- Amazon.co.jp ・本 (563ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326154326
作品紹介・あらすじ
笑えるもの─冗談・ギャグやお笑い、なんでこんなものが存在しているんだろう? どうしてぼくらはこんなものに時間を費やすんだろう? この問いに、著者たちは進化論と認知科学を武器に立ち向かう。ユーモアがどうして、またどのように進化したのかが明らかに。ふんだんに盛り込まれたジョークもお楽しみあれ!
感想・レビュー・書評
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タイトルの内容に進化心理学、認知科学の視点から迫る本。共著者の一人のダニエル・デネットがTEDで言っていたので手に取った。
一言で言えば「ユーモア(おかしみ)は頭を使って推論エラーを見つけることに対する報酬である」というアイデアに、多角的な説明と検討を加えている本だと感じた。
特に、人間はどのような目的から「ユーモア」を獲得したのかに関する進化的・目的論的な説明はおもしろい。
本文だけで500頁弱と情報量が多いが、自分としては、前半200ページと終章を読めばそれで十分に感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふむ
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進化論と認知科学をベースにした重厚な理論の集大成。進化論が加味されていることが面白かった。挟み込まれたジョークも面白く。
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心理
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笑いについて哲学やら認知心理学やらから検討を加えた大著なのだが、何が書いてあるのかわからないというのが正直な感想でした。研究のためにはもう一度読み直す必要はあると思いますが、その元気は今はありません。
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配置場所:摂枚普通図書
請求記号:141.6||H
資料ID:51500199 -
キレのいいネタを聞いたり絶妙な偶然の重なりが生んだ間抜けな失敗を目の当たりにしたとき、私たちの胸の内に、愉快な情動が沸き起こってくる。このおかしみ、ユーモアの情動は、知識・信念に不一致を見出したときに生じる。この「不一致」とその条件は、きわめて限定されている[A]。不一致の発見で生じるおかしみ・ユーモアの情動は、一種の報酬だ。エネルギーたっぷりの果糖がもたらす甘さの快感が果糖を含む食べ物を探し求める動機付けになるのと同じように、ユーモアの情動は、知識・信念のバグをつきとめる作業を促す動機付けになっている。これが、進化におけるユーモア情動の適応的な働きだ[B]。人の知性は、こうしたさまざまな「認知的情動(epistemic emotions)」によって制御・動機付けを受けて機能している[C]。
[A] ユーモアの情動が生じる条件:
暗黙のうちに心に入り込んで事実だと受け入れられていた情報が活性化されて実はマチガイだったと判明したとき、おかしみの情動が生じる
[B]
ユーモアの情動の機能:
ユーモア情動は、知識・信念のエラーやバグをつきとめるという厄介仕事に報酬を与えて、これを動機付けている。これは、ヒトのような高次認知をそなえた生物にとって必要不可欠な機能だ。私たちがジョークやコントを愛好しているのは、こうした基本的な機能の拡張・転用。
[C]
ヒトの知性の設計仕様を構想する:
ヒトの知性は、情動・報酬を深く組み込んだ設計になっている。知性にとって、情動は「不都合」な邪魔者どころか、それ抜きに安定して機能し得ない必須の要因となっている
おかしみの愉しみは、データ整合性の確認という具体的な課題をうまくやったときの情動的報酬だ。これは、ぼくらを動機付けて、この先もこの特定の認知活動を続けさせるように(進化によって)設計されている。したがって、おかしみは発見の快感に関連があり、これにともなって生じることがよくある
ユーモアは、メンタルスペース内でなされた失敗・間違いを指し示す。また、ユーモアはそうした間違いとあわせてその改善策をもたらす。ただし、そうした改善策はたんによくある副次的効果でしかない。間違いの同定がユーモアの中核部分だ
ぼくらがユーモアを強く好んでいるのは、ユーモアがくれる情動的報酬の設計によって、メンタルスペースにこっそり入り込んだ間違いを検索する習慣を育てるようにできているからだ、メンタルスペース内にバグを作り出し、一種の心のマスターベーションでバグ取りを愉しむことができる。このマスターベーションの報酬は、オーガズムじゃなくておかしみだ
ユーモア理論
・生物学的理論
・遊戯理論
・解放理論
・優位理論
・不一致解決理論
・驚き理論
不一致は心の中の表象(概念)と現実の対象との間になくてはならない(ショーペンハウエル)
スクリプトどうしの対立こそが、ジョークを可笑しくしている。なぜなら、両方を同時に呼び起こすことができないから(不一致)
コメディの登場人物は、「ほにゃらら」マシーンな傾向がある。クルーゾー警部はかっこつけマシーンだし、オースティン・パワーズはセックス・マシーン(マイク・マイヤーズ)。これは実に見事にベルクソンによるユーモア理論を例証している。こうした登場人物たちを設定した創作者たちは、登場人物の性格で滑稽味の核心部分を選び出し、その部分をマシーンに仕立てあげている。つまり、その部分は融通が効かずその人物の見せる反応を主に決定する要因に仕立てている。すると、その特徴によって登場人物が非適応的なかたちでふるまう様子にユーモアが見て取れるようになる。その場の状況で普通と違う(あるいは予想外の)行動を繰り出すんだけど、そうした行動はそれまでのその登場人物の振る舞いぶりの素描からすればいかにも当然にやりそうなことだったりもする。
ベルクソンの理論は、デフォルメや物理的な状況(バナナの皮で人が滑るさま)や「機械的な」行動などから生じるコメディをうまく予測していくれる -
2015年4月に実施した学生選書企画で学生の皆さんによって選ばれ購入した本です。
通常の配架場所: 開架図書(3階)
請求記号: 141.6//H98
【選書理由・おすすめコメント】
内容がおもしろかった
(薬学科、1年) -
【新着図書ピックアップ!】計算認知科学者ハーレーの博士論文を、その指導者であった哲学者デネットと心理学者アダムズとの共同研究により、さらに発展させたのが本書。ある一節では英語の"funny"の二つの語義が、humorous(滑稽だ)と、「笑いたくなるようなときではなくて、出来事や状態がいくぶんやっかいなかたちで異例だったり奇妙だったりしたとき」(本書p.59)に使う意味合いが、ある田舎者のシェフのジョークを理解するには必要、とある。
こうした傾向は英語だけでなく、スペイン語の方言やフランス語をはじめとする欧州言語のみならず、我が日本語にもあると言う。日本語の“おかしい”(可笑しい)を思い浮かべてごらん。分厚い本だけど、読破したらユーモアのしくみが(ちょっとは)わかる筈。
【New Book!】This book is a must-read for those interested in humor, cognitive psychology, and intelligence.
Original title: Inside jokes : using humor to reverse-engineer the mind -- Matthew M. Hurley, Daniel C. Dennett, and Reginald B. Adams / MIT Press, c2011. -
デネット先生の名前に惹かれて。
そういえばこの本↓が周辺の図書館には無いのを思い出した。
『ヒトはなぜほほえむのか:進化と発達にさぐる微笑の起源』(川上清文 高井清子 川上文人、新曜社 2012年)
【目次】
日本語版のための序文
序文
凡例
第一章 導入
第二章 ユーモアはなんのためにある?
第三章 ユーモアの現象学
1 対象または出来事の属性としてのユーモア
2 デュシャンヌの笑い
3 ユーモアの体系的な言い表しがたさ
4 「ワハハ‐可笑しい」と「フム‐おかしい」
5 ユーモアの知識相対性
6 男女の事情
第四章 ユーモア理論の学説略史
1 生物学的理論
2 遊戯理論
3 優位理論
4 解放理論
5 不一致と不一致解決理論
6 驚き理論
7 ベルクソンの機械的ユーモア理論
第五章 認知的・進化論的ユーモア理論のための20の問い
第六章 情動と計算
1 笑いのツボを探す
2 論理か情動のどちらかがぼくらの脳を組織しているんだろうか?
3 情動
4 情動の合理性
5 情動の非合理性
6 情動的アルゴリズム
7 若干の含意
第七章 ユーモアをこなせる心
1 すばやい思考──頓知の費用・便益
2 メンタルスペース構築
3 活発な信念
4 認識的な警戒とコミットメント
5 衝突、そして解決
第八章 ユーモアとおかしみ
1 メンタルスペースの汚染
2 認識的情動のなかのおかしみ──ミクロダイナミックス
3 報酬と首尾よくいった汚れ仕事
4 「笑いどころをつかむ」──基本ユーモアをスローモーションでみる
5 干渉する情動
第九章 高階ユーモア
1 志向的構え
2 一人称と三人称のちがい
3 擬人化と人間中心主義
4 志向的構えジョーク
第一〇章 反論を考える
1 反証可能性
2 認識的な決定不可能性
3 見かけ上の反例
4 他モデルを簡潔に検討
5 グレアム・リッチーの五つの問い
第一一章 周縁例──非ジョーク、ダメなジョーク、近似的ユーモア
1 知識相対性
2 強度の尺度
3 境界例
4 機知と関連現象
5 予想の操作に関するヒューロンの説
第一二章 それにしてもなんで笑うんだろう?
1 コミュニケーションとしての笑い
2 ユーモアと笑いの共起
3 コメディという芸術
4 文学における喜劇(と悲劇)
5 人を癒すユーモア
第一三章 おあとがよろしいようで
1 「20の問い」への回答
2 ユーモアのセンスをもったロボットはつくれるだろうか?
終章
注
訳者あとがき
参考文献
事項索引
人名索引