昭和の車掌奮闘記 - 列車の中の昭和ニッポン史 (交通新聞社新書007)

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  • 交通新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784330088099

感想・レビュー・書評

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  • 国鉄最後の日をもって退職ということは、昭和62年なのだろう。それは昭和も終焉を迎える頃である。鉄道の車掌というのは、鉄道マニアにとって趣味と実益を兼ねた職業だと著者も言う。自分は車掌よりも運転士に憧れた。でも、旅好きでもあり、当時の車掌の乗務や、行った先での乗務間合を見ると、青森から九州・西鹿児島までを守備範囲としていた著者の生活は羨ましい。しかし、どんな職業でも嫌な面、過酷な状況はある。それを乗り越えられたのは「好き」ということか。

  • この書籍では、著者が車掌をしていた時の見聞をしていた事を書かれています。

  • もはや昭和後期の鉄道もノスタルジーの対象として語られる時代になりました。オールドテツの中には、「昔は良かつた」的に懐かしむ人も多いのです。
    しかし。
    本当に昔の鉄道事情は良かつたのか? 甚だ疑問に思ふところです。切符の入手難、威張り散らす駅員、冷暖房の無い車内、不衛生なトイレ、固くて座り心地の悪い座席、狭くてプライバシーの無い寝台......
    常識的に考へたら、現在はあらゆる点で飛躍的に改善されてゐると存じます。さはさりながら、表面上の快適さだけでは語れない、人と人とのつながり、一体感とでも申すものが消えたことも事実であります。

    さて、『昭和の車掌奮闘記』の著者・坂本衛氏は、少年時代からの鉄道好きが高じて国鉄に就職した人。その期間は1953(昭和28)年-1987(昭和62)年といふから、坂本氏の職歴はまさに国鉄(日本国有鉄道=昭和24年から昭和62年まで存在)の歴史そのものと言つて過言ではありますまい。また、国鉄の車掌が主人公の傑作漫画『カレチ』は、坂本氏の著書を参考にしたと聞いてゐます。

    第一章で著者自らの生ひ立ちから国鉄就職までを語ります。連結手ではなく踏切警手になれと勧めた父君は、まことに慧眼の持ち主でした。
    第二章では、昭和35年に念願の車掌となつた著者の奮闘ぶりが窺へます。車掌の勤務体系や、普段車掌が持ち歩いてゐる鞄の中身を公開してゐます。
    第三章は、昭和43年に専務車掌に昇格した後の、さまざまなトラブル、エピソードが語られます。日本海縦貫線の勤務が多い為、度々雪には悩まされたさうです。窃盗犯との対決や(必ずこちらが勝つ)、死体を運んだ「だいせん」の話などは臨場感たつぷり。
    第四章は「専務車掌の楽しみ!?」と題して、当事者にとつては深刻だが傍観者はニヤと笑つてしまふ話、大人向けの少し色つぽい話などが詰まつてゐます。現在ではセクハラと言はれさうな話も。
    第五章は今でこそ話せる失敗談の数々を披露。表題通り「けしからん話」もあります。
    第六章では、専務車掌(といふか、坂本氏本人が)勤務の合間にどんなことをしてゐるのかを開陳してゐます。
    最後の第七章は「あとがきに代えて」。坂本氏にも退職の日が訪れます。最終乗務は「雷鳥」でした。さすがに少ししんみりしますね。文章を書くやうになつたきつかけも記されてゐます。

    一般的な昭和の鉄道事情を知るための本ではなく、あくまでも坂本氏個人の思ひ出話が中心であります。それを承知で読めば、面白い一冊と申せませう。肩が凝らない、旅のお伴としても適してゐます。
    では夜も遅い時間になりました。ご無礼いたします。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-595.html

  • 戦後復興期の昭和28年に国鉄に入社し、昭和35年に
    念願の車掌となる。その後、専務車掌に昇格し、退職す
    る昭和62年まで「一車掌」として働き続けた著者によ
    る列車の中の昭和史。戦後復興期から高度経済成長時代
    を経て昭和の終焉へと至る時代の涙あり、笑いありの体
    験記録。(2009年刊)
     はじめに
     第一章 少年期から国鉄就職まで
     第二章 普通車掌編
     第三章 専務車掌編
     第四章 専務車掌の楽しみ
     第五章 けしからん話
     第六章 乗務間合いの過ごし方
     第七章 あとがきに代えてー最終乗務の日

    面白くて読みやすい。文書のテンポが良いせいかサクサ
    クと読める。氏の著書は漫画カレチの参考文献にもあげ
    られているが、仕事愛に溢れた内容である。
    氏は中学校卒業後、工場で働きながら定時制高校へ通い、
    18歳の暮れ、見習いとして国鉄に入社したという。
    読んでいて感じたのは、社会全体が貧しかったと思うが、
    そこそこ巻き返す事が可能な時代だったのではないかと
    いう事である。(社会格差はあっても、絶望しなくて済
    んだとでも言おうか、活力が溢れていた感じがする)

    個人的には、客室専務車掌の夏服姿のスマートさが今で
    も思い出される。当時は走っていた国鉄色のL特急、決し
    て乗り心地の良いものではなかったが、旅情を掻き立て
    たものです。

  • 車掌一筋の筆者による回顧録。生々しいエピソードと昭和の車掌の気概が垣間みえ、面白く読める。
    「英語はなあ、口でしゃべるやない。心臓でしゃべるんや。」なんてのも、現場で実践していたからこそ出るセリフ。今でも通用するよな、これ。

  • 国鉄時代の名物車掌、坂本衛氏のエッセイ、気軽に読める本として最高。
    直接あったお話したが、物腰も柔らかく一生現役車掌ということで、これからも執筆していくとのことでした。
    また、模型の世界でも有名な方で、氏の作り出す作品はまさに神業です。

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