北の保線 - 線路を守れ、氷点下40度のしばれに挑む (交通新聞社新書033)

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  • 交通新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784330232119

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  • この書籍は、北国での鉄道路線の保線などの解説などです。

  • 鉄道の保線については、かつて『新幹線 保線ものがたり』といふ本を取り上げましたが、本書は新幹線のやうな高速鉄道ではないけれど、雪国の鉄道路線の保線作業を中心に解説したものです。

    副題に「氷点下40度のしばれに挑む」とあります。そんな厳寒は経験がありません。かつて釧路市内で-27度の中、市街をうろちよろした事があります。釧路駅の待合室で午前五時の札幌行夜行列車を待つてゐたところ、最終列車の発車とともに、駅員君たちが待合室をを締めてしまつたのです。
    おかげで外へ追ひ出され、駅前に出ると-27度だつた訳。かうなると寒いよりも痛いのであります。たつた一軒営業してゐた焼きそば屋(実態はうらぶれたスナック)に逃げ込みました。常連客しか出入りしないであらう店であることは承知の上で入店したのです。案の定入店するや否や「こいつは誰だ?」といふ視線を従業員・客から浴びたのですが、寒さには勝てずカウンター席に座つたのであります。

    くどくど述べましたが、-27度でも寒すぎたのに、-40度なんて想像もつきませんね。温暖な愛知県在住でよかつた。
    そんな状況下で保線作業をしてゐる人たちの苦労話とでも言ひますか。通常の状態でも降雪一日一米(メートルだよ)、前述のやうに-40度での寒さに耐える作業、危険を伴ふ除雪作業の苦労などがあります。北海道でも時速130キロで驀走する特急があるのだから、それに耐えうる軌道状態を保持せねばならぬのです。
    更に!災害や事故なんかが起きると、その苦労は数倍。まともな状態に復旧させる作業はまさに待つたなし。とにかく早く運行再開させねば! 

    そんな苦闘を続ける作業員。面白かつたのは「作業歌」。かつては単調な作業の苦痛を和らげる為か、「作業歌」なるものを口ずさみながらエンヤコラとやつてゐたさうです。次第に歌詞が卑猥なものに変化したため、国鉄の保線課長から注意を受けたとか。
    しかしその後はレコードまで作成したのです。A面は「保線魂の歌」、B面は「鉄道保線研究会、タンピング音頭」(タンピング=つき固めの意ださうです)で、A面の歌手は、なんと「イヨマンテの夜」の伊藤久男さん。
    それから、巻末に収められた北海道鉄道唱歌の歌詞。ほとんど知らず、中中面白いと存じました。

    著者の太田幸夫氏は、実際に小樽で保線区長を務めた方であり、記述にも臨場感いつぱいで、テツにはお薦めの一冊と申せませう。あ、勿論非テツの方もどうぞ。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-772.html

  • 保線に係る技術的な話から書き起こされていて、普段目にしている自宅付近の保線作業の理解が進んだ。継目のないロングレールの伸縮調整機能に得心。凍上による地盤隆起への対応は北国ならでは。副題にある「氷点下40 度のしばれに挑む」記述は物足りなく感じたが、厳冬期への対応を中心に一年が回る冬の保線員の苦労が伝わってくる。

  • 北海道での保線現場の実情に迫る一冊。
    レールの話なども脇道にも触れる。

  •  JR北の不祥事が明らかになるにつれ、改めてこの本を読み返してみると虚しくなる。

     北海道で保線業務に携わってきたという誇りは伝わって来る。

     一方で、人手不足、それに伴って技術が継承できない、という事情はあるかも知れないが、そういった土壌を作ってしまった、とまでは言わなくとも、片棒を担いだのはこの人たちなんだよな……

     著者が不祥事を本当にどのように思っているのかが気になる。一度讀賣新聞に記事が載っていたが、いかにも紋切り型な感想だった。

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著者プロフィール

グラフィックデザイナー。太田幸夫デザインアソシエーツ代表。多摩美術大学・前教授。非常口サインを世界標準の記号にするなど、ピクトグラムデザインにおいて国の内外で活躍。

「2020年 『改訂版 NEWマーク・記号の大百科 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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