ネット炎上の研究: 誰があおり、どう対処するのか

  • 勁草書房
3.52
  • (5)
  • (18)
  • (20)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 350
感想 : 35
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326504220

作品紹介・あらすじ

インターネットが普及すれば多くの人が自由な議論の輪に加わり討論の民主主義が社会のすそ野に広がっていくと期待された。しかし論調は暗転し、ネット上での意見交換に悲観的な意見が増えてくる。この論調の暗転の大きな原因になったのがいわゆる炎上問題である。本書はこの炎上について定量的な分析を行うとともに、本書なりにその原因と社会としての炎上対策を示す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 良書、というか、情報発信者で自分は打たれ弱いと思う人には必読の書と言える。
    ネット炎上に対してはこれくらい冷静に距離を取って客観的に観察・分析・対応するのが良いと思う。網羅的でありながら定量的。特に、炎上に加担するバカは0.5%程度、積極的に攻撃する狂者は1万人に1人以下のオーダーだということは現代の基礎知識として頭に入れておくべき数値。
    SNS禁止令を発するべきソシオパス数百人程度に網をかければ、ネットはもっと息苦しくなくなるかもしれないという希望と、本当にそうだろうかという不安。アリの集団のように、また別の数百人が攻撃者となったりして。
    これまでなら狭い社会の中でやり過ごし、無視し、時には吊し上げることで対処してきたノイジーマイナリティというやっかいものが、SNSを得たことで安全圏から手当たり次第に攻撃を加えることが可能となってしまった。
    これらごくごく少数の例外に対しては物理的対応(検挙、SNS禁止令)をやっていくしかないのだろうと思う。そうして風通しの良くなったネット社会を見てから死にたいものだ。
    サロン型SNSはピンと来ない。アンケート結果が示しているのはメンバーシップ制ではなく、ノイジーマイナリティの排除ではないのか?

  • ほんとうに「年収の多い若い子持ちの男性」が炎上させているのか?
    この本が紹介されるときに必ず使われるフレーズだが、数字を見てみたら極めて怪しかった。
    炎上参加者は少なく1%程度しかない。著者が見ているのは、その小さい参加率が1つの項目(年収、年齢といった属性)によって有意に変化するかどうかである。0.9%が1.1%になっても有意ならその項目は取り上げるのである。「年収」についてはそのP値が8~9%なのに採用している。2000人のアンケートで、その中で炎上参加者は(多くしてある)数十人しかいない。
    「年収の多い若い子持ちの男性」これが本書を語るキーワードとして流通していて、このプロフィールの人が炎上に参加する理由について詳しく語ったレビューもある。だがこの表現はミスリードでないのか。各項目が独立しているのか疑問に感じる。独立しているかどうかはクロス集計をしないとわからないはずである。たとえば、ママ(子育て中の女性)たちが特に「子持ち」の項目を押し上げていないかチェックしたのだろうか。育児ホルモンともいわれるオキシトシンは他社に対しては攻撃性を高めるともいう。

    大きな炎上でも参加者は数千人、直接攻撃するのは数十人という分析は有用。「ニコニコはコメント数人ミュートすれば快適になる」「2ちゃんの炎上は数人でやっている、1人の場合も」という報告もあるとか。なので、攻撃者を個別に排除する対策は有効だろう。

    炎上の弊害は、自由な意見表明の萎縮であり、その結果炎上に強い両極端な人だけがのこり言論空間が両極化するという。

    今のインターネット言論空間は、学術的なネットワークとして誕生したため、発信力が過剰だという。
    筆者は非対称SNSを提案している。これが普及しきれば有効だろうが炎上しやすいtwitterのような空間が残っている限り効果はあがらないと思うが。

  • 炎上に関して知りたいのは、やはり炎上のきっかけ、炎上が広がるメカニズム、炎上をさせている人の実態、動機、行動態様等々であるが、本書はそう言った炎上のメカニズムを理論的に整理、解明するものではなく(多少そういった話も出てくるが)、あくまでもデータに基づいた炎上の実態を分析するものである。

    そういった意味でちょっと購入の意図とは異なる内容ではあったが、しかしやはり学術的に丁寧に分析がなされているので、そこから導き出される炎上の実態については、説得力があり、興味深い内容であった。

    学術的なやり方としてはまあデータを取って統計的に分析するのはオーソドックなやり方だと思うが、ツイートが増加、拡散していくメカニズム・ネットワークをモデル化し、それを実際の炎上事例に当てはめて、炎上が広がりやすい・にくいネットワーク構造を特定するというのも研究としてはありだと思う。

    それが炎上を防止する一つの方策にもつながると思う。

  • 東2法経図・6F開架:007.3A/Ta84n//K

  • 2022年10月~11月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00524285

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/688250

  • 本は脳を育てる:https://www.lib.hokudai.ac.jp/book/index_detail.php?SSID=629
    推薦者 : 中村 重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター

    この本は、インターネット上で発生するいわゆる「炎上」という現象を分析し、その実態と歴史(!)と対応策を分かりやすく述べている。特に最後の「付録 炎上リテラシー教育のひな型」では、高校生を対象として想定し、「炎上」の仕組みとそれに巻き込まれそうになったらどうするべきかを丁寧に説いてくれている。インターネットがこれだけ広範囲に利用されるようになった社会で安全に生活し、かつ自分が加害者にならないためにも読んでおくべき1冊である。

全35件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

田中 辰雄(たなか たつお) 1957年、東京都に生まれる。東京大学大学院経済学研究科単位取得退学。国際大学グローバルコミュニケーションセンター研究員、コロンビア大学客員研究員を経て、現在、慶應義塾大学経済学部教授。専攻は計量経済学。主要著作:『ゲーム産業の経済分析』(共編著、東洋経済新報社、2003年)、『モジュール化の終焉』(NTT 出版、2007年)、『著作権保護期間』(共編著、勁草書房、2008年)、『ソーシャルゲームのビジネスモデル』(共著、勁草書房、2015年)、『ネット炎上の研究』(共著、勁草書房、2016年)、『ネットは社会を分断しない』(共著、角川新書、2019年)ほか。

「2022年 『ネット分断への処方箋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田中辰雄の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
エラ・フランシス...
トマ・ピケティ
ヴィクトール・E...
都築 響一
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×