犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033811

作品紹介・あらすじ

猟奇的な少年事件や検挙率の低下などを根拠に、「安全神話の崩壊」が叫ばれ、厳罰化と監視強化が進む。しかし、統計をきちんと読み解くならば、あるいは軽微な犯罪者ばかりで老人や病人の多い刑務所を直視するならば、決して「治安悪化」とは言えないはずである。効果のある犯罪対策を実施するには、正しい現状分析なくして、正しい解決はありえない。そのため本書はまず「『安全神話の崩壊』論の崩壊」を宣告。治安悪化言説こそが「神話」なのである。

感想・レビュー・書評

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  • [ 内容 ]
    猟奇的な少年事件や検挙率の低下などを根拠に、「安全神話の崩壊」が叫ばれ、厳罰化と監視強化が進む。
    しかし、統計をきちんと読み解くならば、あるいは軽微な犯罪者ばかりで老人や病人の多い刑務所を直視するならば、決して「治安悪化」とは言えないはずである。
    効果のある犯罪対策を実施するには、正しい現状分析なくして、正しい解決はありえない。
    そのため本書はまず「『安全神話の崩壊』論の崩壊」を宣告。
    治安悪化言説こそが「神話」なのである。

    [ 目次 ]
    1章 犯罪統計はどのように読むべきか(高まる「犯罪不安」 スローガンばかりが目立つ ほか)
    2章 凶悪犯罪の語られ方(宮崎勤から始まった 狂乱の報道合戦 ほか)
    3章 地域防犯活動の行き着く先(事後活動から予防活動へ 背景としての新自由主義 ほか)
    4章 厳罰化がつくり出した刑務所の現実(不審者とはどんな人か 科学的根拠はあるか ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 実際には、凶悪犯罪は昔より減っているってことは、統計のウソ、みたいな本でも繰り返し目にするから、頭では理解できているつもり。でもやっぱり思い込みがあって、本作のタイトルを見たときも、最初は犯罪の凶悪化に関するものかと思ってしまった。蓋を開けてみると、そんな事実は果たして無い訳で、寧ろ上記の思い込みに対する警鐘的内容になっている。この問題に関しても、結局は最低限の生活保障が不十分であることに由来するのかと思うと、ホント暗澹たる気分になっちゃいますね。

  • 社会
    犯罪

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    猟奇的な少年事件や検挙率の低下などを根拠に、「安全神話の崩壊」が叫ばれ、厳罰化と監視強化が進む。しかし、統計をきちんと読み解くならば、あるいは軽微な犯罪者ばかりで老人や病人の多い刑務所を直視するならば、決して「治安悪化」とは言えないはずである。効果のある犯罪対策を実施するには、正しい現状分析なくして、正しい解決はありえない。そのため本書はまず「『安全神話の崩壊』論の崩壊」を宣告。治安悪化言説こそが「神話」なのである。

  • 犯罪をどうしたら防止出来るかが書かれている

    犯罪原因論
    「ある人間がなぜ犯行に及んだのか、その原因を究明しようとするスタンスに立つ。そこでは犯罪者は普通の人間とは異なる特別な存在だとまなされて、犯罪にいたった原因が犯罪者の人格や境遇に求められる。そして、原因となった人格の異常性や境遇の劣悪性を取り戻除くことで、犯罪を防止しようというのが犯罪原因論の思想」

    犯罪機会論
    「犯罪の機会を与えないことで犯罪を未然に防止しようとする理論。特徴的なのは、この理論は犯罪者を特別視しないこと。
    どんな人間でも機会があれば犯罪に及ぶし、また機会がなければ犯罪に及ぶし、また機会がなければ実行しないと考える。それゆえどんな人間にとっても犯罪に及びにくいような「環境」を整えようというのが犯罪機会論の派の発想である。
    この理論を補強するのが割れ窓理論である
    「建物の窓が割れているのを放置すれが、ほかの窓もまもなくすべて壊されるとの考えに由来している。

  • 今や常識と化した日本の治安の悪化、凶悪犯罪の増加という現象が実は何ら実体の無い神話であり、その神話が社会に様々なゆがみをもたらしているという刺激的な論考。
    1章と4章では浜井浩一が各種の犯罪統計・受刑者統計により犯罪の入口と出口を仔細に分析し、「少年犯罪が激増」とか「凶悪犯罪の増加で刑務所がパンク状態」などといった常套句がことごとく根拠の無い出鱈目であることを浮き彫りにする。特に1章では特異な犯罪とその報道により引き起こされる社会の一時的な「モラルパニック」がパニックに便乗する行政・司法の制度変更により、逆に社会問題として固定化されるという構図を提示しており興味深い。
    2章、3章では芹沢一也が識者らの言説の変遷を分析し、「加害者への過剰な思い入れ」がいつしか犯罪者を理解不能な存在として拒絶する態度へ変遷した過程をたどる。そして常に引き合いに出される「コミュニティの空洞化が治安悪化をもたらしている」という根拠不明のノスタルジーについても批判的に検証。不安に駆られた市民が積極的に繰り広げる防犯活動が監視と排除による「相互不信社会」を作り出している現状を告発する。
    より犯罪件数が多くても相互の信頼に基づく社会であったかつての日本と、統計的には治安が改善しているにも関わらず「体感治安」が悪化し続け、相互の不信と分断が進行する現代の日本。バラバラにされた無力な個人の財布と労働力を搾り取る自由のみが称揚される新自由主義の広がりとそれは軌を一にしているというのは穿ちすぎだろうか。

  • 治安悪化は本当に真っ赤な嘘。
    こんな世の中に誰がした。

    「犯罪不安型社会化」

  • 情報を得やすくなったがために、犯罪を身近に感じ不安になっているというのは、自分の身をもってよくわかる。
    自分の身のまわりでは昔と変わってないのに、情報だけはよく受け取るようになったからなんとなく気になってしまう。

    この本を読んで、犯罪が減るのはいいことだと思っていままで見ていたことが、刑務所に目を向けると違う面が見えてうすら寒くなった。
    「不審者」にされると、セーフティネットがうまく機能しない社会ではとたんに受け皿をうしなってしまう。
    これ読むと、税金の使い方間違ってるよなぁと思う。というか、自分が社会的弱者になった場合を考えると、未来がないと言っていい。


    本書中に登場した「地域安全マップ」は、5年くらい前に読んだことがあって面白いと思った本なので、もう一度あらためて読み直したくなった。

  • 統計と関わりなく犯罪「不安」から対策が独り歩きしていく様子とその結果を描く。二人の記述内容が全く異なり、二つの側面を感じつつ木に竹を接ぐ感もある。ここで挙げられた課題を社会全体で課題と認識させていけるか、今後考えていく必要があるだろう。

  •  犯罪が増加、凶悪化しているという印象に過ぎない「治安悪化神話」という世迷言を排した犯罪対策を提言する非常に完成度の高い一冊。メディアが垂れ流す、犯罪が増加、凶悪化したという情報は全くの事実誤認であり、科学的根拠もない。科学的根拠に基づくと、殺人、強姦などの凶悪犯罪は、昭和期に比べ増えているどころか減っている。

     偽の情報が作り出す印象は社会の転換期(凶悪犯罪の報道により、犯罪者を徹底的に排除しようという論調が高まったことなど)に力を持つそうですが、こうした印象に基づいた犯罪対策が効力を持ち得るか?答えは言うまでもなくNoである。

     日本各地の町内の自治会の人々は、児童の登校・下校時間などに町内パトロールに出ることで犯罪者を徹底的に排除しようという閉鎖的なコミュニティを作り出していると同時に、人々が連帯感を覚えていると言う。町内パトロールに出ることが善意であったとしても、「自分は善いことをしているんだ(だから人に認められたい)」という意識が働いているのではないかと私は考えた。

     そして、いつも犯罪の報道に触れて思うことは、報道に触れた人々は「物騒な世の中になったな」と呟くだけで思考停止し、自分が被害者になるという可能性はともかく、加害者になるという可能性を考える視点が欠如しているということである。印象に流されず、批判的な視点を持って様々な社会問題について考えていきたい。

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著者プロフィール

龍谷大学法務研究科(法科大学院)教授1960年生まれ。著書に『犯罪統計入門』(日本評論社)、『刑務所の風景』(日本評論社)、『家族内殺人』(洋泉社新書y)『2円で刑務所、5億で執行猶予』 (光文社新書)、『犯罪不安社会』(光文社新書)、『実証的刑事政策論』(岩波書店)、『罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦』(現代人文社)、『発達障害と司法』(共著、現代人文社)など。

「2015年 『新・犯罪論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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