切腹 日本人の責任の取り方 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334031992

作品紹介・あらすじ

『会津藩家世実記』『加賀藩史料』などの一級史料に散見される数多の切腹。そこから見えてきたのは、武士社会の特異なあり方と、現在もなお続く、日本人固有の「責任の取り方」であった。本書では、史料に埋もれた多くの"ハラキリ逸話"に光を当て、誇り高く潔い、しかしどこか辛くて切ないサムライの生き様を探索する。

感想・レビュー・書評

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  • <目次>
    はじめに ―四百三十一人の切腹絵巻
    第一章 ハラキリ略史
     第一節 切腹の来し方
     いつ、誰が腹を切り始めたのか/なぜ”腹”なのか?/真心は腹のなか/武士の処罰は残材罪、抵抗する者は謀殺/切腹はあくまで自主的なもの/敵ながらあっぱれな武士には切腹を/武士身分と切腹刑の確立/徳川幕府による切腹刑の始まり/武士社会の秩序化
     第二節 殉死と切腹
     殉死の始まり/あの世の主君と一緒になりたい/殉死ブームの到来
     第三節 殿中刀傷事件
     江戸城の流血沙汰/四十六士の切腹とさらなるハラキリの美化/しきたりとなった「乱心」
     第四節 絶望から逃れる切腹、矜持をかけた切腹
     切腹者五十二名!語り継がれる薩摩義士伝/真のサムライ、平田靭負の犠牲/命より大事な武士の面子
    第二章 罪と罰と切腹
     第一節 喧嘩両成敗による切腹
     天下の御法、喧嘩両成敗/覚えのない恨みで斬り殺される/理由はどうあれ、生き残ったほうは切腹/喧嘩は武士の華/大評判となった九十郎の切腹/気丈なる武士の母/理不尽な強襲に対処する/武士と町人の喧嘩
     第二節 刑罰としての切腹
     思ったほど多くない旗本の切腹刑/切腹刑の意外なカラクリ/切腹できない臆病な旗本には服毒強要/収賄に罪のなすりつけ、加賀の悪徳役人/酔っ払って切腹!?/ピンハネに横領の外道武士/心神喪失者の行為も罰する江戸の刑法
     第三節 切腹か、成敗か
     武士の成敗/それでも成敗された加賀の武士/見せしめとして武士を成敗/組織人間に成り果てたサムライ
    第三章 なんとも切ない切腹
     第一節 藩に見捨てられた武士たち
     事の始まりは、武士の自尊心/事なかれ主義の決断/部下をあっさり切る上司/江戸藩邸に起こった批判/徒となった理性的判断
     第二節 エリート藩士の大誤算
     横目が金貸しの真似事/金が返せず自殺未遂/切腹に見せかけて殺害/おかしな死体/形式だけの取り調べ/本格的な■■が始まる/たった三両のために切腹
     第三節 長人に便宜を図って割腹
     江戸なのに上方払い/訴えられて絶体絶命/町人のために働くは、不忠不義なり/紺屋のためを思った親切な行動/たかが助言が切腹相当の罪/至極まっとうな西郷頼母の主張
     第四節 政策を失敗させた輩は切腹
     誰もが認める秀才、九八郎/九八郎、財政政策を立案す/あまりにも厳しい判決/理不尽であろうとも結果がすべて
    第四章 御家騒動と切腹
     第一節 加賀藩長老の御家騒動
     長家の内紛/一門の反映が讒言を呼ぶ/君、君たらざれども、臣、臣たり/悲しき忠臣、孫右衛門/孫右衛門の一門は根絶やしに/孫右衛門の真意
     第二節 薩摩藩の御家騒動
     十三名が切腹した「文明朋党崩れ」/勢力を広げる近思録党/重豪の逆鱗に触れる/遠島という名の切腹/切腹強要の後始末/清水源左衛門、謎の切腹/他の近思録党も同様の処分/自主的に切腹した者/残った大物、横山主税の切腹/近思録党はことどとく処罰/史料に残らぬよう証拠隠蔽工作
    第五章 藩主と家臣―切腹に潜む臣の道
     第一節 武士の命は主君のもの
     藩主の切腹命令を拒んだサムライ/若殿様のためならば/藩主という存在の重み/切腹はおもしろいはずがない/川端の変死体/疑わしきは罰せよ
     第二節 飼い馴らされた武士ども
     武士とは云は主君のために死ぬ事と見付けたり/まな板の上のサムライ/武士社会のヒエラルヒー/長州藩を救った三家老/藩の意思決定/利用され続けた「切腹」という隠れ蓑
    おわりに―くり返される切腹
    切腹の日本地図
    切腹総覧
    あとがき
    引用史料
    引用および参考文献
    【コラム】
    武士の身分と切腹様式
    ”ハラキリ”を世界に知らしめた『モンタヌス日本誌』
    西欧人よ、日本男子の割腹を見よ!

    ***

    『武士道とエロス』を読んだことがあるのですが、こちらを見たことがある方にはその発展版、という感じ。江戸時代がやはりメインになってしまうので、少し触れられていたけど、どうせなら日本最初の切腹とか、その辺の紹介がもうちょっとページ割かれてても良かったんじゃないかなーと思いました。

  • 生々しいデータにはぞっとするところもあるが、まさに武士の責任の取り方に関して、「切腹」の意味をとことん追求している。自己の責任というケースは多々あるが、組織のために切腹させられたり、時の事情として切腹を選ばされたりと、組織人として生きるには、やるせない気になる。日本人的な潔さは、日本人にしかわからないような気もする。

  • 一つ一つの事例は興味深いが、筆が軽いので詰まらない本になっている。歴史小説のネタ本としては有益か。また、ここまで書くのなら大東亜戦争から三島に終焉する切腹の歴史にまで言及してほしい。

  • 切腹の概念の時代変遷とか、興味深い切腹のエピソードとか。
    どれもあまり「痛い」と感じる記述ではなく、痛いのが嫌いな僕にはぴったりの本だった。
    痛いのが嫌いなのにこんな本を手に取るなよ、と突っ込みを入れたそこのあなた!あなたは正しい。

  • 主命により死を賜る江戸時代の武士たち。制裁的な措置ならばともかく、理不尽な理由であってもプライドをもって命をなげうつ事例が多数あげられています。この時代に生まれついていない幸運を喜びたくなります。

  • 切腹、切腹、切腹!様々な切腹話。これもこの時代の一部でしかないだろうけど、こういう話を読みつつも、行為責任は必然ではないなというか、秩序や刑罰の在り方について考える。

  • 切腹の処され方を、一級史料から事例を上げ説いた本。武士の世の「君主絶対論」を根底として上げているが、現代(発行の2003年当時)との結びつけ方はいささか乱暴かな。それでも面白かった。

  • 武士の責任の取り方について、多くの事例を紹介している。切腹の美意識や哲学のような側面ではなく、「何故、腹を切る羽目になったのか」を、史実の具体例を元に考察する。赤穂浪士のように、有名で分かりやすい例だけではなく、信じられない理由や理屈で、しかも、本人は納得して腹を切る武士がたくさんいた事に驚いてしまう。単純に罪と罰で割り切れるものではなく、名誉・恩情・忠義・責任・策略などが複雑に絡み合う構図が見られ、極刑(処刑)を赦して切腹を認める場合もあれば、暗殺や殺害事件を切腹としておさめるケースもあったという。どんな場合でも主君の切腹の命は絶対だし、時には名誉なことなのだが、やはり武士とて生身の人間。本当は切腹したくないのが本音らしく、臆病者の下級武士は、毒玉も渡す図らいもあったらしい。切腹なる風習を、現代人の目で非文明的と見るのは簡単だが、人権概念の確立以前、武士の命は主君のものという価値観が何百年間も続いていた頃の話だ。

  • 平成23年6月6日読了。

  • [ 内容 ]
    『会津藩家世実記』『加賀藩史料』などの一級史料に散見される数多の切腹。
    そこから見えてきたのは、武士社会の特異なあり方と、現在もなお続く、日本人固有の「責任の取り方」であった。
    本書では、史料に埋もれた多くの“ハラキリ逸話”に光を当て、誇り高く潔い、しかしどこか辛くて切ないサムライの生き様を探索する。

    [ 目次 ]
    第1章 ハラキリ略史(切腹の来し方;殉死と切腹 ほか)
    第2章 罪と罰と切腹(喧嘩両成敗による切腹;刑罰としての切腹 ほか)
    第3章 なんとも切ない切腹(藩に見捨てられた武士たち;エリート藩士の大誤算 ほか)
    第4章 御家騒動と切腹(加賀藩長家の御家騒動;薩摩藩の御家騒動)
    第5章 藩主と家臣―切腹に潜む臣の道(武士の命は主君のもの;飼い馴らされた武士ども)

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著者プロフィール

1957年、岡山県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。文学博士。東京大学史料編纂所教授などを勤めた。1992年『江戸お留守居役の日記』で第40回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。著書は『寛永時代』(吉川弘文館)、『日本史の一級史料』(光文社新書)、『歴史をつかむ技法』(新潮新書)、『流れをつかむ日本の歴史』『武士の人事』(角川新書)など多数。NHK Eテレ「知恵泉」を始め、テレビやラジオにも数多く出演した。2020年逝去。

「2022年 『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 全16巻+別巻4冊定番セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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