犬は「びよ」と鳴いていた: 日本語は擬音語・擬態語が面白い (光文社新書 56)
- 光文社 (2002年8月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334031565
作品紹介・あらすじ
「私が一番最初にひっかかったのは、平安時代の『大鏡』に出てくる犬の声です。「ひよ」って書いてある。頭注にも、「犬の声か」と記してあるだけなのです。私たちは、犬の声は「わん」だとばかり思っていますから、「ひよ」と書かれていてもにわかには信じられない。雛じゃあるまいし、「ひよ」なんて犬が鳴くかって思う。でも、気になる。これが、私が擬音語・擬態語に興味をもったきっかけでした。」-英語の三倍・一二〇〇種類にも及ぶという日本語の「名脇役」擬音語・擬態語の歴史と謎を、研究の第一人者が興味深く解き明かす。
感想・レビュー・書評
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著者は擬音語・擬態語の研究者である。題名の犬の鳴き声の「びよ」に惹かれてこの本を買った。江戸時代の途中までは、日本人は犬の鳴き声を「びよ」と聞いていたらしい。まあ、英語圏の人間は「バウワウ」と聞こえるらしいから、さもありなん。フィリピンの子に聞いてみるとフィリピン人は英語が堪能なので、やはりバウワウと聞こえるらしい。それにしても、英語の擬音語・擬態語が約350語に対して日本語は役1200語あるというから面白いが、何故なんだろうな。その辺は書いていないが、主に動物に関する擬音語・擬態語の変遷について詳しく書いてある。後半はちょっと間延びしたかんじかなあ。平安時代の今昔物語の擬音語・擬態語のうち生き残っているのが6割近いのは意外なのかそうでないのか。和歌に掛詞として擬音語・擬態語が結構たくさん使われているのは、新たな認識だった。
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日本の擬音語・擬態語についての研究と解説。
第一部 擬音語・擬態語の不思議
過去&今昔物語の中からの用例、その変化と寿命。
掛詞での楽しみ。擬音語・擬態語辞典の現状と提言。
第二部 動物の声の不思議
犬・猫・鼠・牛・馬・狐・ももんが・ツクツクボウシの
声の用例と歴史、変遷。
擬音語・擬態語の索引有り。
日本人として何気なく使っている擬音語・擬態語について、
膨大な資料から調べ、詳しく、分かり易く説明しています。
長い時代の変遷の中で、消滅したもの有り、今も残っているもの
有り。また、現在とはかけ離れた言葉有り。
例えば、犬の「ひよ」という鳴き声。
それは、濁音表記が無かった時代の言葉。誤記もある?
馬の声が「いいんいいん」なのはハ行子音が異なっていたから。
鼠も雀も「シウシウ」。クツクツボウシがツクツクボウシに。
掛詞で残った言葉など、興味深く読めました。
それにしても昔の人々の生活には、動物・・・自然が身近にあり、
その声や音が現代よりも繊細に伝わっていたのでしょう。
豊かな擬音語・擬態語の表現が現在にも至る、日本語の楽しさを
伝えてくれる内容でした。 -
#2871ー166
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擬音語擬態語は6割近くが現代まで生き残っている。犬の鳴き声を「びよ」と聞くか「わん」と聞くか、は、単に聞く人の耳によるものではなく、野犬が多かった時代から飼い犬が多い時代へ、犬との付き合い方が変化し、そもそもの犬の鳴き声が穏やかなものに変化したもの。狐のこんこんくゎいくゎいも同様に、聞き方ではなく狐の声に2種類があったこと、などが私としては新しい視点で面白かった。あとは文学として、掛詞に多く取り入れられているのが面白い。柏木のねうねうだけでなく、ちちちとばかり鼠茸かな、や、つくづく憂し、など。日本の文学は洒落っ気に満ちている。
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何気なく日常で使う擬音語・擬態語の歴史を紐解く。
最後にそれらを意識したのは、10年前に小学校で宮沢賢治の『やまなし』を扱った時だろうか。「くらむぼんはかぷかぷわらったよ」の「かぷかぷ」が今でも忘れられない。
馴染みのないこの擬態語ですら、未だに根強く記憶に残っている。
擬音語・擬態語の豊富さは日本特有であり、外国人がニュアンス含め完璧に理解することは困難を極めるだろう。しかし、我々日本人は細かなニュアンスまで共通認識を持つ。
というのも、擬音語・擬態語の53%は900年間受け継がれているらしい。もはや我々のDNAとも言える。
先日まで海外を放浪していた僕はそのDNAを持ちつつも、日本文化に疎いことを思い知らされた。恐らく我々は思っている以上に自国について知らない気がしている。
それは海外で日本人が日本人たるアイデンティティを失うことに等しい。
そんな中、本書は我々が無意識的に持つ独特の感性、すなわち一つのアイデンティティのルーツを探るヒントを与えてくれた。
今後は擬音語・擬態語に着目しながらSNSや会話することになるだろうし、日常に一つ彩りが添えられたような気がする。
※後半は具体例が多く、流し読み。前半の好奇心を刺激する勢いを失っていたところは少し残念。 -
とても面白い
後半は動物を取り上げてはその例を並べていく形になるので、全部通して読むのはよほどでないと、ちょっと退屈にはなるものの、新しい知の世界で面白かった
類書のない知というのがまだまだいっぱいあるのだ -
日本語の擬態語、擬音語は英語の3倍、1200種類もあるそうだ。へー。
擬音語と擬態語にも特定の時代にだけよく使われていたものがあること、今昔物語集が擬音語や擬態語の宝庫であること、など興味深い。 -
「「私が一番最初にひっかかったのは、平安時代の『大鏡』に出てくる犬の声です。「ひよ」って書いてある。頭注にも、「犬の声か」と記してあるだけなのです。私たちは、犬の声は「わん」だとばかり思っていますから、「ひよ」と書かれていてもにわかには信じられない。雛じゃあるまいし、「ひよ」なんて犬が鳴くかって思う。でも、気になる。これが、私が擬音語・擬態語に興味をもったきっかけでした。」―英語の三倍・一二〇〇種類にも及ぶという日本語の「名脇役」擬音語・擬態語の歴史と謎を、研究の第一人者が興味深く解き明かす。」
目次
第1部 擬音語・擬態語の不思議
・擬音語・擬態語に魅せられる
・擬音語・擬態語のかたち
・擬音語・擬態語の寿命;擬音語・擬態語の変化
ほか
第2部 動物の声の不思議
・昔の犬は何と鳴く
・ニャンとせう―猫
・チウき殺してやらう―鼠
・モウモウぎうの音も出ませぬ―牛 ほか)
著者等紹介
山口仲美[ヤマグチナカミ]
1943年静岡県生まれ。埼玉大学教養学部教授。文学博士。お茶の水女子大学文教育学部国語国文学科卒。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了 -
現代にはないオノマトペ
・ニココ(ニヤリ)
坊さんが助けた女を犯そうとすると、
その正体は師の僧でニヤリと笑った
・エブエブ(ゲボゲボ)と吐迷(まどひ)ける
鯰を父の生まれ変わりと知って食べて、
骨が喉に刺さって死ぬ
電車のガタンゴトン 牧歌的
擬音語・擬態語は流行語と思われがちだが違う
平安時代のオノマトペの半分以上は現代まで残っている
オノマトペのミクロの変化
'70年 木造建築のガタピシ→'00年 電子音・機械音