となりのカフカ (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334032647

作品紹介・あらすじ

カフカ初級クラス・十二回講義。しめくくりは修了祝いのプラハ旅行つき。

感想・レビュー・書評

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  • 池内紀先生のカフカの本。
    カフカについての色々な角度からのアプローチ。
    作品の裏話を聞いたようなちょっと得した気分。

  • 本書はいわば,カフカの “トリセツ(取扱説明書)” である。


    大きな目にそげた頰,長い脚に痩せた身体。
    見るからに根暗な雰囲気を醸し出し,
    やや恐ろしくもある。

    そして,それは見た目だけでなく彼の書く小説も同様,
    暗く,奇妙なものが多かった。

    朝,目を覚ますと虫になっていた…。
    あるいは,朝起きると,いつの間にか逮捕されていた…。

    不条理すぎる書き出しから始まる物語を,カフカは淡々と書き綴る。


    カフカはずっと部屋に籠りきりで小説を書いていたわけではない。

    昼間は平凡な,それでいて有能なサラリーマンとして会社に勤め,
    帰宅すると少し仮眠をとってから自分の小説を書いた。

    たまに仕事で遠出することもあり,
    その出張先で女性と恋に落ちることも少なくはなかった。
    そう,カフカはモテたのだ。


    決してカフカは難しい人物ではない。

    時おり,登場人物に意味不明な行動をさせたり,
    彼自身の生活が理解不能だったりもするが,
    それは単に彼の不器用さゆえなのだ。


    名前は聞いたことがあるが,カフカについてはよく知らない。
    難しい小説を書いたことは知っているが,読んだことはない。

    そんな方にこそ,ぜひ本書からカフカの扱い方を学んだ上で,
    彼の書いた物語を手にとってもらいたい。

    「そんな読者のために,すぐとなりの席にいるカフカを書いた」(P.5)

    全12回,カフカ初級クラス講義の始まりです。

  • 「となりのカフカ」池内紀著、光文社新書、2004.08.20
    218p ¥735 C0295 (2020.03.02読了)(2020.02.29拝借)

    【目次】
    はじめに
    第1章 サラリーマン・カフカ
    第2章 カフカ家の一日
    第3章 虫になった男
    第4章 メカ好き人間
    第5章 健康ランドの遍歴
    第6章 手紙ストーカー
    第7章 性の匂い
    第8章 ユダヤ人カフカ
    第9章 独身の選択
    第10章 日記のつけ方
    第11章 小説の不思議
    第12章 カフカ・アルバム―プラハ案内とともに
    「カフカの生きたプラハ」地図
    フランツ・カフカ略年譜
    あとがき

    ☆関連図書(既読)
    「変身・他一篇」カフカ著・山下肇訳、岩波文庫、1958.01.07
    「カフカ『変身』」川島隆著、NHK出版、2012.05.01
    「ぼくのドイツ文学講義」池内紀著、岩波新書、1996.01.22
    内容紹介(amazon)
    カフカ初級クラス・12回講義。修了祝いにプラハ旅行つき――。カフカ全集の新訳を終えた池内紀が、「難解で、暗い」従来のイメージをくつがえす。楽しく読むカフカ。
    (アマゾンより)
    カフカ初級クラス・十二回講義。しめくくりは終了祝いのプラハ旅行つき。
    カフカというと、イメージがきまっている。大きな目。そげた頬、悪魔のように尖った両の耳、かたくむすんだ唇。
    その顔だけでも、ただならぬ雰囲気がある。何やら恐ろしげだ。そういえば、実にへんてこな小説を書いた。ある朝、目を覚ましたら虫になっていた男の話。あるいは、同じくある朝、目を覚ましたら、何も悪いことをしたおぼえがないのに逮捕されていた——。
    あのカフカである。悪い夢に出てきそうだ。小説そのものが悪夢じみている。(中略)
    しかし——そうではない。イメージがまちがっている。まるっきり、ちがうのだ。(第1章より)

    名前は聞いたことがあり、顔写真のようなものを見たこともあって、難しい小説を書いたといったことはなんとなくイメージにある。でもカフカってどんな人?
    友人、知人の伝えるところによると、フランツ・カフカは物静かで、謙虚な人だった。半官半民の役所に勤め、女性を愛するたびに誠実に悩んだ。結核に冒せれても我慢強く苦痛に耐えた。勤めから帰ると仮眠を取り、夜中にせっせとノートに小説を書いた。書き続けるために独身を選び、家庭の幸せをそっくり捨てた。
    一見謙虚だが、背中合わせに野心家のカフカがいた。いずれ自分の時代が来るとかたく心に期していた男--。カフカ初級者に送る「カフカの全貌」。

  • カフカ萌え

  • 693
    来月チェコ行くからカフカ本読んでみた。正確にはチェコ生まれ育ちの100%ユダヤ人だけど。カフカの変身は好きだな。友達がカフカの日記面白かったって言ってたからそれも読みたい。

  • カフカの人物像と作品について、親しみやすい文章で解説している本です。

    「はじめに」には、本書は「カフカ初級クラス」にあたると書かれており、カフカの解説書として読まれることを想定しているのですが、エッセイの名手として知られる著者らしい文章で、カフカについて学ぶというよりも、カフカのひととなりを上品なユーモアをまじえながら語る著者の文章そのものをたのしんで読むことができました。

  • 労働者傷害保険協会のサラリーマンとして、順調に出世。休暇に旅したり、結核の療養でプラハを離れることはあっても、カフカの職場、住まい、大学、カフェ、散歩、水泳、テニス、劇場はプラハ中心部におさまり、狭い行動範囲だったことが分かりました。

  • カフカというと奇妙な作品の「あらすじ」や「要約」は知っている。

    何か後ろ向きの人生という印象が強い。だがその人生の内容は、逃げ・回避・躊躇・取り消しと、後ろ向きというよりも単なる逃避なのかも。

  • カフカの小説って「変なのに引き込まれる不思議な話」っていうイメージで、作者もやっぱり変わり者なのかなって思ってたんですけど、当たり前に普通の生活を送ってる人で失礼な話なのかもしれないですが意外でした。手紙はちょっとホラーですけど。
    作者について、特に知ろうとも思わず今まで色々な本を読んできましたが、たまにこういうのを読むと「今まで見えてなかった視点」っていうのが見えてきて、また違った本の読み方ができるのかもしれない。

  • ドイツ文学者でエッセイストの池内紀 氏の著書です。

    私自身「カフカ」のことはよく知らず、本書で初めて知ったといったところです。
    本書はカフカの入門書であり、私のような何も知らない人間でもカフカの小説を読んでみたくなります。

    風変わりな作品が多いと言われているそうですが、書いた本人は、真面目なサラリーマンで実務家で機械好きと意外なほど普通の面も持ち合わせていたようです。

    作家の人となりを知った上で作品を読むのも楽しいでしょうし、その一助となる本です。

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著者プロフィール

1940年、兵庫県姫路市生まれ。
ドイツ文学者・エッセイスト。
主な著書に
『ゲーテさんこんばんは』(桑原武夫学芸賞)、
『海山のあいだ』(講談社エッセイ賞)、
『恩地孝四郎 一つの伝記』(読売文学賞)など。
訳書に
『カフカ小説全集』(全6巻、日本翻訳文化賞)、
『ファウスト』(毎日出版文化賞)など。

「2019年 『ことば事始め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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