男は邪魔! 「性差」をめぐる探究 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037390

感想・レビュー・書評

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  • いや、まったくもってその通りだと思うよ。現代の日本の社会において「男は邪魔!」(ビックリマークも必須だよね)! きっと自然に任せているとまともな会話やコミュニケーションがとれないから、ルールやしきたりなど縛りを加えてきたのが古今の男たち。女たちに既得権を奪われないように、「女は非論理的だ」とか「女は穢れている」とか非論理的なことを言ってきたのが古今の男たち。
    著者はインタビューで鳴らしている方らしい。この本を書こうと思ったきっかけは、そのインタビューなどを通して「男に訊いても埒が明かないということである。話をしても何ひとつ解明しない。それどころか、しばらく話を続けていると頭の芯のほうから何やらぼんやりしてきて、そもそも何を訊くために来たのか忘れそうになる」(p.12)からとのこと。男性著者が男を断罪するなんて面白そうと思って手に取ったんだけどな……。
    「探究」なんて副題がついているから、何か学問的な解釈を加えて論じてくれるのかと思いきや、お手軽に古今のものから言質を拾いながら(しかも、曲解の可能性もあるのでは?)自説を展開している。男が邪魔なのは確かだと思うが、それを論じるにはちょっと材料不足でないかい? やっぱり著者も同性として、ついつい男弁護に回ってしまうということか? 図らずもかどうかわかんないけど、本書自体が男の話は的を射ないことを表してしまっている。

  • 長いインタビュー経験を通して「今更ながらしみじみ思うのは、男に聞いても埒が明かないということである」ことに思い至った著者は男がどういった存在なのかについて、調査をはじめます。

    男性が強かったとイメージされる明治時代以前の文献からは、「男は女性たちに全責任を負わせて恐怖から逃れ、後で文句だけ言える楽な立場を作り出した」とし、男性を優位とする状況はあくまで恣意的に導かれたものだと考察します。

    学習塾や保育所などでの保護者への聞き取りや児童たちの観察からは、いかに男児が幼稚で話が通じず、比較して女児が明らかに理路整然としていて自分を客観化できること、女児に比べて男児に要求されるものが少なく、「男はバカだから仕方がない」と諦められていることがわかります。

    生物学的にも女性は右脳と左脳の連携がスムーズで洞察力に優れていること、生殖についてもリスクが高い女性の男性に対してのセンサーは発達しており快・不快の見極めがはっきりしており生殖中心に考えるとオスはメスのフォロワーに過ぎないことが明らかになり、筆者は乳牛の世界ではオスが基本的に存在しないように「今は男がいるから意識されるだけで最初からいなければそれはそれで成立したりするのではないだろうか」と自問します。

    このように著者は各方面から男性がいかにダメな存在であるかについて詳らかにしており、男性にとっては耳の痛い話が満載です。普通ここまで存在意義を全面否定されると男性にとって救いとなる要素も提示されそうなものですがそれもなく、ここまで徹底していると痛快です。男女問わずこれを読んで腑に落ちることは多いのではないでしょうか。

    本書では男性のダメさと女性の優秀さについてだけではなく、調査の過程で「言葉を垂れ流しあうことは崇高な知識構築作業」「会話は『体験返し』が良く『蘊蓄返し』は最悪」「気持ちは知識のヘッダー」「怒ったほうにストレスはない」「男には好きという気持ちがない」「男に足りないのは妄想と共感」など、性差にまつわる興味深い知見を数多く教えてくれます。

    これまで読んだ著者の作品のなかでは最も面白かったです。

  • 作者の妻が作者に臭いだの邪魔だのゴミだの言ってるのってモラハラだし、女子小学生たちの男子への罵倒もひどいもの。

    男が邪魔というよりも、男はいくらでも侮辱しても構わないという傲慢な女たちが増えていることが良くわかる本でした。

    どこかの外国人タレントが「日本は女が男を酷評して許される社会になっている」といっていたけど、この本を見るとまさにその通り、そのくせ男が女を少しでも批判することは許されない、男にとっては実に理不尽な社会になっていることを強く感じますね。

    だからといって、この作者みたいに、そんな不公正でおごり高ぶった女たちを持ち上げる気には全くならないけどね。

    むしろ、「男が女を侮辱するのは許さないが、女が男を侮辱するのは問題ない」と思い上がっている現代の女の嫌な面を強く意識させられる作品でした。

  • 私の町でも女子校はずっと昔から変わらず女子校のままですが、男子校はどんどん共学に変わり、男子校がとうとう一校だけになってしまいました。
    大学で教えている友人が、作業効率を考えて男女別チーム編成にしようと提案すると女子学生は大いに賛成するけれど男子学生から女の子がいないとモチベーションが上がりませんと弱音を吐かれるそうです。
    男に話を聞いても埒があかず、女に聞くと明快に埒があくのはなぜなのか?
    埒があかない男を女は邪魔だと思い、それに気がつかない男。
    その理由がおぼろげに書いてあるおもしろい本です。なぜおぼろげなのか?それは著者が男性だからなのかもしれません。

  • 本文:強者と弱者の関係でいえば、男の子は強者の立場に置かれます。つまり、まわりが彼のことを察してくれる。人の話を聞いたり、共感したりしなくてもいい。黙っていても察してくれるから表現する必要もないんです。ところが、女の子は弱者の立場。常にまわりを察しなければならない。なので女は伝えようと努力するんです。だから表現能力が身についていくんです」⇒自分自身このように考えているときが多々ある。自分の状態を話すのが苦手で、伝えるときもうまく整理して伝えられない。

    本文:――強者なんですか……。  私はつぶやいた。私も強者でないのに強者の立場にいるということか。 「学生たちの交際を見ていても、男の子は自分のほうが女の子より頭がいい、強くないとイヤなんです。同じ程度はイヤなんですよ⇒これは以前の自分を含めて多くの男性に当てはまる条件だと思う。心のどこかで男のほうが上。という思いを常に抱いているように感じる。

    本文:どういうつもり?」と訊かれると絶句する。「私のこと愛してる?」なら「うん」と言えるが、続けて「どこを愛してる?」と訊かれると絶句する。絶句すると我ながら何も考えていなかったような気がして、そのことにまた絶句するのである。 「絶句した時の気持ちを表現すればいいんです」  ――大体、男の人は質問しないでしょう。訊かれることばかりで、自分から相手を知ろうとしない」⇒どこが好き?という質問がいつも怖いなと思っていた。それは相手のことを知ろうとしないからだったのか。

    本文:生きているということは即ち、柔らかく弱いということ。固まって強いのは死んだも同然なのである⇒常に変化し続けることこそが大事と解釈しました。

    本文:男に足りないのは妄想と共感。  昔から男は共感できないバカなのである。妄想して共感する。共感するために妄想する⇒仕事にも通じている点。これができなすぎて苦労した。

    本文:オナンはその子が自分のものとならないのを知っていたので、兄の妻の所にはいった時、兄に子を得させないために地に洩らした⇒知識のため。

    本文:「ぜんぜん動かなくなる。反応しなくなることがあるということなんでしょうが、実はこれが重要なんです」  ――どういうことなんでしょうか? 「野生状態で敵に襲われ、軽いダメージを受けた場合、痛がったりうずくまったりしたらアウト。すぐに食べられてしまうんです。蹴っ飛ばされても何食わぬ顔。何もなかったかのように、つまり鈍感に見えるということで身を守れるんですね」  牛は鈍いのではない。鈍いように見せているだけなのだ。弱そうに見える牛こそが実は弱肉強食の頂点であり、大地の支配者。「草食男子」も「牛男子」と解釈すれば価値も反転する。男の象徴は牛⇒牛男子。ちょっとやそっとじゃ傷ついたり、痛がるそぶりを見せない。動じないことが大事...なのかな?笑

  • 読み物としてとてもおもしろかった。
    しかし、「男に訊いても埒が明かない」と書く筆者の著述そのものが「埒が明かない」(笑)。
    読み終わっても残るものが少なかった。
    いちばん興味をひかれたのは牛の話だった。牛の世界では「オス」はいらない。精子だけあればいいという話は強烈だった。ありていにいって、オスの仕事は精子の提供がメインだから、個体は存在しなくてもいいといえばいいわけだ。でもそれじゃあ困るから人類のオスはさまざまな「言い訳」をこしらえたんじゃなかろうか。
    宗教の教義をみてると特にそう思う。必死になって女を貶めてるからなあ。
    なにがどうという収穫はなかったけど、読んでて面白かったから☆4つ。

  • まぁまぁ面白く読んだけど、これは男性著者による自虐なのか、女性に捧ぐカタルシスなのか、作品の意図が見えない。

  • 源氏物語の解釈が面白い。
    妄想という文字には“女“が含まれているように、妄想は女のものらしい。
    男の妄想は出しちゃえば終わりだが、女の妄想は果てしない。
    徹底的に女性讃歌な本。

  • ジェンダー
    社会

  • こんなエッセイみたいなものが新書なのはどうかと思うが、マジで笑った。
    確かに男、邪魔だよなぁ。
    決めつけ、誘導的な部分も目立つけど、それはまぁ気楽なエッセイだということで。

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著者プロフィール

医師、医学博士、日本医科大学名誉教授。内科学、特に免疫学を専門とし、東西両医学に精通する。元京都大学ウイルス研究所客員教授(感染制御領域)。文部科学省、厚生労働省などのエイズ研究班、癌治療研究班などのメンバーを歴任。

「2022年 『どっちが強い!? からだレスキュー(3) バチバチ五感&神経編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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