犯罪は「この場所」で起こる (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033194

作品紹介・あらすじ

門が閉まっていれば入らなかった-大阪小学校内児童殺傷事件の公判で、加害者はこう述べたという。従来、犯罪対策は、犯罪者の人格や劣悪な境遇(家庭・学校・会社など)に犯罪の原因を求め、それを除去しようとすることが中心であった。しかしながら、このような処遇プログラムは結局再犯率を下げることができなった。こうした「原因追及」の呪縛を解き、犯罪の予防に新しい視点を与えるのが、「犯罪機会論」である。本書では、どのような「場所」が犯罪を引き起こすのか、また、物的環境(道路や建物、公園など)設計や、人的環境(団結心や縄張り意識、警戒心)の改善を通して、いかに犯罪者に都合の悪い状況を作りだし、予防につなげることができるのかを、豊富な写真と具体例で紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • 犯罪は、発生する機会を与えることで起きてしまう。
    だから機会をいかに与えないかという点にフォーカスし、アメリカ、イギリスなどの例を踏まえて、どう犯罪を起こさせない社会をデザインしていくかについて述べられている。
    日本と異なり、海外では犯罪の機会論に基づき、対策する法制度がしっかりと敷かれていた。
    日本では、まだまだ実現が現実的でない事例もある中、地域での活動が重要であると感じた。

  • 昔読んだ本

  • 具体例を挙げているのでわかりやすいが、日本での例が少ないので少し残念。

  • 犯罪は犯人がその犯行を起こさせる原因と、犯行できる機会があることによって行われるわけであるから、原因を追求して除去するという活動だけではなく、犯行できる機会を減らすという活動もして予防することも必要であるということが書かれた本。欧米での事例なども紹介されており、犯罪率を減らす取り組みとしては意味のあるものであるが、宮崎勤や宅間守とか小林薫みたいなような奴らは結局、いつか、どこかで犯行を犯していたであろうから、やはり、こういうやつらを生まないようにはどうするかを考えることも重要であると思う。

  • データの解釈が我田引水過ぎるが、犯罪に対する考え方は様々なところに応用できる気がする。

  • 犯罪というと犯罪心理学からのアプローチが多い印象があるが、本書は「犯罪を可能にする、可能にしにくい環境」という点から述べられている。
    犯罪心理学的な考え方では予防がしにくいため、まずは環境を整えることで未然に防ごうという考え方には同意。
    大学の先生だけあって書き方が論文調で、英米の取り組みと日本の比較、日本に転用するとしたらどのようにできるかということが丁寧に書かれている。

    ・伝統的な犯罪学は、「原因」をキーワードにして事後対策を重視。新しい犯罪学は、「機会」をキーワードにして事前対策を重視。

    ・「割れ窓理論」:割れた窓ガラスが放置されているような場所は、犯罪者は警戒心を抱くことなく侵入することができ、さらに「見つかっても通報されないだろう」などと思って犯罪を実行しやすいということ。

  •  「犯罪者」と「非犯罪者」とに実は明確な差異はなく、悪意や犯意を持った者がいても犯行を可能とする機会を得られなければ犯罪は起きず、逆に、悪意や犯意を持たない者であっても偶々そういう機会に恵まれてしまったら犯罪は起きてしまう。ならば、犯罪者一人一人を分析して犯罪の芽を摘もうとするよりも、犯罪を起こさせ易くするような機会や場所を潰すことこそが、効率的に犯罪を防止することができる、というのが著者の主張である。
     実は、私はこの本が出る十年も前に、全く同じことを語った本を読んでいた。京極夏彦氏の魍魎の匣 (講談社ノベルス)である。
     この作品では、登場人物の陰陽師は、動機とは「世間を納得させるためにあるだけのもの」であり、あくまで副次的なものとし、犯罪行為を行わせるのは、そう仕向けるナニモノカ、つまりは魍魎や通り物と呼ばれる「妖怪」だと言う。そこで次に登場する本が悪魔のささやき (集英社新書)だ。
     この本では、そのナニカを「妖怪」ではなく「悪魔」に例えている。そして言う。悪魔はただ「ささやく」だけ、と。
     人間は常に、やじろべえのように善悪の境を行ったり来たりしている。悪魔や魍魎のささやきに負ければ悪事をし、勝てば踏み止まる事ができる。
     ささやきに負けぬよう精神を鍛え、ささやきに負けた人間がいても犯罪が起きないよう地域住民が地元を監視し必要とあらば整える。人々が自他共に管理ができるようになれば、犯罪は起き難くなるのではないか、と私は考える。

  • 犯罪を防ぐために、その原因追及や犯人プロファイリングに偏重するのではなく、犯罪が起こりうる環境について考え、犯行に都合の悪い状況を作っていこうという話。

    「入りやすく見えにくい」場所が犯罪の温床。ネットもそう。

    割れ窓理論。落書きやら放置チャリやらが散見されるようなとこは、心理的バリアが弱いので犯罪が起こりやすいとか。

    警官の裁量権行使のとこはビジネスにも通ずる。ガイドラインとして指針となる価値が明示してないとダメ。

    海外の事例の細かい部分は読み飛ばしながらも、面白い要所はたくさんある一冊。

  • [ 内容 ]
    門が閉まっていれば入らなかった―大阪小学校内児童殺傷事件の公判で、加害者はこう述べたという。
    従来、犯罪対策は、犯罪者の人格や劣悪な境遇(家庭・学校・会社など)に犯罪の原因を求め、それを除去しようとすることが中心であった。
    しかしながら、このような処遇プログラムは結局再犯率を下げることができなった。
    こうした「原因追及」の呪縛を解き、犯罪の予防に新しい視点を与えるのが、「犯罪機会論」である。
    本書では、どのような「場所」が犯罪を引き起こすのか、また、物的環境(道路や建物、公園など)設計や、人的環境(団結心や縄張り意識、警戒心)の改善を通して、いかに犯罪者に都合の悪い状況を作りだし、予防につなげることができるのかを、豊富な写真と具体例で紹介する。

    [ 目次 ]
    第1章 機会なければ犯罪なし―原因論から機会論へ(欧米の犯罪対策はなぜ成功したのか 新しい犯罪学―犯罪をあきらめさせるアイデア)
    第2章 犯罪に強い空間デザイン―ハ-ド面の対策(「防犯環境設計」で守りを固める
    監視カメラが見守る、監視カメラを見張る)
    第3章 犯罪に強いコミュニティデザイン―ソフト面の対策(「割れ窓理論」で絆を強める 被害防止教育の切り札「地域安全マップ」の魅力)
    第4章 犯罪から遠ざかるライフデザイン―もう一つの機会論(立ち直りの「機会」をどう与えるか 非行防止教育で「対話」と「参加」を促す)

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  • トピックや内容は良いのだが、文章が上手でないのでとても読みにくかった。

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著者プロフィール

立正大学文学部社会学科教授(社会学博士)。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。法務省、国連アジア極東犯罪防止研修所などを経て現職。専攻は犯罪学。地域安全マップの考案者であり、現在、警察庁「持続可能な安全・安心まちづくりの推進方策に係る調査研究会」座長を務めるほか、全国の自治体や教育委員会などに防犯のアドバイスを行っている。

「2015年 『見てすぐわかる犯罪地図 なぜ「あの場所」は犯罪を引き寄せるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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