悪への自由: カント倫理学の深層文法

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  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326154197

作品紹介・あらすじ

カント倫理学の核心を抉る、哲学者・中島義道の真骨頂。

感想・レビュー・書評

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  • 『カントの法論』などでも示されてきた、カントの倫理学は外形的に適法的な行為が果たして道徳法則に単に適っているだけか、それとも道徳法則に対する「尊敬」からなされたのかを批判的に吟味するものであるという解釈の図式を著者はこの著作でも維持している。それとともに、超越論的自由の次元においては、その意志がないにも関わらず悪をなしてしまう「悪への自由」を人間は有しており、それがカントの倫理学を支える根幹になっていると主張する。さらには、カントの倫理学を単なる「形式主義」とみなす動向にも批判を加えており、カントは自然法論の価値観やいわば「誠実性の原理」を密輸入しているのであると主張する(この点については「カントの法論」付録でも示唆されていた)。カント倫理学の批判対象が、外形的には善人でありながら実は「幸福の原理」を動機として行動する道徳的には全く善人ではない小市民に向けられていることを了解させてくれる好著である。

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著者プロフィール

1946年生まれ. 東京大学法学部卒. 同大学院人文科学研究科修士課程修了. ウィーン大学基礎総合学部修了(哲学博士). 電気通信大学教授を経て, 現在は哲学塾主宰. 著書に, 『時間を哲学する──過去はどこへ行ったのか』(講談社現代新書),『哲学の教科書』(講談社学術文庫), 『時間論』(ちくま学芸文庫), 『死を哲学する』(岩波書店), 『過酷なるニーチェ』(河出文庫), 『生き生きした過去──大森荘蔵の時間論, その批判的解説』(河出書房新社), 『不在の哲学』(ちくま学芸文庫)『時間と死──不在と無のあいだで』(ぷねうま舎), 『明るく死ぬための哲学』(文藝春秋), 『晩年のカント』(講談社), 『てってい的にキルケゴール その一 絶望ってなんだ』, 『てってい的にキルケゴール その二 私が私であることの深淵に絶望』(ぷねうま舎)など.

「2023年 『その3 本気で、つまずくということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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