だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学 (光文社新書 455)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035594

感想・レビュー・書評

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  • ・高齢になると、脳の回路の配線がへってくることも知られていますが、配線がへって新しいものを学習する柔軟性がなくなったかわりに、経験につちかわれた的確な判断が、すみやかにくだせるのでしょう(これは「結晶知能」と呼ばれています)。

    ・心地よいと感じることが、脳の配線を変えてしまうのであれば、ときには「だまされて(勘違いして)までも」心地よいと感じることに意義がでてきます。

    ・買い物かごをもつときの姿勢は、赤ん坊を抱き続ける姿勢に相当し、子育てを担当してきた女性は、この肘を曲げたまま長時間支える動作がふつう得意なのでしょう。アタッシュケースを握って持ち運ぶのは、おそらく遠くから獲物を握って持ち帰る体勢に相当し、狩猟を担当していた男性が平均して得意としているのだ、と思われます。

    ・しかし、協力行動には裏切りがつきものです。そのため、それを防止する仕組みもあわせて進化しています。裏切り者は排除され、結果として、取り決めを信じる心情をもった「だまされやすい人々」がおもに、生き残ってきたのです。

    ・もし、身のまわりの細かいことに目くじらを立てて糾弾する人がいたら、それは、憤りをちゃんと報復行動にうつす人です。社会集団にとっては、タダ乗り防止のための貴重な存在ですので、「うるさい」などと言わずに大切にしてあげてください。その人は自分の損失を省みず、はからずも社会のために働いてしまっているのです。

  • 初めて手に取った進化心理学の本だったが、この本で進化心理学の面白さに引き込まれた。
    究極要因からのアプローチは、物事の本質を捉えることができるようになるだろう。

  • 現代の社会で、ポジティブシンキングに一定の効力がある。
    うつになるのは女性が男性よりも多い。男性の方はプライドを維持する傾向が強いので、自己防衛が強固でうつになりにくい。

  • 進化心理学から読み解くと だまされ上手が生き残って請っていくというお話。
    なかなかおもしろい。

  • 私達は、選択を迫られた時、時には論理的に考え、時には気持ちに従って、判断していると思っている。しかし、私達が自分で考えて判断していると思っているだけで、実はDNAに組み込まれた何かに従って判断しているとしたら・・・
    私達は、DNAに組み込まれた何かが、環境の変化に対して有利な者達の生き残りなのか・・・
    DNAに組み込まれた何かを知ることによってよりよく生きられる?
    「おろか」な行動は、実は生き残りのための賢い戦略かもしれない。人間の心の動きを、生物進化の仕組みに照らし理解しようとする新しい学問、進化心理学.そのエッセンスを詳しく解説する。

    進化の速度が一定とするならば、人間に固有の脳のう99%以上は、狩猟採取の時代に形成されたと言えます。つまり私たちのものの見方や考え方や行動の形態は、狩猟採取に環境にふさわしいかたちに適応しているはずなのです。つまり私達の行動は小集団向けにできているのです。
    進化心理学を知ることによって、私達は自分自身を“より客観的に”見ることができるようになると思います。
    一瞬の衝動に動かされそうになった時、何故“そのような気持ちになったのか?”客観的に考えてみることによって、より自分の目的に合致した選択ができるようになると思います。
    また、社会の動き、人の行動の意味について考える際にも、新たな切り口になると思います。
    更に、自分が生きて行く目的、目標、手段、そんなことを見つめ直す良い機会になると思われます。

  • 進化心理学の入門書として著者の講義でも使用できるように書いた本になります。
    進化心理学とはあまり聞きなれませんが、人の心の働きを進化の仕組みに照らし合わせて理解するという学問です。
    諸説の一つでありますが、読んでいて目新しく面白かったです。
    現在の人類の歴史は1万年ほど。
    たった500世代という内容を読んで、現在の急速な社会変化に人間がついていくのが大変なのもわかる気がしました。

  • 進化心理学 入門用

  • 生物の進化の視点から、ヒトの考え方や行動を理解しよう、と
    いうアプローチが進化心理学なのだそうです。
    「だまされる」という、一見阿呆(名古屋弁でいうと「たぁ~け」)
    なことも、実は種が生き残るための、ある種の合理性のある選択
    なのかもしれない、という視点で捉えるのです。
    これが、なかなか面白い。

    以下、この本の一節を抜粋。

     意識の役割は、意識が誕生した時点から既に「現状の改善」に
     重きがおかれていた可能性が大です。なぜなら、現状でうまく
     いっているのならば、下等生物のように意識をもたず、つねに
     無意識下で行動していたのでもよいことになるからです。
     私たち人間が意識的に行動する以上、現状そのままではうまくなく、
     意識が誕生することでなんらかの改善がなされる必要があったと
     いうことでしょう。無意識では難しい現状打破の柔軟な思考が
     社会的な場面で要求され、意識が不可欠とされた進化的経緯が
     あったとみられます。
     意識的な行動の目的が現状の改善にあり、改善の結果によって
     幸福感が意識されるとすれば、現状ですでにうまくいっている
     場合は幸福感が得られないことになります。つまり、意識的に
     がんばって、つねに向上していないと幸福感を感じ続けられない
     のです。
     (中略)
     健全に幸福を感じるには、どうしたらいいでしょうか。ときどき
     わざと不幸になって、それからまた改善してく、という過程を
     くりかえすことです。

    まあ、なんと自虐的でMなのでしょう!

  • 各章の最初にあるエピソードからは興味が湧くが、内容は如何に進化してきたかに重点が置かれているので、「生き残り」「心理学」というキーワードに引っかかって現実的な手法を求めると肩透かしをくらう。確かに心理学なんだけど進化学の方が色が強い。■「狩猟民族だから」という表現に、そんな大昔のこと関係なくないか?と思っていたけど、進化の歴史を考えると本能的な思考回路という部分でやっぱり残っているのか、と納得できた。でも農耕が始ったのはわりと最近のことなので、「狩猟民族」「農耕民族」という切り分け方は遺伝子的にちょっと違う気がするなぁ。

  • [ 内容 ]
    なぜ「だまされる」ように心は進化したのか。
    「おろか」な行動は、実は生き残りための「賢い」戦略かもしれない。
    人間の心の働きを、生物進化の仕組みに照らし理解しようとする新しい学問、進化心理学。
    そのエッセンスを詳しく解説。
    進化の仕組みをもとにした、その成果から現代を生き抜く賢い戦略が見えてくる。

    [ 目次 ]
    序章 恐怖を手なずける
    第1章 人生をうみだした進化の原理
    第2章 遺伝子の生存競争
    第3章 わかりあえないオスとメス
    第4章 狩猟採集民の脳と心
    第5章 人間は「協力するサル」である
    第6章 文明社会への適応戦略―信頼の転換
    第7章 現代社会の生きにくさにせまる
    終章 だまされ上手の極意

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。明治大学情報コミュニケーション学部教授。東京工業大学理学部応用物理学科(生物物理学)卒。同大学院物理情報工学専攻、企業の研究所や政府系シンクタンクをへて、1997年に明治大学に赴任。人工知能技術を遺伝子情報処理に応用する研究で博士(工学)を取得。専門は認知科学で、生物学と脳科学と心理学の学際領域研究を長年手がけている。著書に、『生きづらさはどこから来るか』(ちくまプリマ―新書)、『人間とはどういう生物か』(ちくま新書)、『ざんねんな職場図鑑』(技術評論社)、『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書)、『だまされ上手が生き残る』(光文社新書)ほか多数。

「2022年 『だからフェイクにだまされる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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