世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書 434)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035372

作品紹介・あらすじ

新進気鋭の政治学者が、印象論を排したデータ分析を駆使して、マスコミ報道の問題点や、世論調査を曲解して惨敗した自民党の迷走を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 以前より、政治家やマスコミや評論家?の「小泉改革の反動」との言説に大きな疑問を感じていた。そして、自民党がますます一部既得権益者の声に傾斜していくさまを見ていると、落日とはまさにわき目もふらず坂を転げていくことだと思わざるを得なかった。
    本著はデータにもとづく論証であり、わが意を得たりとの感を強くできた本であった。

  • 2011 1/5読了。Amazonで購入。
    データを自分の考えに合致するように都合良く解釈してしまう「確証バイアス」による世論の曲解を避けるために、多角的にデータを集めて「読む」ことが重要である例として、2005年の郵政解散から2009年の自民党大敗に至るまでの自民党政治の失敗を取り扱った本。
    要はデータリテラシーの本か、と思って読み進めてたら終章にまさに「政治の専門家や在野の床屋政談家のみなさまの、世論や選挙の数字に対するリテラシーを高められればと、この本を出した次第」とあった。
    自分のフィールドでは注意していても日常生活ではなかなか多角的にデータを集めて・・・ってのは厳しいところもあるが、政治の専門家であるところの人には本来、当たり前にやっていなければいけないことのようにも思う。
    もっとも、その前提としてデータを読む能力が浸透している必要があるのだろうが・・・冒頭で図表を多用することに断り書きがあって驚いたが、図表が多い本に馴染みがないって言われてしまうともうその時点でかなり辛いものがあるものな・・・

  • 世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書) 2009/12/16

    2011年12月18日記述

    2009年末に出た本。
    菅原琢氏による自民党敗北の分析書である。

    安倍晋三、麻生太郎となぜ選挙で勝利を収めることが出来なかったのかが分かるだけではなく客観的なデータを持って分析している点が良い。

    特に安倍政権は郵政選挙で追放した議員たちを復党させた事が完全に間違った選択であったと改めて実感した。
    そして麻生太郎氏の人気も偏りのあったものでしかなかったことも。

    特にネット世論なるものは現実としてネット小言に過ぎないという指摘はその通りであろう。
    (TV視聴率1%=100万人が視聴していると言われている)

    ネットでいろいろ自分の考えを述べたり、一定の影響力を持つのは確かだが国全体の単位で言うとまだあやふや、もしくは一部の声を代弁してるに過ぎない面があるのはネット利用者は心得ておくべきだ。

    ただ本書は自民党が負けた理由を分析している本で民主党はどうなのかが触れられておらず残念だ。
    実際問題、民主党の問題点を指摘していたネット上のブログなどは数えきれない程あるが、そこらへんがどうなのかもう少し突っ込んだ分析が欲しい。

    そして2011年末現在、現実世論もネット上の議論でも民主党の評判はさんざんだ。
    次の衆議院選挙では政権維持は無理で、しかも2009年に敗北した自民党より状況は困難だろう。
    ただ自民党側も本書の指摘する点を真摯に受け止め、小泉構造改革路線を徹底するくらいの構えを見せなければ大勝とはならず、政治の混迷が続くことが予想される。

  • 世論調査や投票行動を分析して、2007参院選と2009衆院選で自民党が大敗したのは、小泉路線をやめたからだという結論を出している
    それなのに自民党は、小泉路線が敗戦の原因だと分析したものだから、かえって、農村部の大御所だけが目立つ政党になってしまっており、今後も復活はないだろうという予想

  • メディアは、人気、景気、世論などという実態を伴わない言葉で一般化し、通説を作り上げ、与える印象で読者・視聴者を理解したような気にさせる(アナスンス効果)手法を得意とするが、それが個人の人生や一国の命運を左右しかねないことに気づいていないとすれば危険だ。

    情報の受け手である我々は、疑問を持って情報に接するとともに、先入観(本書では、確証バイアス[自分の考えや事前に有している印象や情報にしたがって物事を解釈し、自らの考えに合致する都合のよいものだけを選び取ってしまう習性]の危険性を指摘している)を排除し、数字に対するリテラシー(与えられた材料から必要な情報を抽出し活用する能力)を高く維持していなければならない。

  • 政治研究を専門とする著者が、世論と選挙結果の関係について分析した本。定量分析の難しい世論について、主として世論調査結果を分析することによって、客観的に選挙結果に及ぼす影響を示している。論理的である。ただし、一部イデオロギーについての論述、特に「憲法改正の方針」を過大に解釈したり、デモについて非論理的手段と過小評価しているところが、反政府的、市民グループや労働組合(左翼)的論調になっているようで気になった。印象的な記述を記す。
    「小選挙区制は、2大政党が接戦を繰り広げている選挙区が多ければ、わずかな票の動きで全体の選挙結果が大きく動くという性質がある」p34
    「自民党は、旧来の支持層に依存するのみではもはや勝てず、小泉構造改革路線がそうであったように新しい支持層を開拓していかなければならない。都市部のより若い世代の有権者を惹きつけていかなければならない。それにもかかわらず、安部政権はむしろ正反対の方向に進み、「古い自民党」を復活させ、必然の結果として敗北したのである」p65
    「野党が協力して戦う意義は大きい。これまでの自民党は、野党の分立に助けられ、1人区を有利に戦ってきたわけである」p94

  • 目次
    はじめに 3
    第1章 寝た子を起こした?−2005年総選挙・郵政解散の意味 25
     コラム1 新しい投票者と新しい選択肢ー30代首長流行の背景にある現職苦戦の選挙構造
    第2章 逆小泉効果神話ー曲解される2007年参院選の「民意」 63
    第3章 逆コースをたどる自民党ー安倍政権はなぜ見限られたのか 99
    第4章 「麻生人気」の謎ー2007年総裁選・迷走の構図 119
     コラム2 年代別選挙区制は若者を救うか? 145
    第5章 作られた人気ー「次の首相」の意味 151
     コラム3 内閣改造は内閣支持率を浮揚させるのか?−質問文「改造」効果説 185
    第6章 世論とネット「世論」ー曲解が生まれる過程 195
     コラム4 若者は左傾化しているのか?−憲法意識調査に見る回答の曖昧さと柔軟さ 230
    第7章 「振り子」は戻らないー2009年総選挙・自民党惨敗の表層と底流 237
    終章 自民党大敗の教訓ー世論の曲解を繰り返さないために 271

    <hr>メモ
    はじめに
    p7 公共事業の存在が公共事業の存在理由を再生産するという自民党政治。ダム事業の中止は、住民の生活の糧がなくなるということを意味する。だからここでの「生活再建」とは、ダム事業ではない何かによって、人々の生活を維持させること。

    第1章
    p40 郵政解散総選挙の意味と影響
    この選挙で動いた都市部の若年・中年の有権者には、もともと改革志向が備わっていた。これが郵政解散によって顕在化し、小泉自民党への投票につながる。
    p41 だが、多くの政治家や評論家は、異なるイメージでこの総選挙を語った。郵政民営化というお題目やテレビに若者を中心とする有権者が踊らされ、一過性の投票行動を取ったと解釈した。
    p60 07年参院選、09年総選挙で、それまで有力だと思われていた自民党政治家に対して働いていたバンドワゴン効果が消え去ってしまった。

    第2章
    p68 社会党は、第二次産業から第三次産業へという急激な産業構造の転換についていくことができず、都市部で退潮することとなった。都市の貧困層、ホワイトカラー層、大企業の労働者などは、公明党、共産党、民社党に流れた、ここに、自民党の一党優位体制が完成した。

    第3章
    p109 小泉の何が好かれ、安倍の何が嫌われたのか
    p114 自民党から離れた人々は、安倍政権を特徴付けるイデオロギー的傾向を嫌って出て行った(国民投票法、防衛省への昇格等)
    p114 小泉はかつて革新と呼ばれていたような「野党的」な層を多く惹きつけていたが、これらの人々は安倍政権の方針や政策とは相容れなかったのである。
    p115 郵政造反組を復党させ、自民党の既得権打破を口にせずにイデオロギー路線を突っ走った安倍には、これらの層(若年層・中年層)を引き止めるというのは無理な話であった。
    p117 08年4月には一ヶ月間暫定税率がかからない状態となり、ますます自民党政治=「無駄な公共工事」というイメージが定着する。

    第5章
    麻生の浮上の過程
    p178 どれもまずい料理を出す店に入ってしまい、お腹がすいているので仕方なく「みんなが選んでいるみたいだから」と選んだ料理が、その店の「人気メニューランキング1位!」と紹介されているようなものである。
    p178 こうしてトップに繰り上がったのが麻生である。繰り上がったというより、表彰台の1位と2位の部分が片付けられた、そんな印象である。

    第6章
    p204 政治や社会に関心を抱いている人々ほど(専門家やエリートだと思われている人々ほど)、歪んだ「世の中」イメージを有している。本の中の議論や自分の周辺の人々をモデルに、「世の中」のイメージを形成してしまっているのである。
    p213 より情報コスト(めんどくささ)の小さいテレビや新聞のニュースがある限り、ネット上で政治情報を得る積極的な動機はないのである。

    p220 ネット上の麻生人気の実態。
    総選挙のあった07年9月23日、2ちゃんねるの「麻生太郎研究スレッド」には、計3702の書き込みがあった。(中略)IDは3702の書き込みに対して計709発行されている。
    p221 全体の半分の発言を発言上位10%の発言者が行っている。70%の発言はだいたい20%強、150人ほどの発言者によってなされている。
    p222 ごく少ない人数のみが「盛り上がって」いたという事実は変わらない。
    p223 ネット上で特定の政治信条に沿った主張をしたり、一日中至る所にコピペを貼り続けたり、特定のブログに抗議のコメントを書いたり、デモという名のオフ会に参加したりしているのは、老若問わずごくごく一部の人々である。それは、政治的なビラや怪文書を投函して回ったり、自分の意見に沿わないテレビ番組に抗議の電話をしたり、黒塗りの街宣車の上で演説をしたりする人々が、老若問わずごく少数に過ぎないというのとまったく同じである。
    p225 ネットに世論がある、世論が表出されていると想定すること自体、バカげている。「ネット世論」という言葉も不適切で、「ネット小言」あたりに言い換えた方がよい。

    終章
    p273 政治家は、自分は選挙区の人の声に耳を傾けている、弱者の声を国政に届けようとかんばっていると、そう主張している。だが、政治家に日々訴えかけられる支持者の声というのは、政治に訴えかけたい種類の人々の声であり、世論の一部でしかない。
    p276 メディアの世論調査は間違いでネット「世論」が正しいという類の妄言を吐き続けているような御仁は、早々に淘汰されるべきだろう。

  • データから読み解く自民党大敗要因の真相。逆小泉効果と言われる定説を痛快に覆す。今後の政治を占う上で限りなく良い材料となる良著。

  • 2009年自民党から民主党に政権が交代した。自民党が大敗したのは自分たちの支持低下の原因を見誤ったことにある。特に麻生太郎が国民に人気が有ると勘違いして総理にしたのが大失敗。元から人気が無かったのに加え、総理になってしまったことでその無能ぶりが広く知れ渡ることになり、とことん落ち込んでいった。しかしなぜそのような勘違いをしたのか。それが世論の曲解であるのだが、そのからくりは本書を読むとわかる。それにしても小泉・安部・福田・麻生はひどかった。それぞれの父や祖父はなかなか良かったのだが・・・

  • 新書にしてはあり得ないほど濃密な内容
    著者のブログやTwitterとも合わせて、小泉氏以来の国政選挙に関して多くの知見を得ることができると思います
    社会学関係の物書きの人たちが自業自得とはいえ完膚なきまでにやられていますが多少同情しないでもない

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著者プロフィール

菅原琢

1976年生まれ。東京大学法学部、同大学院法学政治学研究科修士課程、博士課程修了。東京大学先端科学技術研究センター准教授など歴任。専門は政治過程論。著書に『世論の曲解』(光文社新書)、共著に『平成史【完全版】』(河出書房新社)、『日本は「右傾化」したのか』(慶應義塾大学出版会)など。戦後の衆参両院議員の国会での活動履歴や発言を一覧にしたウェブサイト「国会議員白書」を運営。

「2022年 『データ分析読解の技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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