- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334034306
感想・レビュー・書評
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批評とは敬意を伴った行為、と小林秀雄が言っていたような気がする。
村上春樹の作品の中から、あら探しをすることも意味のない行為ではないが、なぜ自分がこうも惹かれるのか、ということに、一つの枠組みを与えてくれたことは大きかった。
村上春樹は分からない、という。私も言語化しにくい。そこが物語であり、文学の醍醐味でもあると思う。何かのメッセージととらえた瞬間に、何かがこぼれていくからだ。
しかし、ホモソーシャルな価値観ですくいとれる部分が多い村上春樹の作品の中で、直子が自分の責任として自殺する、という解釈に生きることの本源を感じたのは私だけではないだろう。哀しみの中に、死の中に、生がある。 -
新書
評論 -
小説ってこう読むんだ!
風の歌を聞け、が立体化して衝撃だった -
小説の読み方が、変わる一冊。
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村上春樹読んでからその作品の部分読むと、ああなるほどこういうふうに考えられるのかって思える。と同時に文芸評論家ってすごいと思う。以上。
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おもしろかったですね。
いろんな話が いろんなカタチで入り組んでいる
ことが よくわかって
見事な 分析力と 平易な表現力に満ち溢れている。
言語論的転回 時間 空間 そして 言葉
に関して 実にたくみに 説明してある。
この ムラカミハルキの 臨床解剖 は
成功しているような気がする。
ムラカミハルキの
テキストは 嘘をつきながら その嘘が暴かれることで
その暗闇が 明るみ になっていく。
ムラカミハルキ 自身が 謎をかけ
謎ときしている状態なので
こんがらがっている糸が ほどけてきているような感じがした。
内田樹センセイとは 違った味があった。
羊をめぐる冒険は・・・
星の紋章のついた羊を探すことだったが
結局 探し出すことができなかった。
星の紋章のついた羊は 羊博士 に取り付き・・・
右翼の センセイ に取り付き
そして 鼠に 取り付いた。
鼠は 星の紋章のついた羊 を取り込んだまま
自殺する ことによって
一緒に 羊と心中したことになっているが。
鼠の 遺体はなく そして 星の紋章のついた羊が
なぜ そこから抜け出すことができなかったのか?
よくわからない・・・が
結果として 羊を 見つけることができなかったのである。 -
文学理論を駆使して、村上春樹を分析する手法がたいへん参考になった。また、石原氏の村上春樹に対する愛着ぶりが感じられた。
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「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」「ノルウェイの森」の5作品を通して、村上春樹を読み解くことを試んだ書。
「風の歌を聴け」の考察は素晴らしかった。これぞ謎解きといったばかりに、巧みに隠された物語を暴き、新しい読み方を提供できている。この考察のあるのとないのとでは、作品への接し方がまるで違ってくることだろう。ただし他人の考察の引用が多く、著者が提示した部分は少ない。
「ホモソーシャル」という観点は素晴らしかったと思う。村上春樹を読む上では欠かせない視点となりそうだ、と思わせるには十分だった。
しかし、その2点が登場した後の残りの考察は、正直蛇足に過ぎなかったのではという思いがある。的はずれなことを言っているようには思わなかったけれど、核心を突く読みではなかった。上記2点だけでも十分読むには値するのだけど、それだけに「風の歌を聴け」以外の小説についても、もう少し踏み込んだ考察が聞きたかった。 -
(推薦者からのコメント)村上春樹の作品を深く読むための本②