昭和のまちの物語―伊藤滋の追憶の「山の手」

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  • ぎょうせい
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784324080054

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  • 都市計画家、伊藤滋氏の幼少期から現在まで居住する久我山の家に映るまでの約25年間の生い立ちを、それぞれの時期に住んだ街の思い出とともに綴ったエッセイ。

    昭和一桁代から戦後の10年くらいまでの郊外の暮らしが、筆者の思い出とともに克明に描かれている。

    まちの変化の様子や近所の人の様子が手に取るように分かるというのも驚きだが、それ以上に、筆者自らの手によるスケッチや街の地図の詳細さには簡単せざるを得ない。

    都市計画の分野に進む前から、このように町や環境の変化に敏感であったからこそ、都市計画家になることができたのではないかとも感じた。

    当時の郊外のまちには、住宅のすぐ近くに商店街や繁華街があり、また同じく歩いて行ける範囲に町工場があったりした。そのことで、小学生のころから徒歩圏内に様々な職業や年齢層の人と出会う機会があったということが、この本を読んでよく分かった。

    近代都市計画によって、このような用途の混在はどちらかというと排除される方向になっていったが、社会のなりたちや多様性を体験の中で知ることができるという意味では、この本のなかに描かれているような街のあり方も、意義があるのではないかと感じた。

    いずれにしても、時代の移り変わりのなかで今は失われた昭和のまちの姿を詳細に記録している、貴重な本であると思う。

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著者プロフィール

都市計画家。東京大学名誉教授。「2040年+の東京都心市街地像研究会」会長。1931年東京生まれ。東京大学農学部林学科・同工学部建築学科卒業。東京大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了。工学博士。東京大学都市工学科教授、慶應義塾大学環境情報学部教授、早稲田大学特命教授、日本都市計画学会会長、建設省都市計画中央審議会会長、阪神・淡路復興委員会委員、内閣官房都市再生戦略チーム座長などを歴任。
著書に『旅する街づくり』(万来舎)、『提言・都市創造』(晶文社)、『東京のグランドデザイン』(慶應義塾大学出版会)、『東京育ちの東京論』(PHP研究所)、『東京、きのう今日あした』(NTT出版)、『たたかう東京』、『かえよう東京』(以上、鹿島出版会)、『すみたい東京』、『つくろう東京』(以上、近代建築社)ほか多数。

「2023年 『都市計画家・伊藤滋が見た 東北復興縦断2011-2021』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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