- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334036669
作品紹介・あらすじ
本書では、主として最高裁の違憲判決の軌跡をたどり、最高裁がどこへ向かおうとしているのかを探る。憲法裁判すべてを網羅するのではなく、違憲判決に焦点を当てることで、憲法に対する最高裁の「姿勢」を浮き彫りにする狙いがある。違憲判決以外にも、最高裁の憲法判断を理解するうえで有用な判決について適宜、解説する。さらに、最高裁長官の事績を初代から追うことによって、「物語」のような違憲判決の歴史を舞台にあげる。あまり知られていない長官の素顔にふれて、"床の間"にある判決が少し身近に感じられるのではないか。この1冊で、違憲・合憲を判断する枠組みがわかること、請け合いである。
感想・レビュー・書評
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歴代の最高裁長官がどのような審査を行ったか振り返りながら、違憲判決の変遷を確認し、今後の違憲審査制度の展望へ繋げていた。
初学者でもわかりやすいようになっていたと思う。
この本の出版後、新たに2件の違憲判決下されているので、最新情報ではないという点だけ注意が必要だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
書名の通り最高裁の違憲判決について、変わりやすくまとまっていると思う。
最高裁の憲法判断を今よりも増やすには、裁判官の負担軽減と国民の信頼が必要であり、前者のためには、憲法判断を行う憲法部という特別部を最高裁に求める、後者のために人事を透明化が提案されている。最高裁の判事にはどんな人がいるが知らいので、後者については、是非実現して欲しい。 -
山田隆司『最高裁の違憲判決』光文社新書 読了。一般的には分野別の構成が普通であるところ、本書は時系列に構成されている点が斬新。歴代の最高裁長官に焦点が当てられていて面白い。時代背景が判決内容の方向性に影響しているのがよくわかる。最高裁が「国民の裁判所」になりつつある姿勢を感じる。
2012/02/22 -
[抜けずか、抜かせずか]最高裁が「法の番人」たる役割を果たす上で、強大な影響力を有する違憲審査権。最高裁の発足から今日に至るまで、約10件しかない「違憲判決」を見ていくことで、最高裁の軌跡の一端とこれからの役割を考えていく作品です。著者は、記者時代の原体験が本書の執筆のきっかけになったと語る山田隆司。
まず最高裁の違憲判決と歴代の最高裁長官を軸として、時系列的に司法の働きを記述しているところが面白い。歴史の流れの中で、最高裁の考え方がどのように変遷し、発展していったかが垣間見え、日本現代司法史の入り口としてオススメできる一冊です。
(サブタイトルの方向性とは少し異なるかもしれませんが)最も興味深かったのは「違憲判決」と同様に「合憲判決」が日本の法律の輪郭を時に大きく、時に細かく描いていったという点。最高裁の判決が実は国民の生活というミクロ面と、法律のあり方というマクロ面の両方に影響を及ぼさざるを得ないということがよくわかりました。
〜司法権は、国会が示す多数者の意思に反したとしても、少数者の憲法上の権利を守らなければならない場合がある。それが違憲審査権であり、裁判所はこれを有効かつ適切に行使すべきなのである。〜
司法分野での池上彰氏を目指そうとした著者の意気込みは買いかと☆5つ -
判例にせよ、裁判例にせよ
当該法益や法律の目的、利益衡量を最大限した上で論理を尽くしてひねり出されるもの
三権分立の中で行政や立法と違い民主的なプロセスを経ていない裁判所が統治行為論等を使って少し遠慮気味になるのは仕方ない
ただ近年の「民意」なるものにおいては経済的強者の色合いが濃く、個人の権利や生活が政策や権力によって侵害されることが増えた
本編の最後の方では「憲法裁判所」構想が上がっていたが、実際上法律等が動き出した後に侵害が起きてからしか訴えの提起ができない付随的審査制では今後、「救済の砦」としての機能は不十分になるため、侵害が予測される法や政策につき違憲審査ができるようになることを望む
「憲法の番人」と言われる最高裁として、また憲法が「戦時等の熱くなっている時であっても侵してはならない権利のカタログ」としての意味を持つのであれば上記憲法裁判所の創設も必要かと考える
以下メモ
砂川事件
伊達判決
憲法9条の趣旨
自衛のための戦力の保持を許さないなどとするもの→国連の勧告等に基づいて日本への武力攻撃を防御するために軍隊を駐留させるのであれば…戦力保持には該当しない
安保条約による駐留米軍
日本への武力攻撃に対する防御の援助にのみ使用されるのではなく、米国が戦略上必要と判断した際にも当然、日本区域外に出動しうる→日本と直接関係ない武力紛争の渦中に巻き込まれる可能性あり⇒外部からの武力攻撃に対する自衛目的での米軍の駐留は違憲
最高裁
9条の意義
1項
平和主義(再び戦争の惨禍云々)
固有の自衛権は否定しない
⇒自衛のための措置は日本の平和と安全を維持するためにふさわしい方式•手段であるかぎり、国際情勢に即応して適当と認められる以上、他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではない
2項
日本国が主体となって、指揮権や管理権を行使しうるもの
政治と裁判所
安保条約は、日本の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有する⇒内閣や国会の硬度の政治的、自由裁量的判断と表裏をなす→純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまない
⇒一見極めて明白に違憲無効と認められないかぎり、裁判所の司法審査権の範囲外
批判
指揮権が及ばない米軍の一方的な判断で日本を戦争に巻き込む可能性あり⇒平和主義や前文の理念に反する
米軍の駐留⇒領土内に主権的な統制が及ばない部分をつくることに…日本の国家主権や国民主権の侵害になる?
無効になる場合が不明確
苫米地事件
統治行為論
猿払事件
1.禁止の目的が正当
2.禁止目的と禁止内容との間に合理的関連性がある
3.禁止により得られる利益と失われる利益とが均衡している
公務員の政治活動禁止
⇒行政の中立的運用とこれに対する国民の信頼確保
規制目的ニ分論
消極目的規制
市民の命や健康などを守るため、弊害を取り除くための規制
安全基準や薬物等の販売規制
重要な公益のために必要かつ合理的であり、より緩やかな手段では達成することができないこと場合に合憲
積極目的規制
社会的弱者の救済や経済の発展など、一定の政策を実現するためにする規制
大店法
規制の目的、その目的を達する手段のいずれかが「著しく不合理なことが明白」なときだけ違憲 -
最高裁が発足してからの64年間で法令違憲判決は8件。
その中で2度違憲になったのが、一票の格差問題。 -
8件。
これがこの国の最高裁判所が1947年の発足以来64年間(本書執筆時)で下してきた違憲判決の数です。
本書はこの8年に1件の割合と言う少なさに注目した著者が抱いた、「なぜこの様になっているのか?」と言う疑問を切っ掛けに執筆された本です。
全4章に補章と終章、そして巻末に識者インタビューを掲載した内容となっており、これらを通して読む事によって、第2次大戦敗戦以降の政治情勢などを踏まえながら、違憲判決と言う視点から最高裁の変化を解説しています。
簡単に内容に触れると、
最高裁の64年の歴史を4期に区切り、それぞ第1期:第1章、第2期:第2章・・・と言った感じで解説が行われ、補章で「1票の格差」裁判について集中的に解説し、終章で最高裁改革案を提示しています。
また巻末のインタビューでは、泉徳治・元最高裁裁判官、棟居快行(むねすえ・としゆき)・大阪大学教授の2人にインタビューを行っており、現状の最高裁の問題点などを指摘しています。
本書は、憲法をテーマにした専門書を読む前に読む、分かり易い一冊として書かれた本であり、法律を専攻する学生達のみならず一般人にも手に取ってもらえる事を念頭に入れて執筆された様です。
その為もあってか、法律に関しては素人の私でも(簡単な概念だけとは言え)「なぜ違憲判決が出たのか、合憲判決が出たのか?」に関する法学的な側面を充分理解できる内容となっており、読み応え十分。
社会を理解するのに役立つ実用的な知識を身につけたく、またついでにちょっと頭に刺激が欲しいと言う方にお勧めの一冊です。 -
[主な内容]
最高裁は果たして積極的に違憲の判決を下しているだろうか ― 「違法判断消極主義」と指摘される日本の最高裁が実際に違憲の判決を下した例を見ながら、憲法に対する最高裁の姿勢を明らかにする。
[おすすめの理由]
この本では最高裁が出した「違憲判決」に絞って紹介しているので、基本書のまとめにもなっています。しかし、この本をおすすめする一番の理由は、「違憲判決を時系列にまとめている」ところです。
基本書がそこまで触れているとは限らない「判決の時代と社会との関係」を知ることによって、最高裁がなぜ違憲判決に消極的と言われるようになったかを理解できるようになると思います。 -
事実の羅列だけではなく、各時期に区分けしてその評価を著しているために、読書前に抱いていたように読みづらいことはなく、むしろ大変読みやすかった。
ただし、結論とした部分の主張が抽象的で、ここまで考察したのに…という残念さが残った。