国際政治の理論 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 3)

  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326301607

感想・レビュー・書評

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  • [枠の話]既存の国際政治学の見方に一石を投じ、その学問のあり方を変えるまでに至ったとされる一冊。理論としての国際政治を明確に打ち出し、ネオ・リアリズムとも呼ばれる学派の形成に一役買ったことでも知られています。著者は、アメリカ政治学会会長を務めたことでも知られるケネス・ウォルツ。訳者は、早稲田大学政治経済学術院で教授を務めた河野勝と安全保障関係に関する著作を多数世に送り出している岡垣知子。原題は、『Theory of International Politics』。


    はっきり言って前半部はとても難解でしたが、本書の重要部とも言える国際政治の構造に関する理論については、後の議論に大きな影響と反響をもたらしたこともあり、国際政治学に興味のある方にとっては読んでおいて損はないかと。著者が示した理論(それが決定的に正しいかどうかは誰にもわからないのではないかと邪推しますが)をいかに応用していくかというところに、本書の醍醐味があるような気がしました。


    〜国際政治の状況を国家の国内的性質から推論することはできないし、また国家の外交政策や対外行動の総和によって国際政治の理解に到達することはできないのである。〜

    読後の疲労感がとてつもなかった☆5つ

  •  とても強固である。この一言に尽きる。
    と言ってもこれは装丁の話ではなく、その理論としての強度が尋常ではないという意味で、そう言える。
     本書は80年代のアメリカにおける国際政治学を席捲した。その内容は、国際政治を分析する際には構造を見るべきであり、その構造とは即ちパワーバランスである、また国際システムとはアナーキーであるために自助的なシステムであり、そのために国家はパワーバランスについて注視して対応する、というのが凡そであるから、そこまで極端なことを言っているわけではない。
     しかしその理屈も、国内の事情を勘案せずに分析されるとなると、それは極端であると、非難の対象となる。その上彼は、ミクロ経済の議論に則り、自身の理論が現実の結果と異なることも大した問題でない、とする。そうした自己擁護のために、全九章のうちの前半四章を費やしているのだから、そうそう論破できるものではない。是非ともこのロジックに舌を巻いて欲しい。
     そうやって方々から叩かれたせいか、同時に誤解されることも多い。決して彼は国内政治が不在であるかのように述べたわけではない。パワー以外の要素が存在しないとも言っているわけではない。これはあくまで国際政治において、体系的に論ずるための理念型としての理論の提示であり、何より大事なのは、分析の際にどのレベルで物を語るのか、そしてそのレベルで物を語った際にはどういうことが言えるのか、という議論の厳密化と細分化なのだとウォルツは示しているのだろう。なお、アメリカにおいては、この後10年はこの土台の上での議論が続いたが、その事実がまた強固さを示しているのだと思う。

著者プロフィール

ケネス・ウォルツ(Kenneth N. Waltz)

1924年生まれ。コロンビア大学でPh.D.を取得。87~88年にはアメリカ政治学会会長。カルフォルニア大学バークレー校で長く教授を務めた。専門は国際政治学。2013年逝去。主著:『国際政治の理論』(勁草書房, 2010年), 『人間・国家・戦争――国際政治の3つのイメージ』(勁草書房, 2013年), Realism and International Politics (Routledge, 2008) など。

「2017年 『核兵器の拡散 終わりなき論争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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