英語教育熱 過熱心理を常識で冷ます

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  • 研究社
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784327410698

作品紹介・あらすじ

日本人には痛々しいばかりの英語能力願望がある。しかし、その願望のために目が曇ってしまっている。常識で考えれば、直ぐにおかしいと気づくことが理解できなくなってしまっている。例えば、「6年も学校で英語を勉強しているのに、ちっとも喋れるようにならない」などというのがこの典型である。本書は、そうした冷静さを欠いた主張がなぜなされるのかを、教育関係者はもとより、英語教育に関心のある一般読者の方々にも、分かりやすく解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 批判の仕方に知性を感じられない、思い込み?のような批判も多いが、第二外国語としての英語は母国語とは学習プロセスが異なること、母国語での内容以上に英語によって花開くものはないこと、言語習得は手段であり、目的が大事であること、など、確かに英語を神聖視することなく、まっすぐ考えるきっかけになった。

  •  学校の授業を受けただけで英語が話せるようになるはずがない、
     日本語できちんと議論できない者が英語で議論などできるはずがない、
     日本語の本をろくに読まない者が英語で書かれたものを読めるはずがない、
     こうした当たり前のことに、例えば中学校の教科書全文が一枚の紙の裏表に収まってしまう分量でしかないことなどの例を使って、あらためて気づかせてくれます。
     大変有益な本なのですが、著名なスポーツ選手が、準備してきたフレーズを言っているだけでも、日本人に自信をつけさせるため英語を流暢に話しているかのようにテレビで流そうという提案は、私は、はっきりと間違っていると思うので、星4つとしました。
     英語狂騒熱を常識でさますのが著者の主張なのに、こうした虚構はそれをまさに煽るのではないのですか?

  • 毎年1月、初心を大事にするということで読んでいます。
    英語教育の現状について、「まっすぐ」向き合うチャンスをたくさんくれる本だと思います。
    「何年も習っているのに使えない」、「小学校から英語が始まるから大丈夫」などは冷静に考えないといけないことだと思います。
    もちろん、この本で示されているデータは、英語教師に「だからできなくてもいいや」と逃げ道を作るためではないと思うし、絶対にそう解釈してはいけないと思います。
    常識的に考え、その上で力を身につけさせる。このエッセンスを終始与えてくれる本だと思います。

  • 読み物としてはそれなりに面白いが、高校時代に戦史マニアであったことを告白しつつ、なぜか山本七平と司馬遼太郎を好意的に取り上げる。なにもこんな人達を例えに出さなくてもっていうくらい残念な「常識」をさらけ出しているのでマイナス1ポイント

  •  英語教育の話となると、いつも学校が悪者にされ、文法は不要なものとされ、とにかく早い時期から英語をはじめればいい、と言われるが、常識を働かせて冷静に考えれば、世間のこういった議論がおかしい、ということを、英語教育学の専門家の著者が述べた本。「常識が停止するとき」、「常識が通じなくなるわけ」、「常識を取り戻すために」という3章構成で書かれている。エッセイ形式なので、ちょっとした読み物として誰でも読める。
     章を読み進めても、どれも当たり前のこと、という感じがするが、それがこの本の狙いなのだと思う。
     個人的には、p.130の「今読んでいる文章を何のために読んでいるのか、読んでそれから一体何をするのかをはっきりと生徒に自覚させることが、リーディングの指導では一番大切だ」という箇所がとても印象的だった。(12/06/17)

  • 加熱する英語教育熱を冷ますために、冷静に分かりやすく一般向けにエッセー形式で書かれている。応用言語学は一応専門分野でもあるので、個人的には出展・ソースが少なくて少し物足りなかったが、一般向けには良いと思う。

    また、普段から英語教育に関わりのない人だけでなく、英語教育に関わる人にも訓戒として一読の価値ありと思う。

  • 日本人の英語に対するあこがれを、当たり前のことを教えながら正しい方向へと導こうとしている本である。

    エッセイのように書いてあるうえにページ数も170ページ弱なのでスラスラ読めてしまう。

    英語ができないと行き詰ってしまったらこの本を読むといいかもしれない。

  • エッセイだから読みやすい。
    「英語が全て!」と思ってる人はこれ読んで外国語学習の常識をもう一回見直そう。

  • おもしろかった!
    英語教師として日ごろ感じているもや~っとしたことを
    言語化していただいたという感じでしょうか。
    「そうそう、そうなのよ!」
    と何度膝を打ったことか。
    文科とか中教審とか、その辺りで外国語教育に関わってる方にぜひぜひ読んでいただきたい。

    一般的な日本人と英語の距離感をよくあらわしてるなーと思うエピソードは
    ある女子学生の
    「英字新聞はお尻に敷けない」
    発言です。
    いや、古新聞じゃん、敷いとこうよ、地べたに座るなら。

  • 楽しくさくさく読むことができた。学校での英語学習時間量について、決して多くはなく、そう簡単に外国語を学習できるものではないということが、部活動の練習時間との比較を用いて説明されていた。また、日本人が英語ができないという意見に対し、少ない時間の割りにできているのでは、というこれまでとは異なった目線でとらえていた。また、「自己紹介が英語で流暢にできないのは、英語だからではなく、日本語でもそれほど流暢にはできない。日本語でできないことは英語でもできない。」といったごく当然のことを、過熱心理により見えなくなっているのでは、という指摘もあった。全体として、英語教育に走る社会に対して、丁寧に反論していた。また英語教育の「ニーズと教育方法のミスマッチ」にも言及しており、なるほど、と思うところも多かった。(ニーズの分析が不十分……等)

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