- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326153893
作品紹介・あらすじ
人工呼吸装置をはずすのは是か非か。「死」という極めて個人的な問題を権利として主張する激しさと痛切さ。アメリカの経験を振り返る。
感想・レビュー・書評
-
命も倫理も永久不変ではないのなら……<br> カレン・クインラン事件とは1975年アメリカで、いったん装着した呼吸器を外すことを求め患者の家族が起こした裁判だ。日本でも大きく報道され、この事件がきっかけで医療の高度化と生命倫理の相克が具体的なイメージをもって世間に認知されるようになった。
この本はカレン事件とその前後に主にアメリカで起こったいくつかの事例を精査し、生命倫理観の変遷を見出した労作。そして明らかになったのが「積極的安楽死肯定論の文脈に置かれていた『死ぬ権利』という言葉が、クインラン事件によって意味がずらされ、『医学的介入なしに自然な原因によって死ぬ』ことを求める治療の拒否権として認められてくる過程(p.340)」だ。
裁判記録や当時の報道を原文で丹念に読み込んだ研究者の成果をこうして日本語で読めるのは幸いなこと。ここ日本でも起こりつつある同じような議論を、より実りあるものにするために、この本ができるだけ多くの人に読まれることを切に願う。(1/18/2007 NT0703)<br> これはとにかく、誰かがやらなくてはいけないことだったけど、誰もやる人がいなかった研究だ。大変すぎるからだ。英語で裁判記録を読み、いやそもそも、裁判記録を取り寄せるところからして、えらく手間がかかるに違いない。そして当時の報道記録を片っ端から読むわけだ。そうして物事がいつ誰によってどのように表現されてきたか、そこから何が読み取れるかを、一つずつ並べかえ、整理していく。ああ、気の遠くなるような作業である。だから誰もやらなかった。日本語で読めてうれしい。香川さん、ありがとう! 歴史というほど古い話ではないのかもしれないけれども、今までに起こったことを検証しないと、今起こっていることの本質を見失うということはあって、その意味で、この本はすごく重要だ。あー、そういう風に原稿に書けばよかった。初校で直そう、っと。詳細をみるコメント0件をすべて表示