官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036614

感想・レビュー・書評

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  • 官邸から見た原発事故の真実と書いてあるが、内容は原発事故を受けて筆者が考える原子力の問題点について。
    別の官邸に居たからといって筆者しか知りえないような特別な事は書いていません。
    原子力事故を受けて今後の原子力に求められるのことは「信頼」であると述べる。この考え方には賛成するが、筆者の解決策は原子力行政の徹底的な改革と工程表の作成であるという。前者の行政の徹底的なあり方については原子力安全庁に期待したいと述べているが、具体的な現況は全くない。問題は、「信頼」を得るためにはどのようなアクションが必要になるのかではないだろうか。原子力行政の徹底的な改革の一言で済ますような簡単な問題ではない。しかも、このような問題意識は過去数十年ずっと電気事業者は持っているのだ。今回の事故を受けて認識したわけではない。
    また、筆者は原子力の安全について、高レベル放射性廃棄物が最終的に問題となると述べている点はよくわからない。
    これも過去ずっといわれてきていることである。そしてこれは安全、不安全にかかわらず発電を行なっていると必然的に発生するものであるので、今回の原発事故を受けてどうのこうのという問題ではないように感じる。

    また、原子力コストについて社会的コストを含めて計算するべきであるとというよくわからないコストを持ちだしてくるし。
    だったら、火力発電所にも「二酸化炭素で世界中の人が迷惑しているでしょう税」という社会的コストを含めて計算してもらいたいものです。。。

    最後にこれだけは納得できないと思った記述は、今回の事故は首都圏三千万人が緊急避難しなくてはならない可能性があり、それを回避できたのは「運が良かった」(p.252)と記載されているところである。

    あなたは、原子力の専門家でしょう。
    当時、原子力発電所にいた人たちは昼夜を問わず死ぬかもしれないという覚悟のもとで危険な場所に行って、復旧活動をやっていたのですよ。
    首都圏三千万人が避難するような事象にならなかったのは、運が良かったわけでは決して無い。
    彼ら、彼女らが献身的に仕事をした結果、最悪の最悪は防げたわけでしょう?
    筆者は、官邸にずっといて現場の大変さも伝わってきたでしょう?

    筆者が、彼ら、彼女らの努力を讃えずして誰が讃えることができるのか。
    もう少し、現場の苦労もわかってほしいと思うのです。筆者のように当時、そこにいた人たちにしか伝えることができないのだから。

  • 原子力の専門家であり、このたびの原発事故の対応では内閣官房参与として官邸の中枢にいた、田坂広志氏による最新刊。
    田坂氏いわく、今回の事故は「首都圏3000万人の避難」という最悪の可能性さえもあったという。さらに田坂氏は、今回の原発事故は「パンドラの箱」を開けてしまったという。
    反原発派、脱原発派、原発(なぜか相変わらず)推進派、原発(利権があって)推進派・・・等、いずれの方にもお読みいただきたい著です。

  •   田坂さんは内閣官房参与として、福島原発対応について、菅総理を支えた人。

     田坂さんが、原子力工学の専門とか、放射線医療の勉強もしたひとということは知らなかった。

     書かれている事柄は、一つ一つ説得力がある。

     しかし、かかれなかった大事な点がある。

    (1)官邸や各省庁は法律によって定められた手続に従って、行政権を行使すること。特に、国民の利害に関わることは、法律による行政が必要なこと。

     この点からいって、田坂さんは何も触れていないが、浜岡原発を止めさせたり、玄界原発の再稼働をとめさせたのは、総理、経済産業大臣に定められた法律の枠を越えているのではないか。

    (2)田坂さんは、参加民主主義の大事さを説いており、それ自体は自分も賛成するが、その前に支障なく動いている原発をとめたり、新しいストレステストなる概念の基準を導入するのであれば、原子炉等規制法の改正案を国会に提出すべきではないか。

     時間がないから、法律上の根拠もなく、事実上の強制力をもって、原発を止めた結果、国民は電力料金の負担を受けることになる。

     このようなことを、官邸の中の少数の人の判断でやってはいけない。これは、戦前の勅令より悪い。

    (3)もちろん、官邸は、設置法に根拠をもつ行政指導と言い訳するのだろうが、それであれば、各大臣の仕事で総理がでる幕はないし、仮に行政指導といいはっても電力料金が値上げされたら、それも利用者の同意がなければ支払わなくて善い行政指導値上げというのか?

     緊急時にこそ、きちんと国会つまり国民の負託を受けた国会の定めた枠内で行政は行動すべきだし、それが不可能な場合の規定が必要であれば、ドイツのように憲法の緊急事態規定をおくことを議論すべき。

     法律を無視しておいて、参加民主主義を唱える資格はない。

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著者プロフィール

シンクタンク・ソフィアバンク代表

「2023年 『能力を磨く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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