非属の才能 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334034290

感想・レビュー・書評

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  • 予想以上に内容が濃く、明快な主張が繰り広げられた本だ。著者は小学生の時から「やることが多すぎて授業を聞いている暇などなかった」というから、生まれながらの非属の才能の持ち主だ。中学、高校でも、授業を聞かずに漫画を描いたり、謎の未確認動物の研究などをしていたという。

    様々な非属の才能の持ち主を紹介している。黒柳徹子は「窓ぎわのトットちゃん」の中で、フタ付きの机を音を立てて開け閉めし、通りかかったチンドン屋を学校に招き入れて1曲披露させたといったトラブルが絶えなかった少女だったことを明かしている。小学校を退学させられたトットちゃんが転校したのは、子どもたちの素質を大きくすることを教育理念とし、黒板に書かれた科目の中から好きなものを選んで勝手に始める授業スタイルの学校だった。

    3か月で放校されたエジソンの母は、地下室にさまざまな化学薬品をそろえて、好奇心のおもむくままに物事を調べて実験できるようにした。著者は「もし、トットちゃんやエジソンを教室に閉じ込め、いい子に育てることに成功したら、その損失は本人だけにとどまらないだろう」という。

    ダーウィンは23年間かけて進化論を完成させたが、そのほとんどの時間を研究室にこもって費やした。現代社会に増えている引きこもりの人々は「この世界は自分にとって異常だ」と考えている。彼らを社会復帰させようとすることは、自宅にこもっているダーウィンを教会に連れて行き「人間は神がつくった」と信じ込ませようとしているのと同じだと言う。

    著者は、引きこもりは楽をとらず自分の感覚を信じるという苦行を選んだ人たちであり、引きこもりをバッシングする人間の方が甘えていると言う。大きな群れの中で、思考停止という甘えた状態にいるからだ。みんなが世界中で買える飲み物を飲んだり、みんなが見るテレビ番組を見たり、ブランド物を買ったりするのは、自らの頭で考えようとしない思考停止の群れとなっている。最近増えてきた郊外型の巨大ショッピングモールに並ぶ、成功した有名店のフランチャイズを、著者は「大きな口を開けて魚の群れが飛び込んで着るのを待ち構えている定置網に見える」という。

    本書の内容は、私には至極論理的で、極々自然な主張にしか思えない。歴史を振り返ってみると、幕末に西洋列強の脅威にさらされてから富国強兵・脱亜入欧、国家総動員の戦争を経て資本主義の競争社会へと至る中で、教育の平準化とともに国家や企業への意識が強められてきた。資本主義もグローバリゼーションも西洋の論理で進められてきたものだ。日本はそれに負けんがために同じ土俵に上ることを選び、国民はその枠組みに従うことを求められてきた。現代社会において大衆の論理が大手を振っているのは、いまだにその歴史の流れの中にあるからだろう。

    国家や企業にとって便利な一員になる必要はない。みんなの行動に合わせる必要もない。自らの道を行こうとすれば、牽制され、叩かれる社会に生きているのは不幸だが、自分の思い通りに生きる方が楽しい。その方法は、テレビなど外からのリアルタイムな情報を入れないこと、過去・現在の様々な非属の人間たちの生き方にヒントがある。高城剛、荒俣宏、さかなクン...

  • 正確には★★★★★★
    解放された。

  • 死にたくなったら、自殺の準備を始めたら、まず手を止めてこの本を読んでほしいなぁ。

    あなたが死にたくなるほど辛く感じるその感覚を責めないでほしいなぁ。

    その感覚こそ、めっちゃ楽しい人生の扉を開ける鍵だからね。

  • 集団サバイバルを高みから見物する本。

  • いや〜、この本、なかなか良いです。
    ちょっととっつきにくいタイトルですが、
    非属の才能とは集団に群れないでいることが
    才能の元になるというお話。

    群れないために著者は引きこもりを推奨しています。
    会社で働く人にとって、引きこもることは、
    ややハードルが高いですが、それでも一度は目に通しておいた方が
    将来自分の天才な部分に気がつくチャンスが増えるかもしれません。

    また子育て論としても読むことができ、
    自分の考える子供の育て方が、実は子供の才能を摘んでいたことに
    気がつかされるかもしれません。

    どんな人でも、なるべく早くに一度目を通しておいた方が
    良い一冊かもしれません。

  • ・「空気が読めない奴」と言われたことのあるあなた。
    ・まわりから浮いているあなた。
    ・「こんな世の中おかしい」と感じているあなた。
    ・本当は行列なんかに並びたくないと思っているあなた。
    ・のけ者になったことのあるあなた。

    おめでとうございます。

    あなたには”非属の才能”があります。


    こんな始まりで始まる本書。
    みんなと同じが求められる今の日本に待ったをかけ、変人こそが天才の始まりだという。
    引きこもりにこそ才能が眠っている、なぜなら彼らは学校や社会というちっぽけな世界に背を向ける非属の才能があるからだ。
    右に倣えと、みんなと同じように漠然と親に言われるがままに受験勉強し、一流の大学に入り、就職活動をし、これまた一流と言われる会社の社畜となるのは確かに楽な道ではあるが、それが本当の幸福を運んでくるのだろうか?
    属すことで安定は手に入るかもしれないが、これまたいつリストラされるかもわからない危うい安定である。それならば、自分を信じて、自分が本当に打ち込みたいものを見つけてそれをやるべきなのではないだろうか。
    そのためには自分でいろんなことに挑戦するしかない。メディアに惑わされるな!
    そんなお話でございます。

    どこか『ゲーテの警告』(適菜収)と似た雰囲気を感じました。(あそこまで過激ではないですけどw)
    人を見下すな、自分は偉いと思うな、人と違うことは悪いことではない、権威主義になるな・・・

    結局は、自分で判断しろ!ということです。
    それぞれが違う人間なのだから、誰も自分と同じようには感じない。だから自分で経験しろ。
    そして、人には歴史あり、でございます。
    みんなそれぞれがその年齢分だけ違う経験をしてきたのだから、自分ごときがどうして蔑むことができようか。

    人は得てして自分を過大評価し、過小評価しがちである。
    だから、視点を変え、色んな立場からものごとを考察してから結論をだすべきである。
    そんな風に思いました。

    なんか全然まとまりの無い雑文になっちゃったけど、すごく面白い本でした。是非読んでみて!!

  • いままで時代を作ってきたり、何かを成し遂げてきたような人は、決して周りに同調してこなかった。一貫して貫かれているテーマは、和して同ぜず。それを著者の豊富なインタビューから導き出している。ちょっとあきるところがあるが。この本は若者に対するメッセージと受け取ろう。もう少し早い時期にこれを読んでおくべきだったと若干後悔するが、自分もまだまだこれからということにしておこう。「資本主義卒業試験」を読んでからこちらを読んだのだが、こちらも含めて、現代という時代に対する疑問を持つことは大事だなと思う。疑問を持ち、自分主体で考えて行動すべきだと。

  • 今の世の中、いかにいい組織に属するかが重要視されている。子供の頃から人と違うことはしない、させないという教育が正しいとされ、子供は自分で考えずに周りが考えたものに同調することで大人になる。それでは失敗体験がないまま大人になる。『成功しかしていない奴がいたらそいつはチャレンジしていないだけ』と本文で書かれているが、周りの出来事に興味ないで済ましてしまうと、『今時はこうする』としか言えない人になってしまう。独創性は孤立が作るが、自分が絶対と思ってはいけない。同調ではなく協調が重要。

  • 文章の構成というか、上から目線というか、
    自分は普通なお前らとは違うんだぜ感が、
    なんだかプンプン臭ってすごく嫌な感じなんですが、

    中身はタメになりました。

    これから自分がドロップアウトしようっていうわけじゃなく、
    子育てという面で。

    でも、なんか気に食わないなぁ。

  • 著者の偏見で書かれた内容。
    きっとそのようなことが多く書かれているんだなぁ、と思いながらレビューを読んでみた。しかし、意外や意外。平均的に評価はかなり高かった。
    といいつつも自分自身この本に非常に共感を覚えた。というより支えになった。きっとこう思う人が多々いるからこそ全体の評価は高かったのだろう。

    自分の過去を振り返ってみる。いかに自分は協調でなく同調の圧力に押されてきたのか。確かに楽だったかもしれない。しかし、それは楽なだけであり、満足のいくものかどうかは甚だ疑問である。今の自分を考えると世間では受け入れられないようなことをやり続けて生きていく、ということは大変ハードルが高い。だが自分の中にある人と違う感覚がある、これは何の恥じらいを持つ必要がないといことを本書は教えてくれた。むしろそうした感覚こそ大切にすべきということを述べている。

    ただ気を付けてなくてはいけないのは独りよがりになってはだめということ。自分は変わっている、と思うことから生まれる傲慢さであったり、自分はいつも正しい、メジャーだからダメといった偏見などのことである。
    同調はしなくてもいい、だが協調することは大切である、ということ。

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著者プロフィール

マンガ家。1966年東京都生まれ。
多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒。小学生の頃から手塚治虫に私淑し、漫
画を描き続け、20 歳の時にコミックモーニングで漫画家としてデビュー。画業と絵本制
作をしながら描いた恋愛漫画『B バージン』(小学館)でブレイク。対談漫画『絶望に効く
クスリ』(小学館・光文社)や、本屋大賞【中2 賞】を受賞した『非属の才能』(光文社新書)
といった新書でも知られる。著書累計約530 万部。
今作は、五味太郎に師事した経験を経て、長年の夢だった「UMA がいる水族館に行く
こと」をかなえた一冊。

「2017年 『UMA水族館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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