- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326650330
感想・レビュー・書評
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2021I151 367.3/U2
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第2巻では、磯野富士子が1970年に発表した「婦人解放論の混迷」に始まる第二次主婦論争と、武田京子が1972年に発表した「主婦こそ解放された人間像」に始まる第三次主婦論争の諸論文、そして主婦論争に関する神田道子と駒野陽子のサーヴェイ論文、そして編者の上野千鶴子による「解説 主婦論争を解読する」が収録されています。
第二次主婦論争は、マルクスの労働価値説の中で、家事を初めとする主婦の労働はどのように位置づけられるのかという問いかけをめぐって繰り広げられますが、問題そのものが拡散してしまっているような印象もあります。
第三次主婦論争では、「生産」よりも「生活」を重視する武田が「主婦こそ解放された人間像」だという主張をおこない、それに対する応酬がなされています。
こうして、主婦論争にまつわるさまざまな論文を通して読んできた後で、巻末の上野の解説を読むと、クリアな理論的整理がなされていることに舌を巻かざるを得ません。上野はまず、理論的な観点に立って、「性分業肯定論」と「性分業否定論」、「家庭擁護論」と「家庭解放論」の二つの対立軸を設定し、その中に主婦論争に関わったさまざまな論者の立場を位置づけ、たがいに相対化していきます。その上で、体制変革をめざすプロセスにおいて生活を続けていく必要があり、「そればかりか、いま・ここでのささやかな解放がなければ、将来にわたっても全面的な解放なぞありえない」という観点を併せながら、女性解放の戦略を描き出しています。
アグネス論争において、かつての母性保護論争における山川菊栄を思わせるような理論的整理を買って出た上野ですが、本書でもそうした理論的な見方の強みが発揮されると同時に、理念と現状との視点の交換をたえずおこなうという粘り強い思索を見せています。