ニッポンの書評 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036195

感想・レビュー・書評

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  • 【読みやすい新書】
     書評と感想文の違いは何ですか?書評家だけでなく、書評ブロガーが多数存在する今、この答えは如何に。これからの書評界を支える人たちが、読者から生まれることを著者は大いに期待している。

  • 評家の著者が現代日本の書評事情について意見する。
    「書評」と「批評」は同じようなものと思っていたが、定義が違うらしい。「書評」は基本として本の発売前に紹介するもので、「批評」は読後の評価である。書評は時間や内容に制約があり、一定の文字数で読者に興味を持たせる紹介文を書くことが求められている。(それが評者の力量になる)昔はあらすじの紹介もある程度許されていたが、現代の特にミステリー系やエンタメ系の分野では「ネタバレ」と言われ、度々問題視される。特にベテランの純文学系の書評家には、そういう文章を書く人が多い。著者はある程度のあらすじの紹介は必要と考えているが、どこまで紹介するのかの匙加減が難しいと考えている。。。と、ここまで感想を書いてきて、自分もネタバレをやっているような気がする。(著者もネットで匿名の個人での批判的な書評を問題視している)
    その他にも書評を巡る多くの問題について著者の見解が書かれているが、文学をあまり読まない自分には、よく判らない意見も多かった。ノンフィクション好きには、あらすじや内容の紹介は購入の決め手になるので、有り難いと思いますけど。

  • 豊崎流の書評とはこうあるべき論を展開させつつ、日本と外国(主としてイギリス)の書評を対比。
    一つの章(本作では講)がコンパクトでわかりやすく、つながりが明快であり本当に講義を受けているような印象を持てる。

    読書後に本について、レビューをする人はぜひ読んでもらいたい。

  • 書評を生業にしているブックレビュアーという肩書きを持つ豊崎由美による、書評に関しての考察。

    批評は作者・著者を、書評はこれから本を読もうとしている読者を対象に書かれている文章であるという基本的な定義の基、「ネタばらし」「援用」「粗筋」に焦点をあてて、日本と海外、プロとアマチュアの文章を比較することで「良い書評とはどのようなものであるか」を明らかにしている。
    ネットにアップされている素人の書評を「匿名性に依然した粗悪なモノ」と断罪している点はそこまで言う必要があるか疑問の生じるところではある。

    また、書評・批評に加え感想文にも言及しているが、おおむね感想文は素人の書くもの的な意識があるようだが、プロの書く感想文にも触れて欲しかった。

    読み終わってみると、本書は「これから書評を書こうと思っている人へのいわゆる教則本」的なものなのか、「書評の読み手に良いもの粗略なものを見極める力を養って欲しい。書評にはこれだけレベルの差があるのだから」ということを教示しているのか、少々曖昧な点が感じられた。おそらく筆者は、「書評を書くならマシなものを書きなさいよ」と言いたいのだろうが・・・

  • ギュッと詰まった充実のボリューム。自分の語彙の貧弱さ、表現力の欠乏がわかってしまうが、書評は読むものだから(書くわけじゃないから)いいんだもーん。

  • 快調、トヨザキ社長節。ブログで読書感想文を書く身として襟元を正したくなる本でした。匿名じゃなくライターとして筆一本で食っている人の覚悟や矜持に小生感服致しまして候。これに噛み付く人が匿名で何か言ってたって説得力数割引きだと思うのだが。豊崎さんの著作はお金払って買いますよ、これからも。「炎上」に負けずに頑張れ!

  • この本は皆さんが読んでいるという理由で読みました。筆者がamazonやブログの書評にあれだけ噛み付くのは自分の飯の種がなくなりつつあるという「焦り」からくるのでは?と考えたのは僕だけでしょうか?

    もしかしたら、というか僕も筆者の言うところの「一億総書評家」の内の一人かもしれません。僕も、正直な話、「いい書評」と「悪い書評」の区別なんて言うものはつきせんし、まぁ、どこかで特集されていたり、もしくは僕が書いた記事でいくつかのポータルサイトに掲載されたバージョンのやつを誰かがコピペしてそのまま自分のブログに貼り付けているのを目にすると、腹立たしさはまったくおきず、むしろ「あぁ、僕の記事が彼らの心の琴線に引っかかってくれたんだなぁ」という思いのほうが優先します。

    話が少し脱線してしまいましたが、この本に書かれているように自分の書く「書評」について考えて書いたということはほとんどなく、一読して心に引っかかったことをダーッと書きたれる、というやり方でキーボードをたたいておりますので、筆者の基準だと「守られている」とのことで書評には値しないのでしょう。個人的には別にそれでもいいやとさえ思っています。

    でも、雑誌や新聞や書籍などになっている書評が「プロ」の書評でamazonのカスタマーレビューやブログの書評が「アマチュア」というのはどうなのかなぁ、というのが一読した感想です。僕も、こういうことをテーマに記事を書いているので、「技術書」として書評を集めた本を読んだり、成毛眞さんや小飼弾さんのブログをいまだに参考にしていることがあるので、ブログやカスタマーレビュー。マスメディアや活字になっている書評に関係なしに、その人それぞれのPCDAサイクルがきちんと伺えるものであればいいのではいか?そんなことを考えています。

  • 読もうかどうか迷ったときに書評を参考にすることはある。アマゾンの書評などはくだらないものも多いが、新聞の書評などは気になる。読み始めてから書評とは違うなと感じて止めることもある。
    この本には松岡正剛の「千夜千冊」の話は出てこない。松岡正剛は”これは書物案内で書評ではない”と言っている。僕には書物案内と書評の違いは判らないが、まさに”知の巨人”が書いている。

  • <内容>
    日本の書評について、ライター・ブックレビュアーである豊崎由美が吼える。良い書評、悪い書評から書評の役割・成り立ちまで、様々な角度から論じられた一冊。

    <感想>
    実際に各所で書かれた書評を元に、良い書評・悪い書評を論じていて面白かった。文字数や技術的な側面など色々な要素があるが、とにかく読者に「読みたい」と思わせるようなものが著者にとっての良い書評であり、その意識は「書評と批評の違い」からきている。

    「批評」は作品を読んだ後に読まれるもので、一方「書評」は対象作品を読む前に読まれる。海外の事情と異なり、新聞や雑誌などで書評に与えられる字数の少ない日本においては、「批評」と「書評」は比較的はっきりと棲み分けられている。そして、道案内(インフォメーション機能)としての側面が強い「書評」であればこそ、過度なネタバレやネガティブキャンペーンになるようなものは慎むほうがよい、と著者は考えている。

    さらにそこからヒートアップしていく、昨今のAmazonレビュワーやブログ書評などに対して苦言。たしかに(この自分のレビューを含め)短絡的なものも多く、それを生業としている著者から見れば憤慨するのも無理はない。やや感情的な論調だとは思ったが、書評のみならず昨今の炎上事例を見ていても、ネット上に書くこと=自分の意見を衆人環視の状況に置くことの意味や、それが対象や読者に与える影響を考えることは重要だとは思う。

    後半ではこれからの書評についても述べられている。全体を通して議論すべきポイントをいくつも孕んでいて、なかなか面白い一冊だったように思う。

  • 書評をこれからその本を読む人のための道しるべと定義して、海外と日本の書評の違い、書評におけるネタバレと、書評のあるべき論を論じた本。

    書評の対象は、その書評の読者であるのだから、読者を意識した書き方を心がけるべきという点と、書評を書く側は、精読と正しい理解に基づいて書くべきと言う硬派な意見だった。

    ここまでは同意だし、著者の本の読み方などは参考になるなんだけど、そのように書かれていない書評の例を挙げて、紙面で低評価をくだす方法には違和感を感じてしまった。

    ただ、自分が書評や感想を書くときには参考にしたい。

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著者プロフィール

1961年生まれ。書評家、ライター。「GINZA」「TVBros.」「共同通信」などで書評を多数掲載。主な著書に『ニッポンの書評』、大森望との共著に『文学賞メッタ斬り!』など。

「2017年 『村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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