開発と国家 アフリカ政治経済論序説(開発経済学の挑戦3) (開発経済学の挑戦 3)

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  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326546022

作品紹介・あらすじ

近現代史の困難と矛盾を背負ってきたアフリカの21世紀のために…。政治経済学をはじめとする従来の社会科学を問い直し、開発研究と地域研究の架橋を目指す、独創的な国家論の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • イツ理論: ベイツの分析枠組みはアフリカの国家を1)公共の利益(社会的厚生の最大化)を目的とする政府 2)私的利益(社会の諸勢力の各自の利益)に規定される政府 3)自己の政治的生存を目的とする政府 の3つのどれに最も当てはまるかについて検討している。
    青木の国家論: 国家と政府とを明示的に分けている。国家は、政治経済ゲームの均衡状態であり、政府もそのプレーヤの一つにすぎない。

  • うぉー、長かったー。
    そこまで興味分野と一致していなかったことも長く感じた一因だとは思いますが。
    まぁ、あまり国家論にこれまで開発分野で触れてきていなかったことを思えば、まぁ読んで良かったかな。

    細かいことは、メモを読むべきですが、概要は、
    「アフリカにおける市場の未発達は政治権力が農業、特に食糧生産の振興について歴史的に農民との共益関係を持たないことと表裏をなしている。生産振興についてこの共益関係を持たないことは、逆に政治権力が市場経済の発達ということを政策課題になしえないことを意味しているだろう。」ただし、ケニアの例のように、時に小農と共益関係を持つ場合もあるのであり、アフリカ政治経済にかかわる都市偏重の通年とは異なるところもあるので注意。(p. 394)
    また、土地制度・市場経済制度の導入とそれによる財産権の発生が社会集団の間の軋轢を引き起こし得る。そして、民族はもともと分節化する性質をもつものではなく、そのような軋轢や人々の共通観念、政治権力との関わり合いの中で、結果として分節化し得るものであり、一度分節化してしまうと、「部族」主義政治になってしまう。これを克服していくことが今後のアフリカには重要。(p. 395) →☆
    これまでのアフリカは、移住状態、人口密度の低い状態で、土地に希少性がなかった。さらに、市場経済、特に穀物生産の市場が未発達であった。ゆえに、土地の生産性を上げる、という意識が希薄であった。(p. 395-6)
     合理的選択論にそっていえば、農業は収奪の対象になるはずであったが、実例を見るに、「アフリカのいくつかの国の政府は、現実には価格をむしろ政策的につり上げて、市場に任せていた場合に生じてしまう食料不足を解消しようとしてきた。」(p. 396)
    食糧不足等の際には、何らかの社会的調停が必要だが、アフリカでは、なかなか政府にも市場にも期待できない状況であったから、互いの相互扶助に頼り、また、「現実には外国からの援助によって社会的調停が図られてきた。」(p. 397)
     「超自然的な力が信じられ、それへの恐れが平等規範の維持を支えている状況」であるがゆえに、革新技術の導入は農業振興に正の役割を持つけれども、それが同時に負の作用を及ぼす可能性もある。(p. 398)
     ☆詳細を述べるには別巻が必要なほどであるが、概して、今後、「市場経済の育成を進め、政治権力を広く小農大衆の利益に資するものに変え、さらに「部族」主義を超克するためには、」①「政治権力の行使のあり方」②「社会の公共性の構築」が重要になるだろう。(p. 400) ①に関しては、エリートの倫理性の向上、また、公共性が広く人々の共通観念によって支えられるようになることが重要。②「人々は単に個体として生きるのではなく、社会的関係の中に位置づけられて生きている。人々の存在と安全とは、そのような社会的関係の中で意味づけをされた存在と安全として捉えられるべきなのである。民族はそのような人々の社会的関係を出自の共通性という物語で具現化したものといってよいだろう。」(p. 417) 特に、アフリカ人の生活レベルにおいては、死者が身近であり、「自らの存在にとって常に死者との関係が問題となる」。「だからこそ、観念上の先祖との関係、つまり血脈の共有観念と、その血脈の生者の間での共有が重要な意味を持つことになる。そして、血脈の共有観念に民族というものの強烈さの根拠がある。」(pp. 408-9) これは仮説に過ぎず、今後十分な検証が必要であるが、「もしアフリカ諸国の政治行政機構が、身近に死を置いている大多数の人びとに、手厚く公平な政策的な扱いをして死を遠ざけることができるようになり、その点において人々の信任を得られるようになれば、そして人々と個々人が自らの市民としての権利として、政治行政機構にそのことを要求できるようになれば、アフリカにおける公共性と民族をめぐる状況は、おそらく大きく変わっていく。」(p. 410) そのこともあって、「草の根」援助には注意が必要で、政府をすっとばして支援して良いというものでもない。もちろん、しばらくの間は、「外国援助がアフリカの政府の機能を肩代わり」することは重要だとは思うけれども。(p. 411)

    というところかな。

    あと、キーワードは、新古典派経済学、社会主義、合理的選択論、方法論的個人主義、ベイツ、無秩序の道具化、情の経済、公共選択論、制度論、資源配分システム、利己的合理性・共同性・超越への畏怖、農業-工業間資源移転論、国民・準国民・民族・部増k、

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著者プロフィール

神戸大学大学院国際協力研究科・教授
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院修了(国際関係論修士)
主な著書に,『開発と国家―アフリカ政治経済論序説―』(勁草書房,2010年,単著),『現代アフリカ経済論』(ミネルヴァ書房,2014年,共編著),『開発を問い直す―転換する世界と日本の国際協力―』(日本評論社,2011年,共編著)など。

「2016年 『開発と共生のはざまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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