在はどちらかというと排除される方向になっていったが、社会のなりたちや多様性を体験の中で知ることができるという意味では、この本のなかに描かれているような街のあり方も、意義があるのではないかと感じた。
いずれにしても、時代の移り変わりのなかで今は失われた昭和のまちの姿を詳細に記録している、貴重な本であると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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