足利義満 消された日本国王 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334034405

感想・レビュー・書評

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  • 東京大学の先生で、各種助成金で本を買っていらっしゃるこの著者は基本的には「皇国史観」なるものを嘲笑し、侮蔑する極めて「安全」な戦後言語空間で、例によって「すぎない」論を使い華麗にディスクールを飛び跳ねて、「反権威・反権力」を気取っていらっしゃる。研究室に屯している時分から、とても漢籍オタクで、古文書もずいぶんと読め、自ら恃むところ多いということは、この稚拙な文章から容易に推察される。著者の「東アジア」なるものが如何なる像を持っているのかは知らないが、いずれにしても本著書の調子に乗った卑しい文章も、俗欲も、ついでに実は隠微に潜んでいる権力欲も、一切合切を包み込むのが皇室であった、と著者の嫌いな三島由紀夫なら哄笑することだろう。この著者は出発地点から間違っている。

  • かつて東アジア世界で日本が日本として生きていくために活躍した、ひとりの偉大な政治家がいた。その名は足利義満。最新の歴史学の知見と朱子学研究の成果をもとに、気鋭の歴史学者が逆臣・義満像をくつがえす。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40195369

  • 足利義満を高く評価している。暗殺説も。

  • 著者も書いているが、この本は小説ではなく、一切の希望や妄想が排除されねばならず、事実のみで構成されてしかるべきものである。

    足利義満という室町の武家についての私の印象は、地味、ハゲ、金閣、日明貿易、といった高校日本史レベルのものである(ヒドいな)。

    非常にアカデミックな内容で知性をまさぐる内容というよりは、まわりくどい。読んでいて、自分が読んでいる本が足利義満についてのものだと忘れてしまうことがある。(それは私の知性の問題でもある)

    再読しよう。

  • 足利義満が天皇家を乗っ取ろうとした過程を、当時の東アジア情勢などをもとに、軽妙なタッチで書かれている。

  • 歴史をテーマにした新書には、ときどきものすごい本(下手な表現だけど、変わる言葉が見あたらない。)がある。
    本書でもたびたび引用されているけれど、「室町の王権」(今谷明 著)はそれの代表事例。歴史教科書で出ては来るけれど、「独裁体制を打ち立てるため守護大名をいくつか潰したり、南北朝統一を達成し、室町幕府の最盛期を築いた将軍。しかし、後継者の時代に独裁体制は崩壊。」程度でしか知られていない人物に新たな光を当てて、日本史上空前絶後の大物であったことをあぶり出した作品。
    もう一つ上げると、「儒教 ルサンチマンの宗教」(浅野祐一 著)も好事例。「聖人孔子」という、既成概念を根本から否定し、虚構の世界の誇大妄想の「王者」が現実世界の王者として位置づけられるに至った話を衝撃的に記述している。
    前者の内容は、井沢元彦氏の著作の影響もあって既に世の中の常識になりつつあるようにも思うが、後者の方はまだ広まっていないように思う。「常識」の世界ではいまだに「聖人孔子」ではありませんか。

    さて、そのような「ものすごい本」にまた一冊新しい本が加わった。それがこのたび出版された「足利義満 消された日本国王」である。
    内容は、「室町の王権」をさらに発展させたものと言ってしまえばそれまでなのだけれど、東アジア全体を視野に入れた、よりスケールのでかい義満論。

    日本は「万世一系」かどうかはともかくとして「天皇」が一貫して存在していたこと(「天皇」号の歴史性など厳密な話は取り敢えず捨象。)から、「国体」は不変であったかのように思われがちだけれど、少なくとも国王(冊封体制下での意味ではなく、普通名詞の意味での。)の地位は時代によって変遷している。義満の時代の「日本国王」はもちろん義満で、後小松帝は義満に実質的にも形式的にも従属する存在でしかなかった。
    今谷「室町の王権」はそこから天皇家簒奪計画を導くのだけれど、本書は違う。既に帝(天皇)を遙かに超えた実力と権威を身につけている義満が、今さら、天皇家簒奪などするものかという視点。これは目から鱗が取れる見方。
    本書の特徴は、何といっても、日本列島という狭い観点にとらわれた政治史ではなく、元から明へ、高麗から朝鮮(李朝)へという、東アジア全体の大きな政治変動の文脈で義満の「日本国王計画」(この「国王」は普通名詞ではなく、冊封体制下での歴史的概念。)を描いている点。新しい視野に立ったスケールの大きいとらえ方で、非常に面白い。

    本書の分析が歴史専門の立場から見てどの程度妥当なのかはわからないけれど、極めて論争的・問題提起的な姿勢は高く評価したい。特に、皇国史観や聖徳太子を称える考えを「夜郎自大」と切り捨てるところは圧巻。

    内容とは別に、各所で話が大いに脱線していくところは、学者の記述らしくないけれど、「読みやすさ」という点に大いに工夫していることがうかがえる。人によっては気に入らないだろうけれど。

    本書の魅力は東アジア全体の政治情勢と関連づけた記述にあるが、中国歴代王朝の禅譲と放伐の話も、わかりやすく大変勉強になる。
    中国史の概説書を読んでもこの辺りの説明はあまり丁寧にされていないと思うが、できればそのような説明をきちんとした本を書いて欲しいものだが。

    ところで、公家社会における「形式主義」に関連して、面白い分析あり。手続きを重視している点で現代の民主主義と同じではないかということ。ここも非常に新鮮な見方。

    本書の本筋ではないのだけれど、南北朝正閏に関して本書で得られる情報は、少なくとも私にとっては衝撃的。今上のお血筋(崇光帝)は、こんなにご苦労をしておられたのか。そのようなことを、みんな知らないではないか。南北朝を論じる際には、せめて、ここの事実関係は知っておく必要があろう。それにしても、どうしてこんな背景があるにもかかわらず明治政府は南朝正統論に決めたのでしょうね。足利を嫌いになるのはわかるけれど、南朝正統にするというのはどう考えても、現行体制(北朝の系統)の正統化に反すると思うのだけれど。

  • [ 内容 ]
    かつて東アジア世界で日本が日本として生きていくために活躍した、一人の偉大な政治家がいた。
    その名は足利義満。
    いま、日本の行く末が不透明になりつつあるなか、六百年前に「この国のかたち」を明確に構想し、周囲の雑音を一掃してその構想に向けて邁進したこの人物に、われわれは学ぶべきことが多い、と思う。
    とりわけ、彼の「東アジア性」をわたしは高く評価したい。
    ―最新の歴史学の知見と朱子学研究の成果をもとに、気鋭の歴史学者が、逆臣・義満像をくつがえす。

    [ 目次 ]
    序章 消えた金閣
    第1章 日本国王源道義
    第2章 義満時代の東アジア情勢
    第3章 ゆがんだ南北朝史
    第4章 東アジア思想史上の義満王権
    第5章 義満と仏教
    第6章 義満への非難
    終章 義満の面前にて

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    [ 参考となる書評 ]

  • 足利義満

  • 2009.09.08
    ちょっと脱線おおいです。エッセーのような笑
    面白かったけどちょっと読み辛かった

  • この一冊はもっと高く評価してもいい気がするが、何分筆が走りすぎているというかエッセーなので・・・。
    しかし、日本において、中華皇帝の権威を元にした政権ができそうになっていたこと、そして、それは「天皇になろうとしたか否か」といった日本史的な文脈とは一切関係ない、東洋史的な事件である、といったこの本の主張は、非常に合理的だと思います。
    日本にそうした中華冊封体制が必要であったか、あるいは、中華皇帝を受け入れた日本というものがどのような道をたどったであろうか、そうしたことを「今から遡って考える」なら、足利義満に高い評価はできないでしょう。
    しかし、足利義満は日本史では誰も(少なくとも天皇という存在が生まれて以降は)やらなかったことをなした唯一の人物である。そのことは忘れてはならない。
    こうしたスケールの大きい話を日本史でももっと聞きたい。
    また、その唯一の人が「なぜ足利義満だったのか?」。この本も含めて、個人のカリスマに帰してしまうのは、あまりにももったいない。もっとこの時代や、足利氏について知りたくなる一冊。

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著者プロフィール

1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授。中国思想史。『儒教の歴史』(山川出版社、2017年)、『近代日本の陽明学』(講談社、2006年)、『宋学の形成と展開』(創文社、1999年)、『中国近世における礼の言説』(東京大学出版会、1996年)、『中国思想史』(共著、東京大学出版会、2007年)、ほか。

「2021年 『東アジアの尊厳概念』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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