認知科学への招待: 心の研究のおもしろさに迫る

制作 : 大津 由紀雄  波多野 誼余夫 
  • 研究社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784327378103

感想・レビュー・書評

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  • 昔は心理学に興味があって、中学生から成人する頃くらいの間は特にC・G・ユングにハマっていた。ということで当時は精神分析学を中心にいろいろと心理学関連の本を読んでいたのだけど、成人した位から動物行動学とか進化論とか生態学とかのヒトを超えた観点で生命体を見る生物学全般や、社会学など人間集団の行動原理を研究するような学問の方に興味が移って、心理学関連の本は長いこと読まなくなっていた。

    最近になって、流行の脳科学というものに私も触れるようになったわけだが、流行モノの宿命というか、科学的にいろんなレベルの本や情報がウワ~っとあふれてる感じになっている、という感じがするわけで。

    私の認識では、脳科学という表現は一般大衆向けであって、アカデミックにいえばたぶん「ニューロサイエンス(神経科学)」なのだろうけど、脳科学=神経科学ではない感じもある。素人考えだが、脳科学という表現の中には、神経科学に加えて、この本で紹介されているような「認知科学」の知見も入っているのだろう。

    私の認識では、ヒトの脳内で起こっている現象を物理的・生化学的にとらえるのが「神経科学」で、ヒトの言動等、外界に出た表現としてとらえるのが「認知科学」というイメージだった。そして昔に馴れ親しんだ心理学が発展したのが認知科学なのだろうと思っていた。そのへんは自分でもそんなにハッキリとわかっていたわけではない。なので、もうちょっとハッキリさせるために、とりあえず認知科学の入門書を読もうと思い、手に取ったのが本書である。

    『認知科学への招待』は2冊あって、今後冊数が増える可能性もあるらしいが、とにかく全体として、現在の日本で行われている「認知科学的」研究を集めまくって、それがどのような土台の上に乗っていて、どのような意味があるのか、というような観点から紹介されている。

    思ったほどには素人向けではない。どちらかといえばこれから認知科学的分野で研究したい学生がどのような専門分野を選ぶか、というような時に読むような内容の本であると思う。前提とされる予備知識がけっこうある気がした。何をいわんとしているのかほとんど理解できない研究内容も複数あった。

    それでも、全体としてはとても興味深く読むことができた。

    この本の内容で大まかに分けると、認知科学とは、
    1)ヒトの発達・学習・記憶・創造性などや視覚・運動制御など、ヒトの認知機能そのものに焦点をあて、それらがどのように獲得されたのか、どのような特性があるのかなどを主に実験を設定して研究する分野。
    2)ヒトの社会集団内でのふるまい、相互作用、他者理解の観点(心の理論)から認知機能の特性を研究する分野。
    3)MRIやPET等のスキャナーを使って脳内血流画像などを得て1)の内容等を研究する分野。
    4)言語機能、言語の文化的差異、構文の特性などを研究する分野。ヒトとヒト以外の動物の研究もある。
    5)他の動物とヒトの認知に関わる行動を比較して、ヒト特有の機能は何かを研究する分野。
    6)事故や病気で認知機能が損傷したヒトの言動から認知の特性を研究する分野。1)2)3)にも関連する。
    7)コンピュータプログラムを設計することでヒトの情報処理機能を総合的または部分的に構築してみる分野。

    …と分類してみたが、あくまで素人の理解なので、ウィキペディアを見てもらった方が良いかもしれない。
    (私もウィキペディアの「認知科学」の項目はもちろん確認しているのだが(笑))

    とにかく、現状で日本のこのあたりの分野はこうなっているのだなあという感覚はなんとなく得ることができた。
    たぶんもっと予備知識が深い人が読めば、もっと得るものが大きいのだろう。その点は(自分に対して)残念だ。

    それでも、このあたりに関してかなり私の知識はあいまいであったので、この本2冊を読後すこしはハッキリしたように思える。
    『私とは何か』という問いの答えの一部は間違いなくこの方向にあると思うので、これを足がかりにしてまた本を読んでいきたいと思う。

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