哈日族 -なぜ日本が好きなのか (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334032487

作品紹介・あらすじ

「哈日族」とは日本発の流行ファッションや音楽、キャラクターグッズ、テレビゲーム、ドラマ、マンガなどが好きでたまらなく、「日本を模倣」する台湾の若者を指す。当初、ブームと思われていた「哈日族現象」は十年以上に及ぶ。一方、李登輝・前総統に代表される、日本植民地時代に日本語教育を受けた世代には日本に親近感を抱く人が多い。両世代に繋がりはあるのだろうか。さらに、哈日族現象は韓国、香港、シンガポール、中国沿岸地区など、経済発展が目覚ましいアジアに広がりを見せている。哈日族とは何者か?哈日族現象から読める台湾・日本・アジアの意外な素顔。

感想・レビュー・書評

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  • 本書では、「哈日族(ハ-リ-ズ-)とは日本発の流行のファッションや音楽、キャラクターグッズ、テレビゲーム、漫画などが好きでたまらなく、日本を模倣する台湾の若者を指す。」という冒頭から、哈日族現象の話が展開された。台湾では、日本のドラマやアニメが放送され、日本語の単語やフレーズもよく使われる。電子商品から食べ物に至るまで、日本のものであふれている。日本が好きな人が多いようだ。なぜ、台湾の人々が日本に対して、関心を持っているのか、なぜ、哈日族現象は数年間に及ぶのか、著者はいろいろな観点から分析した。

    哈日族現象を語る上で、歴史を抜いて話すことはできない。1945年まで、50年間、台湾は日本に植民地支配されていた。その後、国民党の独裁体制時代が入り、日本の音楽や映画などの輸入が禁止された。1990年代、映像技術と民主化が進み、自由に輸入された。2000年代から、ドラマが急に人気が出て、台湾での哈日族現象が起きはじめた。その原因として、台湾と日本は、文化的にも、地理的にも、社会の発展レベルでも近かったといった複合的な要素が考えられる。ドラマ以外でも、日本のアニメをよく見る人が増え、関連商品が売れ、台湾の消費市場に大きな影響を与えた。その哈日族現象について、肯定する立場、肯定しないが「個人の自由」として、否定もしない立場、「外国崇拝」「売国奴」だと否定する立場、さまざまな反応があるが、哈日族現象は数年間に及ぶ。近年では、台湾では日本の流行文化から、韓国に関心が移りつつある。

    本書は、著者が台湾に住んでいた期間の観察の結果のほか、調査の結果と文献を参考にしながら、歴史や政治や近年のグローバル化などの観点から哈日現象を分析して書いたものである。台湾と日本の関係が歴史的に、また文化的に深く、数ページだけで説明できないが、台湾人である私の立場から見ると、本の中で書かれた内容が基本的なものであり、客観性もあると思う。台日関係を知りたい人はこの本を勧める。

  • 哈日族(ハーリーズー)の台湾人大学生がつい最近日本に旅行して殺害されたニュースがあった。そのときちょうどこの本を読んでいたわけだが、日本は安全だという神話も、そう長くは持たないだろうなあ。いや、もう崩れてるけどね。
    さて、台湾も、朝鮮半島も、過去日本の植民地だった。なのに、戦後、日本にそれぞれの国民が抱く反応は全く異なってる。韓国では、戦前を知る人たちは、ほとんどが反日なのに、台湾の人々は圧倒的に親日派である。同じ植民地であったのに、なぜこれほどまでに日本の印象が変わってくるのか。それは、台湾がずっと植民地だったことによるらしい。
    戦後、中国国民党が台湾にはいってきて、形式的には、植民地ではないが、実質的には、植民地支配と代わらない政策を行い、徹底的な反共政策、中国語の強制などを行った。したがって、台湾の国民は、日本の植民地時代と中国国民党の政策を相対的に評価できるようになり、そして、現政府の反旗という作用も働いて、親日派が多くなったということらしい。ただ、今の台湾の若い世代は、そういった政治的・歴史的な背景からではなく、グローバリゼーションの広まりの一環としての記号的に日本文化を摂取しているにすぎず、同じ親日でもその世代間に大きな違いがある。つまりは、より浅薄で流動的な価値観の共有こそが、この「哈日族」という現象であり、台湾だけでなく世界的な現象となりつつあるのも、皮相的であるからこそともいえる。それはつまり、「日本」だから、というのではなく、韓国やその他の国であっても良いのである。それだけ、日本と台湾の文化の垣根が低くなったということであり、それは、反日が掲げる文化的侵略などというものではなく、グローバリゼーションの流れに台湾も乗っているということなだけなのだ。
    最近、そういえば日本に「哈韓族」が増えてきてるなあ。

  • 04年5月の本。台湾の日本サブカルチャーブールを探ったもの。日本植民地時代からの文化開放までの歴史、アジアの中での台湾の位置、CATV隆盛→香港スターTV・JETなどCSルートを経た配給開拓展望、台湾国民意識調査などが切り口。根本は「台湾が“独立国”であった歴史の無い事からくる国民性」と「日本文化の総合力」か。参考文献リストは多謝。

  • 台湾で顕著な「哈日」(日本大好き)現象を考察した一書。

    著者もエピローグで認めているように、先人の研究に依拠した部分が多いが、それゆえに、台湾の哈日族の一端が、わりと客観的に理解できるのではないかと思う。

    哈日の流行、そして定着原因の重要なファクターが、ポップカルチャー、特にテレビドラマであることが、本書より理解できる。また、日本語学習の有力な動機のひとつが、テレビドラマを理解したいと言う欲求であるということは、ワタシ自信の見聞とも一致する。外国語学習の欲求が、ソフトパワーによっていることの証左でもある。

    著者・酒井氏の真骨頂は、文化帝国主義や親日派に言及した第4章・第5章だと思われる。この側面は、台湾にしばらく住んで、台湾人といろいろ話をすれば、少しずつわかってくると思われるが、日本にいるとバイアスがかかって、わかりづらいのだ。バイアスと言うのは、日本の過去の植民地統治を全否定するメンタリティと、その逆で、全肯定してしまうメンタリティのことだ。著者の視点は、このどちらにも偏しない、台湾本土派の視点から、問題をとらえている。

  • 台湾の事となるとどうしても、日本統治時代のことを擁護する発言と、植民地としてきた悪い日本という真逆の発言があり、日本人の私としてはつい前者の意見に寄りかかりがちで、親日の台湾に好感を抱く反面、外省人として大陸からきたの人々に反感を持ってしまう。

    その中でこの本は本当にフラットに、ニュートラルに、真ん中からの意見があり、自分の中には無かった視点で書かれた著者の意見がストンと腑に落ちた。
    第1章で1996年、著者がラトビア人に聞いた話は分かりやすかった。(ラトビア:バルト3国 , ドイツとロシアに支配されてきた歴史がある。)

    台湾=親日、或いは、台湾=1つの中国、みたいな簡単な事ではなく、今も刻々と変わり続ける世界の中で若者は何に影響を受けるのか、そしてその裏で大人の事情はどう働きかけているのか。
    これは台湾だけでなく日本やその他の国も同じ事が言えるだろう。

    2004年に出版されているので、今は大分様子が変わっているのではないかと思う。
    情報社会となり、政権も変わり、米国の発言や対応も変わってきた今、台湾の人のアイデンティティはどの様に変化しているのかも知りたい。

  • [ 内容 ]
    「哈日族」とは日本発の流行ファッションや音楽、キャラクターグッズ、テレビゲーム、ドラマ、マンガなどが好きでたまらなく、「日本を模倣」する台湾の若者を指す。
    当初、ブームと思われていた「哈日族現象」は十年以上に及ぶ。
    一方、李登輝・前総統に代表される、日本植民地時代に日本語教育を受けた世代には日本に親近感を抱く人が多い。
    両世代に繋がりはあるのだろうか。
    さらに、哈日族現象は韓国、香港、シンガポール、中国沿岸地区など、経済発展が目覚ましいアジアに広がりを見せている。
    哈日族とは何者か?
    哈日族現象から読める台湾・日本・アジアの意外な素顔。

    [ 目次 ]
    第1章 哈日族前史
    第2章 お手本は日本のドラマ?
    第3章 東京シンデレラめぐり合い―アニメから雑誌まで
    第4章 哈日現象は、文化侵略か?
    第5章 親日派、崇日派、反日派
    第6章 哈日族とアジア・グローバル化の未来

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    [ 参考となる書評 ]

  • 台湾について知りたくて読書。

    参考分文献が豊富だと思う。

    哈日族現象は、台湾だけではなく、タイ、中国都市部、韓国などもにも規模は小さいながら発生している。
    著者は、過去の日本統治との関連性は低いと述べている。

    台湾の戦後の文化史を知ることができる。1944年に日本語を話す人の割合が71%という統計に驚いた(低いという意味で)。著者の指摘どおり、戦後の国民党支配への幻滅、抵抗から日本語が浸透したとしたら何とも皮肉な話である。

    そもそも発信元である日本がサブカルチャー自体を軽視する風潮があるように思う。もっと、地位向上など見直してみてはどうかと思う。

    日本は日本へ親近感を持ってくれている国や地域へ力を注いでほしい。
    台湾へもさらに注目し、大切にしてほしい。パラオ、タイ、インド、トルコなど身近に親日的な国は多い。

    2010年10月7日に台湾にユニクロ1号店がオープンしたことを日本のマスコミは報道したのだろうか。しかも、ユニクロ史上最大の開店前2,500人以上待ちという大盛況を・・・・・。

    読書時間:約55分

  • 後日

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著者プロフィール

1966年石川県金沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、台湾大学法学研究科修士課程修了。共同通信社記者を経て、台湾・新境界文教基金会専門研究員。現在、公立小松大学国際文化交流学部准教授。主な著書に、『台湾入門 増補改訂版』(日中出版)、『日本のアニメはなぜ世界を魅了し続けるのか―アニメ聖地と地方インバウンド論』(ワニブックスPLUS新書)、『この国のかたち2020』(エムディエヌコーポレーション)等。訳書に李筱峯『台湾・クロスロード』(日中出版)、陳明仁『台湾語で歌え日本の歌』(国書刊行会)等。

「2020年 『知られざる台湾語文学の足跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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